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ビル・ゲイツ基調講演レポート
-Vista/WMP11/Xbox 360など。HD DVDリッピングのデモも


マイクロソフト会長兼Chief Software Architect、ビル・ゲイツ氏

会場:Las Vegas Convention Center
    Sands Expo
    Las Vegas Hilton Hotel
    Alexis Park Hotel

会期:1月5日~8日(現地時間)


 International CESの開幕前日となる4日(現地時間)、毎年恒例であるMicrosoft会長兼Chief Software Architectのビル・ゲイツ氏の基調講演が行なわれた。

 ゲイツ氏は、「2005年はMicrosoftにとって、とても大きな変革の一年だった。Windows PCシェアは11%の成長を見せ、なにしろXbox 360の発売の年となった。2006年はMicrosoftにとって、より大きな年となるだろう。Office12が発売され、Windows Vistaも出る。そしてMedia Centerも主流製品として成長を遂げることは間違いない。」と切り出した。

 2005年に引き続き、ビッグイベントが続く2006年もMicrosoftにとって、追い風の強い年であるという認識のようだ。


■ Windows Vistaが「クロスデバイス・アプローチ」の根幹に

 「ユーザー(コンシューマ)は、どんどんネットワークに繋がることを切望し、その中心をになうのが(我々マイクロソフトの)ソフトウェアである」(ゲイツ氏)と前置きをした上で、2000年以降言い続けている、2000年から始まったデジタル化時代(Digital Decade:10年を一区切りした時代)の最後期、2010年頃のITコンシューマ・エレクトロニクスの未来像をデモンストレーションした。

 朝起きたときにまずチェックするのは大画面情報テレビ。そこには家族の伝言が貼り付けられていたり、家族の居場所やスケジュールが表示されていて、最新ニュース・クリップも提示されている。それらはタッチスクリーン操作で直感的かつ自在にその内容を参照したり、PDAや携帯電話といったポータブルなIT家電にコピーすることもできる。

 仕事机には大きな3画面のデスクトップPCがあって、自分のタブレットPC側の資料をワイヤレスでシームレスに3画面デスクトップに移動、オンラインカンファレンスをこの資料を見ながら進めることが出来る。カンファレンスを進めている間に「渋滞が発生しているので空港に急いだ方がよい」というスケジューラからの警告が現れ、携帯機器にお勧めドライブルートが転送された。

キッチン、あるいはリビングでの設置を想定した大画面サイズのタッチパネル式情報テレビモニタ。最上段が伝言や時計、中断がニュース、最下段が核家族のスケジュールや今の居場所を知る情報欄 タブレットPCと会社のデスクトップPCとのデータ連係をワイヤレスでシームレスに行なう

 飛行場に着くとそのラウンジには共用ワークスペースのタッチスクリーンPCがあって、この上に自分の携帯機器を置くと、その中から自分のマイデスクトップがこの共有PCに転送されて出現する。

 飛行場で出会った知人からもらったIC付き名刺の情報を同じようにタッチスクリーン式PCの画面に置くとその情報がデスクトップ上に出現し、内容を確認して必要であれば携帯機器の方にコピーすることが出来る。物理的な情報アイテム(この場合は名刺)をすぐ電子情報データに変換してシームレスに自分の携帯機器に取り込むことが出来るというわけだ。

 携帯電話をこのスクリーンの上から取り去ってその場を立ち去れば、ログオフしたことになり、前のユーザーが使っていた情報は全てクリアされ、その共有スペースは、また別のユーザーの来訪を待つことになる。

飛行場のラウンジという設定の共有型タブレットPC。ここに携帯機器を置くと自動的にログイン。マイデスクトップも出現

 「ソフトウェアはデバイスとユーザーを繋ぐ技術だ。使いやすく便利なものにするために進化を続ける。ただし、ソフトウェアはデバイスのために作られるものではない。ユーザーのために作られなければならない。」(ゲイツ氏)

