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ロスレスオーディオの「MPEG-4 ALS」が国際標準に承認
-32bit/192kHz対応。「世界一のロスレス」


NTTコミュニケーション科学基礎研究所 守谷健弘 人間情報研究部長

12月27日発表


 日本電信電話株式会社(NTT)は、同社が開発に取り組み、国際標準化作業を進めてきたロスレス音声圧縮技術がMPEG(Moving Picture Expert Group)の国際標準規格「MPEG-4 ALS」として承認されたと発表した。

 「MPEG-4 ALS(Audio Lossless)」は、NTT研究所によるPARCOR係数やマルチチャンネル符号化技術など、NTTが提案した多くの要素技術を中心に、NTTが要求条件や技術公募を企画。独ベルリン工科大学や米RealNetworks、シンガポールのI2Rなどと協力し、性能改善のための技術改善や提案、相互検証、参照ソフトの作成などが進められていた。

 その後23カ国による2回の国別投票と改定を経て、ISO/IECの最終国別投票により、「14496-3 3rd ED AMD 2(通称ALS)」として国際標準に承認された。

競合技術との圧縮性能比較

 特徴は完全に元の情報に復号できるロスレス技術でありながら、高圧縮率と、デコード処理の高速化を両立させたこと。

 対応する入力ソースはPCM形式で、サンプリング周波数は最高192kHz、量子化ビット数は32bit、チャンネル数は65,536チャンネルまでサポート。さらにプロ向けオーディオの一部で採用されている32bit浮動小数点形式のデータにも対応する。

 MPEG-4 ALSを用いることで、元データ比で15~70%程度まで圧縮可能。特に高サンプリングレートかつマルチチャンネル音声では高い圧縮率を実現でき、「ロスレス圧縮としては世界一のレベル(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 守谷健弘 人間情報研究部長)」という。また、NTTでは共同開発のMPEG-4 ALS参照デコーダよりも、高速にデコードできる独自デコーダも開発した。エンコーダについては開発途上だが、「実時間より早く符号化できる」という。


MPEG-4 ALSの優位性 対応する入力

 具体的な利用例としては、NTTコミュニケーションズが、業務用音楽の蓄積や配信効率化ツールとしてシステムに組み込んで販売予定。さらにNTTグループとして業務用オーディオ編集ソフトや個人用の携帯機器、編集ソフトなどの音楽関連の応用製品も計画しているほか、医療データや環境データの蓄積用途などの展開も見込んでいるという。

 今後、標準化委員会で、参照ソフトのソースコードや相互接続性試験などの整備が行なわれるほか、関連特許を任意団体による特許プールで管理し、ライセンスを行なう予定。具体的な特許プールの方針は未定だが、MPEG LAなどの団体、もしくはNTTと特許を所有する各社による管理会社の設立などを検討していく。ライセンスの開始は「一年以上先になる」とのことで、対応製品の登場もライセンス開始以降となる見込み。


■ サブマリン特許の危険性は少ない

NTT主体の要素技術

 発表会では、NTTコミュニケーション科学基礎研究所の守谷工学博士が技術説明を行なった。既存のロスレス圧縮技術については、「特許やサポートなどの問題から、いずれもNTTがビジネスで使うのには問題がある」とし、「MPEG-4 ALSでは国際標準化により100年後に必ず使える技術を目指した。特許権利関係がクリアで、他のサービスとの相互接続性も維持できる」と標準化の優位点を説明した。

 MPEG-4 ALSには、NTT主体の要素技術として、'72年にNTT研究所が開発した「PARCOR係数」による線形予測や、東大と共同開発したマルチチャンネル符号化、長期予測技術。さらに、浮動小数点符号化、ランダムアクセス用漸増次数線形予測技術などが含まれている。「中核となる技術は20~30年以上前に確立されており、サブマリン特許の危険性は少ない」という。

 ライセンス料については、「特許でビジネスをするつもりはなく、理解を得られる金額設定としたい」という。具体的な対応製品は未定だが、Windows Media Audioでの採用提案なども検討していく。

□NTTのホームページ
http://www.ntt.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.ntt.co.jp/news/news05/0512/051227.html

(2005年12月27日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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