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ソニー、‘05年度通期の営業利益見通しを1,300億円下方修正
-TV不振。ソニーパネル、普及価格SXRD、共通化で復活を


7月28日発表


 ソニーは28日、2005年度第1四半期(4~6月)の連結業績を発表した。売上高、および営業収入は前年同期比3.3%減の1兆5,594億円。営業利益はエレクトロニクス分野の不振が影響し、前年の98億円から大幅に減少して153億円の損失。当期純利益も前年の233億円から73億円の赤字となった。

2005年度第1四半期の連結業績

 売上高の減収には、合弁会社であるソニーBMG・ミュージックエンタテインメントの設立の影響や、エレクトロニクス分野の売上げが1.4%減少したことなどが影響。なお、2005年度からは音楽ビジネスの大部分がソニーBMGに移管されたため、セグメントとしての音楽分野を廃止。引き続きソニーの連結対象となるSMEJを含む音楽ビジネスは「その他」分野に含めて開示している。

 また、税引き前利益が前年同期比95.1%増の129億円となっているが、これはソニーコミュニケーションネットワーク(So-net)の連結子会社であるソネット・エムスリーや、持分法適用会社であるディー・エヌ・エーの株式の一部売却などによる持分変動益の179億円が計上されている。

 持分法による投資利益は前年同期の201億円から292億円減少し、91億円の損失となっている。これにはサムスン電子と共同で設立したTFT液晶パネル製造の合弁会社、S-LCDに76億円、買収したMGMへの約65億円の投資損失を計上している。

 分野別では、エレクトロニクスの不振が目立つ。営業利益は前年同期の83億円から363億円の損失と、446億円悪化。外部顧客向けの売上げも7.5%減少している。主な原因はテレビの業績不振によるもので、CRTの需要の減少や、プラズマテレビの競争の激化などが大幅な減収に繋がった。テレビのみの売上高は1,520億円(前年同期比-20.1%)で、営業損失も前年の101億円から392億円に増加している。

エレクトロニクス分野の営業損益は446億円の悪化となった エレクトロニクス分野の営業利益の内訳 製品カテゴリ別

 エレクトロニクス分野でのプラス要因としては、フラッシュメモリ型、およびHDD型のネットワークウォークマンの売上げが日本、欧州を中心に全地域で増加。オーディオ分野の売上高は1,174億円(前年同期比-12.8%)、営業利益は2億円の損失から、4億円増加し、2億円となった。ほかにも、ノート型が好調なPCのVAIOが貢献した情報・通信分野も0.5%増の1,848億円の売上げ、営業利益は57億円となった。

 こうした状況を受けて同社は、2005年度通期の連結業績見通しを4月時点の見通しから大幅に下方修正した。具体的には、売上高を7兆4,500億円から7兆2,500億円に3%減、営業利益は1,600億円から1,300億円マイナスとなる300億円と、81%減。当期純利益も800億円から100億円に88%減とした。なお、営業利益には構造改革費用が含まれており、費用は720億円から880億円と22%増えている。

 ソニーは6月22日付けで、ハワード・ストリンガー会長、中鉢良治社長らによる新経営陣を発足。事業戦略や運営体制の詳細について見直しを行なっている。9月に具体的な計画として発表を予定しているが、今回の会見でテレビ事業の業績悪化を受け、ホームエレクトロニクスネットワークカンパニーのNCプレジデントでもある井原勝美副社長が、別途時間を設けて悪化の要因と打開策を説明する異例の会見となった。

ゲーム分野ではハードウェアが堅調。PSPと新型PS2の販売数量が増加した 映画分野は営業利益が前年同期比3.5%増の42億円。当期からMGMでの配給手数料が加わった 通期の見通しを大幅に下方修正した


■「テレビ事業を利益を出す事業に甦らせたい」

井原勝美副社長

 井原氏は冒頭、「株主総会以降、エレクトロニクス分野の建て直しに全力を注ぐ立場となった。今回の下方修正の大半はエレクトロニクスが要因であり、中でもテレビの業績が悪化している」と現状を説明した。

 業績悪化のポイントとして井原氏は「価格下落の加速」と「販売台数見通しの修正」を挙げる。まず、液晶テレビは欧州において価格の下落が想定を超える速度で展開したことに対応できなかったという。さらに、北米ではプラズマの価格下落が続き、同社が展開する液晶リアプロテレビの競争力が低下した。