 ゲームをしたり、何かを開発したり、文書やスプレッドシートを作成したり、といった状況によっては全く異なる作業を行なうことになるユーザーに対し、シンプルでわかりやすい共通のインターフェイスと使用感を与えることがソフトウェアの使命であり、そういう進化をしていかなければならない、とゲイツ氏は主張する。

 そうしたこれからの「そうあるべきソフトウェアの形」の具体的なパラダイムとしてゲイツ氏が提示したのが「クロスデバイス・アプローチ」という概念だ。これはソフトウエアが、全く異なる種類のデバイス(機器、機械)同士を結びつけて新しい活用のスタイルを創造するというもの。「このクロスデバイス・アプローチの中核をなすのがインターネットである」とする。

 インターネットを根幹としたクロスデバイス・アプローチで、既に実用化されているものとして、音声会話をインターネット経由で行なうVoIP、テレビ放送や視聴をインターネット経由で行なうIPTVを挙げる。

 このクロスデバイス・アプローチは、まだまだ我々が見知らぬメディアの形を生み出すかもしれない。驚くようなエンターテインメントのスタイルや、全く革命的なビジネスモデルを作り出すかもしれない。

 ゲイツ氏は、「このエコシステムの根幹を担っていくだろうOSが、今年後期に登場するWindows Vistaになる」として、次世代WindowsであるVistaへと話題を繋いだ。

Windows Vistaエコシステムがクロスデバイスアプローチを促進させるのか?


■ Vista世代のWindows Media Playerはこうなる

新Windows Media Playerのロゴ
 Windows VistaのWindows Media Player(WMP)はWMP11となり、ユーザーインターフェイスを完全にリニューアルし、音楽データの管理は、アルバム、アーティスト、ジャンル、レーティングといった基本情報に加え、CDジャケット画像なども含めて管理される。

 情報インデックスの管理が非常に洗練されており、曲の検索システムが劇的に高速化されているのが特徴だと、Group Program Manager,Consumer MarketingのAaron Woodman氏は説明する。

 1万曲が登録されたシステムにおいても、アーティスト名などのキーワードを入力すれば、入力している最中から前方一致検索でリアルタイムにジャケットアートと共に候補曲が出現していく。

WMP11の新楽曲管理システム。非常に高速で管理が直感的に行なえる

 また、このPC上の音楽エンターテインメントをより楽しいものにするためのプロジェクト「URGE」が紹介された。


新しい音楽との出会いの形を作る「URGE」 「URGE」の紹介に登壇したMTV NETWORK Music,Group President,Van Toffler氏 「MTV制作のオタクを主人公にしたコメディ『ナポレオン・ダイナマイト』の主役のナポレオンはビル・ゲイツをモデルにしたんだ。そのアイディア料として舞台裏でゲイツに50ドル渡したよ(笑)」とジョークを飛ばしたToffler氏

 URGEはマイクロソフトと、音楽専門チャンネル「MTVネットワーク」の新ベンチャーサービスで、ユーザーの慣性に訴える新しい音楽のカスタマイズと探索のメソッドを提供するものだ。URGEはインディーズからメジャーレーベルまで、100以上のラジオ放送局の放送までをカバーしており、ユーザーの好みに応じた音楽を様々な手段で見つけてくれて、さらには新しい音楽の楽しみ方までを提案してくれる。

 曲をオンライン購入することが出来るのはもちろんのこと、手持ちの音楽ライブラリに対してURGEの機能が利用できる。たとえば、あるお気に入りのアーティストの曲と似た感じの曲をピックアップしてプレイリストを作ってくれたりする。その見つけた曲の歌詞や音楽評論家のレビュー記事なども参照することも可能となっている。なお、このURGEはWMP11専用で開発されているとのこと。

「URGE」のメイン画面 アーティスト「JUSTIN TIMBERLAKE」の楽曲とイメージの似た曲を自動探索。こうした曲をWMP11のプレイリストとして登録可能 と思ったらJUSTIN TIMBERLAKE氏、ご本人が登場。新アルバム発売の告知を行なった



