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International CESの開幕前日となる4日(現地時間)、毎年恒例であるMicrosoft会長兼Chief Software Architectのビル・ゲイツ氏の基調講演が行なわれた。 ゲイツ氏は、「2005年はMicrosoftにとって、とても大きな変革の一年だった。Windows PCシェアは11%の成長を見せ、なにしろXbox 360の発売の年となった。2006年はMicrosoftにとって、より大きな年となるだろう。Office12が発売され、Windows Vistaも出る。そしてMedia Centerも主流製品として成長を遂げることは間違いない。」と切り出した。 2005年に引き続き、ビッグイベントが続く2006年もMicrosoftにとって、追い風の強い年であるという認識のようだ。
■ Windows Vistaが「クロスデバイス・アプローチ」の根幹に 「ユーザー(コンシューマ)は、どんどんネットワークに繋がることを切望し、その中心をになうのが(我々マイクロソフトの)ソフトウェアである」(ゲイツ氏)と前置きをした上で、2000年以降言い続けている、2000年から始まったデジタル化時代(Digital Decade:10年を一区切りした時代)の最後期、2010年頃のITコンシューマ・エレクトロニクスの未来像をデモンストレーションした。 朝起きたときにまずチェックするのは大画面情報テレビ。そこには家族の伝言が貼り付けられていたり、家族の居場所やスケジュールが表示されていて、最新ニュース・クリップも提示されている。それらはタッチスクリーン操作で直感的かつ自在にその内容を参照したり、PDAや携帯電話といったポータブルなIT家電にコピーすることもできる。 仕事机には大きな3画面のデスクトップPCがあって、自分のタブレットPC側の資料をワイヤレスでシームレスに3画面デスクトップに移動、オンラインカンファレンスをこの資料を見ながら進めることが出来る。カンファレンスを進めている間に「渋滞が発生しているので空港に急いだ方がよい」というスケジューラからの警告が現れ、携帯機器にお勧めドライブルートが転送された。
飛行場で出会った知人からもらったIC付き名刺の情報を同じようにタッチスクリーン式PCの画面に置くとその情報がデスクトップ上に出現し、内容を確認して必要であれば携帯機器の方にコピーすることが出来る。物理的な情報アイテム(この場合は名刺)をすぐ電子情報データに変換してシームレスに自分の携帯機器に取り込むことが出来るというわけだ。 携帯電話をこのスクリーンの上から取り去ってその場を立ち去れば、ログオフしたことになり、前のユーザーが使っていた情報は全てクリアされ、その共有スペースは、また別のユーザーの来訪を待つことになる。
「ソフトウェアはデバイスとユーザーを繋ぐ技術だ。使いやすく便利なものにするために進化を続ける。ただし、ソフトウェアはデバイスのために作られるものではない。ユーザーのために作られなければならない。」(ゲイツ氏) ゲームをしたり、何かを開発したり、文書やスプレッドシートを作成したり、といった状況によっては全く異なる作業を行なうことになるユーザーに対し、シンプルでわかりやすい共通のインターフェイスと使用感を与えることがソフトウェアの使命であり、そういう進化をしていかなければならない、とゲイツ氏は主張する。 そうしたこれからの「そうあるべきソフトウェアの形」の具体的なパラダイムとしてゲイツ氏が提示したのが「クロスデバイス・アプローチ」という概念だ。これはソフトウエアが、全く異なる種類のデバイス(機器、機械)同士を結びつけて新しい活用のスタイルを創造するというもの。「このクロスデバイス・アプローチの中核をなすのがインターネットである」とする。 インターネットを根幹としたクロスデバイス・アプローチで、既に実用化されているものとして、音声会話をインターネット経由で行なうVoIP、テレビ放送や視聴をインターネット経由で行なうIPTVを挙げる。 このクロスデバイス・アプローチは、まだまだ我々が見知らぬメディアの形を生み出すかもしれない。驚くようなエンターテインメントのスタイルや、全く革命的なビジネスモデルを作り出すかもしれない。 ゲイツ氏は、「このエコシステムの根幹を担っていくだろうOSが、今年後期に登場するWindows Vistaになる」として、次世代WindowsであるVistaへと話題を繋いだ。
■ Vista世代のWindows Media Playerはこうなる