 日本では液晶テレビにおいて、2月より低価格な「ハッピーベガ」を投入。付加価値の高い上位モデルの「HVXシリーズ」と同時に展開を行なった。「HVXシリーズの方が伸びるだろうと予想し生産体制などを整えていたが、蓋を開ければまったくの逆でハッピーベガに人気が集まった。生産のウェイトを切り替えるのに時間がかかり、結果的に普及価格帯への注力が遅れてしまった」と振り返る。

テレビ事業を取り巻く環境

 また、欧州でCRTから液晶・プラズマへの移行が急速に進んでいることや、「付加価値が強く、ソニーが強い」という32/34インチのCRTが世界的に液晶やプラズマへと切り替わっていることが「数字を越えたネガティブなインパクトをソニーに与えている」という。液晶やリアプロに関しては「販売台数的には伸びているが、コストや生産体制を含めて利益がともなった成長とはいえない状況。販売台数が増えれば利益があがるという正しい体制にすることが課題だ」とした。

 改善策について井原氏は「当たり前のことをコツコツとやるしかない」とし、ポイントとして「コスト改善」、「商品力の強化」、「生産体制見直し」を掲げた。まず、コスト面では4月の半ばからサムスンとの合弁会社のS-LCDが、第7世代のマザーガラスを使って液晶パネルの供給を開始。「稼動開始当初は若干の問題があったが、先月頃から歩留まりが高くなり、32や40インチの生産がコスト的に優位になり、今後が期待できる」という。

テレビ事業の改善策

 井原氏はS-LCDで作られ、ソニーが採用するパネルを「ソニーパネルと呼ぶことにする」とし、「ソニーならではの技術を盛り込んだパネルとしてアピールしたい。また、これを採用した液晶テレビを夏から年末にかけて全世界で供給する。視野角度や色再現性、動画応答性能など、パネルとしての基本的な性能についてはどこにも負けないと自負している。販売店などに向けた内覧会を既に開始しているが非常に良い反応を得ている」と自信を見せる。

 また、さらにコスト競争力を付けるために、パネルを除く部品や基盤の設計を世界共通とする「共通シャーシ」の導入を液晶テレビと液晶リアプロで予定していることを明らかにした。「部品の共通化というレベルを超えた“共通”になる。テレビの電波を取り出すところは各国や地域で固有部分だが、デジタル信号として内部に取り入んだら、映像として表示するまでは共通性が高い。地域別の差違は必要最低限に留める」という。「設計などは東京に集中。他国のスタッフはアプリケーション側で地域別の機能を持たせるサポートのみ行なうイメージ」だという。

 また、「コスト改善しても売れなければ意味がない」とし、商品力の強化を宣言。「過去の自社商品を振り返ると、それが本当に必要なのか? と疑問に思う機能もあった。もっとユーザーの目線に合った商品出さないといけない」とし、「機能を絞込み、使いやすい デザインも綺麗な商品に仕立て上げ、ユーザーの目線をはずさないような商品にしていきたい」と語った。

 また、リアプロに関しては「ソニーが作ったようなマーケット。差別化技術も持っている。現在は3板式の高温ポリシリコンがメインだが、HD時代に対応すべく、高性能デバイスであるSXRDを採用したモデルのラインナップを拡充。普及価格帯のモデルも出し、全世界で販売していきたい。SXRDは多方面から高い評価を得ており、楽しみな商品になるだろう」という。また、光学デバイスの内製化も進め、コスト改善に努める。

 さらに、CRTの市場縮小に伴い、生産体制の見直しも実施。イギリスにある工場を閉鎖することや、人員削減なども実施するという。しかしインド、ロシア、アジアの一部、中南米ではCRTが増加している現状もあり「地域でまったく違う要求に合わせるのは困難だが、そのためにもCRTの生産集約を進め、地域別に違うニーズに合わせられる体制を構築したい」とした。

 また、井原氏はテレビの事業について「スピードや利益の面で、比較的安定していた従来の状況から、ITや通信業界並みにスピーディーで変化の早いビジネスに変わりつつある。それに対応するためには意思決定を迅速に行ない、それをすぐに製品に反映させられ組織体制が必要。また、そうした事業に変化したのだという従業員の自覚も重要となる。そうしたものを含め、レスポンスの速い組織運営を行ない、これから12カ月、来年の下期には利益を出す事業に甦らせたい。第1四半期の業績は残念で大きな責任感じるが、改善の道筋は見えている」と語った。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□2005年度第1四半期業績説明会
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/info/presen/
□関連記事
【4月27日】ソニー、2004年度連結決算を発表
-エレクトロニクス事業の赤字が拡大
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/info/presen/

(2005年7月28日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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