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2005年も年末商戦に突入。各社からハイブリッドレコーダの冬モデルが相次いで発表・発売されている。機能面ではデジタルチューナを搭載した上位モデルに注目が集まるが、中級モデルの中に独創的な機能を搭載し、異彩を放つモデルがある。ソニーの「RDR-AX75」(11月21日発売/オープンプライス/実売8万円前後)だ。 最大の特徴は、新開発のMPEG-4 AVC/H.264エンコード専用LSIを搭載し、PSP用動画が作成できる「おでかけ・スゴ録」機能だ。通常のハイブリッドレコーダとしてMPEG-2録画が行なえるほか、同じ番組をH.264形式で同時録画が可能。さらに、USB端子も備えており、USBケーブルを介してPSPへH.264ファイルを直接転送できる。「ポータブルビデオプレーヤー対応スゴ録」とも言える1台となっている。 PSP用のMPEG-4動画作成機能は「PSX」(DESR-7700/5700)で既に実現されているが、PSPとH.264の組み合わせは、「Portable TV」の有料コンテンツ配信もスタートしたこともあり、携帯ビデオプレーヤー市場の今後を左右する注目の存在。 ハイブリッドレコーダとしての基本的な機能や、ユーザーの好みを学習して自動録画を行なう「x-おまかせ・まる録」機能は、既にレビューを掲載している、デジタルチューナを搭載した「RDZ-D90」と同じなので、今回はH.264変換機能とPSPとの連携機能に絞って使用感などをレポートする。
■転送/非転送に関わらずH.264へ変換 外観はRDR-HX72やHX82W、HX92Wなどとほぼ同じ。地上アナログチューナとBSアナログチューナを搭載し、HDD容量は250GB。アナログ対応ハイブリッドレコーダとしては標準的なスペックだ。フロントパネルを開くとPSP転送用のUSB端子が見える。メモリースティックPRO Duo/Duoスロットは備えていない。
基本的なメニュー構成は番組表表示、録画コンテンツ一覧、システムメニューの3種類。H.264動画の作成やPSPへの転送はシステムメニューの中にある「おでかけ・スゴ録」から行なう。 まず、全ての基本となるのが「高速転送録画」機能だ。名称だけを見ると転送する際に利用する機能に思えるが、実際は「MPEG-2でのリアルタイム録画と同時に、H.264フォーマットのファイルも作成(エンコード)する」という機能である。録画後にあらためてH.264ファイルをエンコードする時間がかからず、結果的にPSPに高速に転送できるため「高速転送録画」と名付けられている。 同機能はセットアップメニューからON/OFFを切り替えられる。工場出荷時は「ON」になっているため、通常利用している際には、どの番組を録画しても、1つの番組に対してMPEG-2ファイルとH.264ファイルの2個が保存されることになる。ただし、コピーワンスコンテンツのH.264ファイルは作成できない。 「おでかけ・スゴ録」メニューに入ると、HDDに録画済のコンテンツ一覧が表示される。既にH.264ファイルも用意されているコンテンツには「高速転送」マークが付いている。工場出荷時の設定のまま使っていれば、全てのコンテンツにマークが付くことになる。
しかし、AX75にH.264ファイルを再生する機能は無く、録画済コンテンツ一覧にもMPEG-2ファイル以外は表示されないため、H.264を1つのファイル(コンテンツ)として認識することはできない。H.264ファイルの存在を認識できるのは「高速転送マーク」の有無のみだけだ。 「PSPで見たいコンテンツを選択し、エンコードを行なう」といった使用方法をイメージしていると、若干戸惑う。「PSPに転送するかしないかわからない番組でも、とりあえずH.264ファイルを同時に作成しておく」というのがAX75の基本スタンスなのだ。