情報インデックスの管理が非常に洗練されており、曲の検索システムが劇的に高速化されているのが特徴だと、Group Program Manager,Consumer MarketingのAaron Woodman氏は説明する。 1万曲が登録されたシステムにおいても、アーティスト名などのキーワードを入力すれば、入力している最中から前方一致検索でリアルタイムにジャケットアートと共に候補曲が出現していく。
また、このPC上の音楽エンターテインメントをより楽しいものにするためのプロジェクト「URGE」が紹介された。
曲をオンライン購入することが出来るのはもちろんのこと、手持ちの音楽ライブラリに対してURGEの機能が利用できる。たとえば、あるお気に入りのアーティストの曲と似た感じの曲をピックアップしてプレイリストを作ってくれたりする。その見つけた曲の歌詞や音楽評論家のレビュー記事なども参照することも可能となっている。なお、このURGEはWMP11専用で開発されているとのこと。
■ Portable Media Center版gigabeatが登場 「1年前のこの基調講演ではWindows Media Center(WMC)は150万本を出荷したと紹介した。今回は、今日までに累積650万本出荷したことを報告する。WMCベースのPCは130メーカーで製造されており、33ヶ国で販売されるようになった。WMCは今年は一層のユーザー拡大を行ない、またWindows Vista世代においてさらに発展する」として、担当者のマイクロソフト、Windows,corporate vice president,Joe Belfore氏を登壇させ、WMC関連の新サービスや新ハードウェアを紹介した。
そして、もう一つ、東芝のプレスカンファレンスでもアナウンスされず、なかば隠し球的に発表されたのが東芝のWMC対応のgigabeatだ。若干、側面は厚みがあるようだが面持ちはGigabeatそのまま。30GB HDDを搭載し、バッテリで4時間のムービー再生が可能。発売は4月を予定。 操作インターフェイスは、青色背景のお馴染みのWMCインターフェイスを採用しており、gigabeatでありながら、完全なPortable Media Centerクライアントとなっている。[Windows]キーを押すとすぐさまにWMCメニューが立ち上がり、WMCサーバーとのコンテンツの同期も簡単に行なえる。 このPMC版gigabeatでは、WMCサーバーからのコンテンツ転送だけでなく、直接オンラインのコンテンツポータルからコンテンツをダウンロードしてくることが可能になっている。 デモでは、そのコンテンツプロバイダとして映画専門チャンネルSTARZ!が提供する「VONGO」が紹介された。VONGOではPMCから直接タイトル単位のコンテンツ購入とダウンロードが行なえる。もちろん、STARZ!チャンネルに加入してこれをデスクトップPC型のWMCサーバー機に録画して、これをエンコードしてPMCへ転送することもできるわけだが、映像をPMCで見ることが分かり切っている場合などは、直接購入できる選択肢が用意されているのは確かにありがたい。
■ Windows Media Center、そしてXbox 360とHD DVD Belfore氏はWindows Vista世代のMedia Centerで実現される技術デモも行なった。それがWMCによるHD DVDの再生だ。 HD DVDは映像がハイビジョン画質に高品位化されているだけでなく、そのインタラクティビティも大部向上している。デモでは、映画を再生中に、登場女優のプロフィールを参照したり、メイキングスタッフのコメンタリーも、そのスタッフが話している様子の映像を映画本編にリアルタイムオーバーラップ表示させたりといった効果を披露した。
続いて、Xbox 360についても手短ながらマイクロソフト、Xbox Corporate Vice President,Peter Moore氏よりアップデート情報が報告された。 それは、Xbox 360向けに外付けのHD DVDドライブが提供されるというものだ。接続形態や、価格は未定としながらも発売時期は2006年後半と発表された。 なお、この件に関しては、モックアップ展示もなく、事実上の口頭でのアナウンスのみとなっている。マイクロソフトはWindows環境下でHD DVDを強力推進していくとするアナウンスを随分前より行なってきたわけだが、この流れをゲーム機であるXbox 360の方にまで拡大していくという意思表明に相当するものだと考えられる。
□2006 International CESのホームページ(英文)
(2006年1月6日) [Reported by トライゼット西川善司]
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