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NHK、視聴者が生中継で参加する情報番組
-IT技術使用の新番組。XVDと公衆無線LAN活用


2006年1月14日放送開始


 日本放送協会(NHK)は、IT技術を利用し、視聴者が家庭用カメラで生中継を行なったり、ブログの内容から視聴者の関心事項をピックアップして紹介するなど、視聴者が参加して作り上げるという情報番組「@ヒューマン」を2006年1月14日から総合テレビで放送する。放送時間は毎週土曜日の夜10時58分から12時まで。

 2006年1月からスタートするNHKの新番組の中でも、「最大の目玉」に位置付けられているという番組。番組の基本は1週間の出来事を伝える情報番組だが、特徴は“つながる”をテーマに、視聴者がインターネットを介して映像で参加し、スタジオの著名人や、別の場所から接続している視聴者と意見を交わしたりできること。

 まず、NHKの番組としては初めて、番組の公式ブログを開設。その週に放送する番組の編集会議の内容を公開。閲覧している視聴者から寄せられる意見や情報を参考にしながら、取材を行なったり、取材の要望を受け付けたりする。

 さらに、Webカメラやネットワーク機能などをセットアップしたノートパソコンをベースとした「@ヒューマン・つながるBOX」を開発。幅30cm程度のブリーフケース型のシステムで、インターネット回線と接続することで、NHKへ映像をリアルタイムで伝送、そのまま生中継が行なえる。

通常の中継には、大規模な準備が必要となるため、深夜の住宅街などでは中継ができなかった しかし、インターネットを使った「@ヒューマン・つながるBOX」を利用すれば、全国の視聴者が生中継を行なえる

森田智樹チーフプロデューサー

 このシステムを、ゲストや視聴者に送り、ゲストの自宅や仕事場、視聴者の家など、様々な場所から番組に出演。取り上げられている話題の討論などに参加できるという。「例えば、沖縄の米軍基地移転問題を取り上げる場合、実際に基地のそばに暮らす沖縄の視聴者と、新たに基地が移転する本土に住む視聴者が、スタジオのゲストらと一緒に番組に参加し、話し合うことができる」(森田智樹チーフプロデューサー)という。

 さらに、「@ヒューマン・つながるBOX」のモバイル版「@ヒューマン・バックパック」も開発。家庭用のSD/HDビデオカメラと、ハードウェアエンコーダ、無線LAN出力ユニットなどを接続し、バッグに詰めたもので、タレントや著名人らが屋外の公衆無線LANなどを使って生中継を行なう。「威圧的な放送用カメラを使わないので、生の声が集められるほか、撮影者独自の視点からしか見えないものもある」(森田プロデューサー)という。

小郷知子のアナウンサーは福岡から「@ヒューマン・バックパック」で発表会場へ中継で参加。写真ではわかりにくいが、彼女が背負っている黒いバッグに生放送用機材がすべてつまっている。肩には無線LAN送信用アンテナ

 番組は生中継のため、内容は非常に流動的なものになるという。事前に厳密な構成も行なえないため、結論の出ない討論になったり、参加した視聴者が番組の魅力向上に貢献できない場合なども予想される。この点について森田プロデューサーは「テレビ番組は必ずしも答えが出なくても良いという新しい考えで作っている。しかし、その議論を多くの人が聞き、参加することには意味がある」と語った。

ブログから最新の流行キーワードを抽出する「きざし・ランキング」

 メインは上記の内容となるが、番組内にはほかにもスポーツコーナーや「きざし・ランキング」が含まれる。「きざし・ランキング」は、ネット上のブログから情報を自動的に収集し、新たに書き込まれた文章を分析。世の中の人が関心を持っている、もしくは持ちはじめている話題をキーワードとして抽出し、ランキング形式で紹介する。

 同システムは、株式会社シーエーシーが開発した「kizasi.jp」を使用。「これまでの番組はスタッフが“視聴者がこれが見たいだろう”という憶測や直感にたよって作られていた。しかし、ブログの傾向を見ることで、視聴者の興味や関心事項を本当に反映させたコーナーが作れる」という。抽出されたキーワードは番組が取材したVTRやCG技術を駆使して紹介される。

左から一橋忠之アナ、島津有理子アナ、西東大アナ

 また、オープニングも視聴者の参加を重視。携帯電話やパソコンから視聴者が撮影した写真を募集し、オープニングのCG映像に、その写真を組み込む。ムービーの製作はプロダクション I.Gが担当。映像は毎週アップデートされるため、同じタイトルが放送されるのは一度きりとなる。

 番組のメインキャスターは島津有理子アナウンサーが担当。スポーツコーナーは一橋忠之アナウンサーが、リポーターは西東大、小郷知子のアナウンサー2名が受け持つ。スタッフには「クローズアップ現代」や「プロジェクトX」の製作陣も参加。大河ドラマの関係者も参加するなど、「NHK内部の垣根を越え、一丸となって製作している」とした。


■XVDで生中継。視聴者のハイビジョン中継も可能

「@ヒューマン・バックパック」の中身

 屋内で利用する「つながるBOX」はパソコンをベースとしたものだが、バックパック中継用のシステムには、ハードウェアのXVDエンコーダを採用した。家庭用のDVカメラとエンコーダを接続し、700~800kbpsでXVDフォーマットにリアルタイムエンコードする。エンコードユニットはIP送信機能も備えており、作成されたデータはエンコーダのEthernet端子から無線送信ユニットへと伝送する。なお、ユニットには受信するNHK側のシステムのIPアドレスがあらかじめ記憶されている。

 なお、同XVDエンコーダはSD解像度対応のものだが、ハイビジョン解像度に対応したユニットも開発されており、ソニーの「HDR-HC1」など、小型のハイビジョンカメラと接続し、3~10MbpsのビットレートでHD映像の生中継も可能になるという。また、次世代の無線LANとして実験が行なわれているIEEE 802.16a(WiMAX)とも連携し、「手軽なハイビジョン中継」を実現していくとしている。

生中継に利用するハードウェアのXVDエンコーダ。映像入力とEthernet端子を装備している


■NHKを変えるため、現場から生まれた番組

 挨拶に立った島津有理子アナは、目指す番組の姿として「普通の番組のように、予定調和を行なうのではなく、良い意味で流動的な番組にしたい。イメージ的には、視聴者が参加できる広場のようなものを目指している」という。

 また、「様々なIT技術を取り入れているが、技術面はあまり前面に出さず、自然に見てもらえるようにしたい。真面目に、楽しく、最新の情報に触れられ、最後にはジーンとくるような番組を目指す」とした。

 さらに、プロジェクトの発端として「昨今のNHKは、様々な面から批判を浴びて厳しい状況にある。また、“放送と通信の融合”が叫ばれ、新しい公共放送のあり方にも様々な議論が交わされている」とした上で、「だからこそ、NHKを変えたい、新しい放送のあり方をカタチにしたいと考えた。企画は上層部ではなく、現場で立ち上げたもの。スタッフは本当に熱い気持ちで取り組んでいるので、期待して欲しい」と締めくくった。

番組にかける想いを語る島津アナ。“変わるNHK”を象徴するような番組になるという

□NHKのホームページ
http://www.nhk.or.jp/
□番組の公式サイト
http://www.nhk.or.jp/human/

(2005年12月7日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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