そのため、番組表(Gガイド)などから録画予約を行なう際にも、H.264ファイルに関する設定項目はなく、セットアップメニューから自動的に作成する/しないを選択するのみ。思い切った仕様だが、H.264ファイルの存在をユーザーに意識させないことで、わかりやすいシステムという評価もできる。全ての番組をH.264でエンコードしてしまえば、エンコードにかかる時間などを意識させることもない。 しかし、当然のことながらH.264ファイルを自動で作成する分だけ、HDDへの録画可能時間はMPEG-2のみの場合と比べ、少なくなる。
H.264の録画モードはセットアップメニューから選択できる。解像度は320×240ドットのQVGAで、映像ビットレートを768/384kbpsから選択する。音声はどちらのモードもAACの128kbps。面白いのは768/384kbpsに加え、「自動モード」を用意していること。ただし、自動的にビットレートを決定するモードではなく、MPEG-2の録画モードがXP~ESPの場合に768kbps、LP~SLPの場合は384kbpsになるモードだ。
録画予約時にH.264の画質は変更できないが、自動モードを利用してMPEG-2の録画モードを変更することで、間接的にH.264の録画モードを番組ごとに切り替えることもできる。 H.264作成のON/OFFと画質モードによるHDD録画可能時間は下表の通り。
250GBのHDDは現在のハイブリッドレコーダの標準的な容量だが、SPモード時にH.264作成のON/OFFで約13時間の記録可能時間差が出る(768kbps時)。こまめにコンテンツの消去、またはDVDへのライティングを行なうか、HDDに蓄積したままにするか、レコーダの利用形態によって判断のわかれるところだ。また、自動録画機能の「x-おまかせ・まる録」と、HDD内のコンテンツを古い順から自動消去する機能を併用する際は、コンテンツの保持期間もより短くなるので注意が必要だ。
■快適な「高速転送」機能 では、実際にPSPへの転送を行なってみよう。転送方法は簡単で、前面パネルに装備しているUSB端子とUSBケーブルを介してPSPを接続するだけ。後はPSPの「設定」から「USB接続」を選ぶだけで準備は完了。おでかけ・スゴ録の転送メニューから、コンテンツを選ぶと転送が開始される。複数のファイルを選択すると、選択順に番号が振られ、連続転送が行なえる。 実際のH.264動画のファイル容量は、1時間の番組の場合、768kbpsモードでは約394MB、384kbpsでは約228MBとなった。同ファイルの転送所要時間は、394MBファイルが4分21秒、228MBのファイルが2分15秒。30分番組で112MBのファイルは1分10秒で転送できた。朝の忙しい時間でも転送作業が負担になることは少なそうだ。
転送したファイルはバージョン2.0以降のファームウェアを適用したPSPで再生可能。タイトル名もGガイドで取得したものが反映されているのでわかりやすい。PSPの複雑なフォルダ構成を意識することなく転送が行なえ、サムネイル静止画も作られているため、パソコンから動画を転送するよりも手軽だ。転送したH.264はHDDから消えることはなく、何回でも転送可能。なお、第5世代iPodへの転送も試みたが、iTunesへの登録は行なえなかった。 転送先であるPSP内のメモリーステック容量が不足している場合は、アラートが表示される。しかし、そのまま空き容量分だけを転送することが可能で、空き容量を確保した後、残りのデータを転送することもできる。転送途中のコンテンツは「おでかけ・スゴ録」メニューで、何MBを転送済みかも確認可能。なお、転送途中のコンテンツもPSPで再生できた。
また、あらかじめH.264ファイルを作成する「高速転送」機能を利用せず、必要な番組だけを後からH.264に変換・転送することもできる。その際はPSPを接続しておく必要はなく、HDDに保存してくれる。転送時と同じように複数のファイルを選択すれば、深夜や外出時などに変換しておくことも可能だ。なお、PSPを接続しておけば合わせて転送も行なってくれるが、H.264ファイルを作成してしまえば転送自体は数分で終了するため、あえてPSPを起動させたまま接続しておく必要はないだろう。 1時間の番組を768kbpsモードで変換したところ、所要時間は約58分40秒。