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「CEATEC JAPAN 2005」基調講演レポート
デジタル時代のコンスーマ・エレクトロニクスの未来
ソニーCEO ハワード・ストリンガー氏


ハワード・ストリンガーCEO
10月4日開催

会場:幕張メッセ


 CEATEC初日の10月4日午後には、ソニーのハワード・ストリンガーCEOによる「デジタル時代のコンスーマ・エレクトロニクスの未来」と題したキーノートが行なわれた。

 ストリンガーCEOが、こうした場で講演するのは、日本では初めてということもあって、聴講者の事前予約が殺到。満席の状態で基調講演はスタートした。

 ストリンガーCEOは、ソニーが先頃発表した中期経営計画について触れ、「ソニーは、いまでもイノベーションのリーダーであるが、それを、もう一歩先に進めるための取り組みを開始した。すっきりとした組織にし、さらに差異化した製品を作り、ユニークで、価値があり、感動体験をもたらすことができる、チャンピオンプロダクトを市場に投入する」と話す。

組織改革の内容

 その前提の上で、ソニーが中期計画で発表した、「個別最適志向のサイロ体質の解消」、「事業領域の絞り込み」、「ソニーならではの強みの追求」という3つのポイントを示し、さらに、中期計画には、「構造改革」と「成長戦略」の2つの側面があることを示した。

 とくに、「サイロ体質」の解消は、ストリンガーCEOにとっても早急の課題である。「最大の課題は、エレクトロニクス事業の復活。それを実現するために、商品企画、技術開発、ソフト開発、マーケティングなどの組織を横串とした。この横串構造は、ソニーが機敏で、即応性を実現する組織づくりという点では不可欠なものだ」と語った。



■ 多くのヒット製品を持つソニー

 ソニーには多くのヒット製品があるとストリンガーCEOは語る。

 「ウォークマンによって、我々はこれまでにない体験をすることができたし、携帯電話は、世界でもっともセクシーな製品だという評価を得ている。PSPもすでに600万もの出荷実績を持ち、いつでもどこでもエンターテイメントが楽しめるようになった。そして、来年には、プレイステーション3を出すことになる」

 これは、ソニーにとって、最大の突破口となる。「HDの世界がやってくるし、Blu-rayによる映像体験も可能になる。そして、Cellプロセッサによる比類のないエンターテイメント体験が可能になる。PS3はセルの始まりである。ソニー社内に、Cellデベロップメントセンターを新設し、Cellをベースとした新たな技術、商品、アプリケーションの開発を行い、これにより、インテリジェンスを組み込んだ体験が提供できるようになる」などとした。

社内にCellデベロップメントセンターを新設

 ストリンガーCEOは、こんなたとえ話も出した。「ヤンキースの松井選手の打席を、仕事が忙しくて見られなかった場合、1週間の録画した大量の映像のなかから、松井選手の打席だけを探して、しかも、それを3分間のハイライトビデオとして再構成してくれる。Cellによって、こうしたことが可能になる」

 こうした技術開発も、Cellデベロップメントセンターを核にした、横串組織が実現することになる。

 さらに、今後は、有機ELディスプレイに投資することを強調し、「モバイル、ホームの両面から見ても、この技術は有用である。次のエキサイティングな世界が始まる」と語った。



■ ソニー戦略の要はHD

 そして、ストリンガーCEOは、ソニーの製品戦略に触れて、次のように切り出した。

 「ハイディフィニション(HD)は、ソニーの戦略の要だ」。続けて、ストリンガーCEOは、次のようにも語る。「ソニーほど、HDにおいて優秀な企業はない。そして、大規模な投資を続けている。プロフェッショナル分野での経験もある。HDの世界を一般ユーザーに広げていくのがソニーの差異化につながる」。

HD製品の展開

 ソニーでは、今後、製品のHD比率を45%にまで引き上げることを明らかにしているが、「BRAVIAによる薄型テレビのHD化、HDR-HC1によるハイビジョンハンディカムの投入、そして、Blu-rayによるHD録画の実現といったように、パーソナル領域でHDを利用できるようになる。とくに、HC1はパーソナル化の上では、革命ともいえる出来事が起こった」などとした。

 Blu-rayに関しては、「23時間以上の映像を録画することができるこの規格に、ハリウッドのほとんどのスタジオが賛成している。また、PS3にこのドライブが入ることや、コピープロテクションがしっかりしているという点でも、高い評価を得ている。DVDが出たときの同じインパクトをもって、Blu-rayは登場することになるだろう」とした。



■ ウォークマンは横串の組織で巻き返す

「ウォークマンはナンバーワンを取り戻す」とした

 一方、ウォークマンについては、「ナンバーワンを取り戻す責務を負っている製品であり、コンテンツ、デバイス、サービスが一体化して巻き返していく必要がある。アップルに一歩先んじられているが、これは、縦割りの組織の結果、コンテンツ、デバイステクノロジー、サービスがシームレスに統合できなかったのが要因」とした。

 しかし、「いまや、シームレスな組織構造ができあがっており、今後は、これが解消されることになる」と巻き返しに意欲を見せた。



■ コンテンツの強みを生かす

 ストリンガーCEOは、ソニーには強力なデジタルコンテンツがあると断言する。そして、それが今後のコンシューマ・エレクトロニクス事業の拡大に大きな威力を発揮すると位置づける。

 「映画興行では、過去3年間トップの座を譲っていないし、ハリウッドのカラー映画作品の半分はソニーが持っている。HDのデジタルコンテンツも当社の資産が最も多い、さらに、ナンバーワンの音楽カンパニーであり、ナンバーワンのゲームビジネスカンパニーでもある。PSPで提案したUMDも、3か月で10万コピーを出荷するようなタイトルも出ており、DVDが8年前に登場した時と同じような業界の支援がある」などとした。

 ストリンガーCEOは、講演の最後に、「デジタル時代となったことで、お客様は王様となった。お客が望むものをハード、ソフト、サービスのあらゆる面から提供していくことが必要。先進的な技術と、マーケティング戦略、デザイン、サプライチェーンなどが絡み合って、これが提供できるようになる。ソニーは、6年連続でブランドナンバーワンの立場を維持しており、今後もCMO(チーム・マーケティング・オフィサー)を設置して、マーケティングの側面からも強化し、チャンピオンプロダクトを投入していく」とした。

「ソニーの強力なデジタルコンテンツが事業拡大につながる」とした 「ユーザーの望みをハード、ソフト、サービスの面から提供することが必要」とまとめた

 また、「王貞治選手は、バッターボックスに立ってもうまく打てない時に、一本足打法へと変更し、それによって成功した。ソニーもいま、スタンスを変え、新たな照準にあわせて、効率的で、革新的な組織へと変化しているところだ」と、日本の偉大な天才ホームランバッターを引き合いに出して、ソニーの変化を表現してみせた。


□CEATECのホームページ
http://www.ceatec.com/index.html
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-エレクトロニクス15事業撤退。HDやCellを積極推進
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050922/sony.htm

(2005年10月4日)

[Reported by 大河原克行]


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