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ビクター、音楽配信用の高音質化技術「net K2」を発表
-「非対応のプレーヤーでもマスターに迫る音質」


10月1日より配信開始


 ビクターエンタテインメント株式会社は15日、同社が各音楽配信サイトに提供している楽曲データに、独自の高音質化技術「net K2」を投入すると発表した。同技術は10月1日以降に同社が配信する楽曲のほぼ全てに適用され、サービス開始月の対応楽曲は約150曲を予定。価格は据え置きで99円~350円。また、着うた、着うたフル、RBTの楽曲についても10月1日以降同様の技術を適用する。

 K2技術とは、ビクタースタジオなどのレコーディングスタジオやマスタリングスタジオで採用されているもので、マスターテープを基準として、録音、マスタリング、オーサリング、カッティング、民生機再生処理など、各作業段階で高音質化を図る技術の総称。

 ‘87年から開発が開始され、‘96年にはJVCマスタリングセンターが開発した高音質CD「xrcd」の主幹技術として導入。‘98年には高精度化を実現した「デジタル K2」へと進化し、それに伴って「xrcd」も「xrcd2」に変更。2003年には、全ての処理工程を24bit化した「xrcd24」が開発された。また、2000年には、DVDのディスク製造工程におけるピットカッティング精度を向上させる「DVD K2」を開発するなど、映像面のクオリティ向上にも寄与している。

K2技術の概念 K2技術の経緯

net K2は3段階で構成される

 新たに発表された「net K2」は、こうした「高音質化」、「マスターテープからの劣化の低減」というコンセプトを、音楽配信にも取り入れたもの。フォーマットなどではなく、高音質化技術の名称で、具体的には、マスター音源をエンコードする際に行なう「K2プリ処理」と、作成した圧縮音楽ファイルを伝送する際の「通信・伝送K2」、ポータブルプレーヤーなどの再生機器で行なう「K2ポスト処理」の3段階で構成される。

 通常、配信用の音楽ファイルを作成する際は、24bit/192kHzや、24bit/96kHzなどで収録した音源であるマスターテープから、非圧縮のWAVファイルを作成。そこからWMA/MP3/AACなど、各フォーマットにエンコードを行なうが、WAVファイルを作成する際に、K2テクノロジーを採用した専用ソフトを利用。独自のアルゴリズムを使って、エンコード後の音質を想定したそれぞれのフォーマット用WAVファイルを作成する。

 例えばWMAファイルを作成する際は、WMAモードを選択し、WMAエンコード用のソースWAVファイルを作成。そのWAVファイルから汎用のツールを使ってWMAフォーマットにエンコードする。このK2プリ処理により、高域や可聴範囲外の音声など、圧縮で欠落する情報を付加した圧縮音楽ファイルが作成できるという。

 また、同データを伝送する際にもK2技術を使用。音質や画質が変化する要因であるリップルやジッタを除き、1か0かという符号情報のみを伝えることで、音質の劣化が防げるという。

 そして、最終的なK2ポスト処理では、K2技術を投入し、周波数帯域拡張技術や、bit拡張技術などの高音質化機能を備えたプレーヤーを用意。net K2のデータを再生することで、マスターテープに近い高音質な再生音に復元できるとしている。

K2プリ処理の概念図 通信・伝送K2の概念図 再生ハードでのK2技術は、周波数帯域の拡張とbit拡張を行なう

 なお、、K2プリ処理を行なっただけの圧縮音楽ファイルでも、従来のファイルよりも高音質化しているため、K2技術に対応していないプレーヤーでnet K2楽曲を再生しても高音質化の恩恵は受けられる。

 同社では「プリ処理、伝送、再生機器での拡張」のトータルソリューションをビクターグループで展開するほか、プリ処理用のソフトウェアに関しては外部への提供を予定。業界標準の高音質化技術を目指して普及を推進する。また、伝送やポスト処理に関しても外部提供を検討しているという。


■ K2技術を使ったプレーヤーも

技術解説を行なったK2プロジェクトリーダーの桑岡俊治氏

 発表会場では、K2ポスト処理に対応したプレーヤーの例として、日本ビクターが11月1日に発売するHDDオーディオプレーヤー「XA-HD500」(オープンプライス/店頭予想価格45,000円前後)を展示。net K2を適用した音楽ファイルを再生し、音質をアピールしていた。

 なお、net K2の効果はnet K2適用ファイルをK2技術を投入したプレーヤーで再生した際に最大となる。XA-HD500にはK2技術を応用し、圧縮音楽ファイルの音質改善に対応させた「CCコンバータ」を内蔵している。

 音質イメージは、net K2適用ファイルをK2非対応のプレーヤーで再生した際は「CDクオリティを越え、マスターテープに近い音質」(ビクターエンタテインメント)。K2対応プレーヤーを利用した際は「マスターと同じか、それを越える音質になる」(同)という。

 同技術について、ビクタースタジオの奥原秀明オーサリング グループ長は「アーティストやエンジニアは、音の奥行きや表情、解像度など、あらゆる要素にこだわって最高のものを生み出している。しかし、それを圧縮音楽で何十分の1に圧縮すると、奥行きや余韻など、大事な要素が間引かれてしまう。気にならない曲もあるかもしれないが、ジャズやクラシックなど、圧縮音楽では魅力が大きく失われるジャンルも確実に存在する。そこに危機感を持っており、打開策を開発していた」とし、今後も音楽配信の高音質化に取り組むビクターグループの姿勢をアピールした。

比較再生デモも行なわれた。スタジオ内のモニタースピーカーでは、ノーマルの圧縮音声と比べ、net K2では音場の広さや音像の正確さ、低域の解像度、音圧などがオリジナルに近い。携帯機器でイヤフォンを使った場合では、分解能や高域などの恩恵も感じられそうだ

□ビクターエンタテイメントのホームページ
http://www.jvcmusic.co.jp/top.html
□ニュースリリース
http://www.jvcmusic.co.jp/company/press/2005/0915.html
□関連記事
【9月15日】ビクター、「スタジオチューニング」のHDDプレーヤー
-K2テクノロジーで高音質化。30時間再生可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050915/victor1.htm

(2005年9月15日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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