ほぼ実時間と言っていいだろう。なお、変換中はHDD内の動画の再生やDVDの再生は行なえない。手動で変換・転送したH.264ファイルは、PSPに転送してもHDD内に残るため、以降は自動作成ファイルと同じ感覚で取り扱うことができる。 ただし、手動変換を行なう場合、録画予約に注意が必要だ。変換作業時は録画が行なえないため、変換をスタートさせてしまうと予約録画が機能しなくなってしまうのだ。 そのため、予約録画の時間とかぶる時に手動変換を行なおうとすると「予約録画ができなくなるが、続行しますか?」という警告が表示される。1時間の番組で手動変換を検証したところ、現在時刻から1時間後に予約録画を設定すると、警告表示無しで手動変換がスタートできた。ただし、59分後に設定すると警告が表示された。おそらく「変換所要時間=コンテンツの実時間」で計算しているのだろう。 なお、変換作業はメニューから「変換停止」を選ばない限り継続される。レコーダの電源をOFFにしても変換作業は続行される。
■破綻の少ない高ビットレートモード PSPの画面で観賞するため、384kbpsモードでも実用十分の画質が得られる。映画の字幕は潰れ気味になるが、判別は可能。スポーツや群集が動くシーンでは流石にブロックノイズが気になるので768kbpsモードを利用した方が良いだろう。同モードでは破綻はほとんどなく、アニメの輪郭線もシャープに描写された。
■編集を行なうとH.264ファイルは消滅 通常のテレビ放送に加え、S映像やコンポジットなど、外部入力からの映像も、「高速転送」機能がONになっていれば、自動的にH.264ファイルが作成される。レコーダを「H.264エンコーダ」として扱うこともできるわけだが、H.264ファイルだけを作成することはできないのが若干不便に感じた。 HDDの空き容量さえ気にならなければ、H.264ファイルの存在やエンコード時間も意識せずにPSPへの高速転送が行なえ、H.264の画質クオリティも高い。屋外で動画を観賞したいというユーザーには非常に魅力的なレコーダと言えるだろう。しかし、いくつか気になる点もある。 1つは、MPEG-2ファイルの編集を行なうと、H.264ファイルが削除されてしまうこと。つまり、録画したコンテンツからCMをカットしただけでも「高速転送」表示は消え、PSPに転送するためには実時間の手動変換を行なわなくてはならない。MPEG-2を編集してもH.264ファイルは保持されるという設定も設けて欲しかった。 また、MPEG-2ファイルを削除するとH.264ファイルも削除されてしまう。そもそもファイルとして扱う概念が無いので当然のこととも言えるが、「HDDの残量が少なくなったので容量の大きいMPEG-2を削除してH.264だけを残す」と言うニーズもあるはずだ。
■さらなる使い易さに期待 全てのコンテンツをMPEG-2とH.264で同時録画するという概念は、従来のテレビキャプチャカードやソフトウェアエンコーダで感じる、“エンコード処理の煩わしさ”を払拭するもの。また、PSP本体とレコーダをUSBケーブルで繋ぐだけで転送も行なえるという手軽さも手伝い、ポータブルビデオプレーヤーのソリューションとして完成度が高く、ストレスも少ない。「結局めんどうになって使わなくなる」危険は少なそうだ。 しかし、H.264ファイルの管理面では前述の通り、まだまだ改善点はある。また、メモリースティックの空き容量だけ転送できるという機能も使い勝手が良いものだが、そこから一歩進んで、512MBや1GBなど、所有しているメモリーカードの容量に収まるように、自動的にビットレートや録画時間を配分してくれる機能なども欲しいところ。
機能的に頭打ち感のあるハイブリッドレコーダ市場における、新しい差別化機能として、今後のブラッシュアップにも期待したい。
□ソニーのホームページ
(2005年12月1日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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