■ Portable Media Center版gigabeatが登場

 「1年前のこの基調講演ではWindows Media Center(WMC)は150万本を出荷したと紹介した。今回は、今日までに累積650万本出荷したことを報告する。WMCベースのPCは130メーカーで製造されており、33ヶ国で販売されるようになった。WMCは今年は一層のユーザー拡大を行ない、またWindows Vista世代においてさらに発展する」として、担当者のマイクロソフト、Windows,corporate vice president,Joe Belfore氏を登壇させ、WMC関連の新サービスや新ハードウェアを紹介した。

「次世代WMCはインテルViiVテクノロジーとの強力なタイアップの上に成り立つものとなる」とゲイツ氏 WMCのパートナー一覧

 紹介されたのはコメディ専門チャンネル「COMEDY CENTRAL」のWMCコンテンツ・ポータルサイトとAVERATEC製の超コンパクトサイズのWMC PC。このWMC PCの方は2006年4月に発売が予定されており、チューナ付きで1,000ドル未満、チューナ無しで499ドルになる見込みだという。

 そして、もう一つ、東芝のプレスカンファレンスでもアナウンスされず、なかば隠し球的に発表されたのが東芝のWMC対応のgigabeatだ。若干、側面は厚みがあるようだが面持ちはGigabeatそのまま。30GB HDDを搭載し、バッテリで4時間のムービー再生が可能。発売は4月を予定。

 操作インターフェイスは、青色背景のお馴染みのWMCインターフェイスを採用しており、gigabeatでありながら、完全なPortable Media Centerクライアントとなっている。[Windows]キーを押すとすぐさまにWMCメニューが立ち上がり、WMCサーバーとのコンテンツの同期も簡単に行なえる。

 このPMC版gigabeatでは、WMCサーバーからのコンテンツ転送だけでなく、直接オンラインのコンテンツポータルからコンテンツをダウンロードしてくることが可能になっている。

 デモでは、そのコンテンツプロバイダとして映画専門チャンネルSTARZ!が提供する「VONGO」が紹介された。VONGOではPMCから直接タイトル単位のコンテンツ購入とダウンロードが行なえる。もちろん、STARZ!チャンネルに加入してこれをデスクトップPC型のWMCサーバー機に録画して、これをエンコードしてPMCへ転送することもできるわけだが、映像をPMCで見ることが分かり切っている場合などは、直接購入できる選択肢が用意されているのは確かにありがたい。

マイクロソフト、Windows,corporate vice president,Joe Belfore氏 WMC用の新インタラクティブチャンネル「COMDEY CENTRAL Mother Load」。過去の放送アーカイブのクリップにアクセスが可能 2006年4月発売予定のAVERATEC製コンパクトWMC-PC。チューナ付きでUS$1000未満、チューナ無しでUS$499になる見込み

東芝のPMC版gigabeat。30GB HDDを搭載し、バッテリーで4時間のムービー再生が可能。発売は4月を予定 緑色のWindowsボタンでWMCのメニューが開く

PMCクライアントからの直接コンテンツ購入対応のポータルSTARZ! VONGO LG電子も同様のPMC機を同時期に発売予定。こちらは液晶画面がソニーPSP程度の大きさで、画面サイズの大きさをウリにしたモデルのようだ



■ Windows Media Center、そしてXbox 360とHD DVD

 Belfore氏はWindows Vista世代のMedia Centerで実現される技術デモも行なった。それがWMCによるHD DVDの再生だ。

 HD DVDは映像がハイビジョン画質に高品位化されているだけでなく、そのインタラクティビティも大部向上している。デモでは、映画を再生中に、登場女優のプロフィールを参照したり、メイキングスタッフのコメンタリーも、そのスタッフが話している様子の映像を映画本編にリアルタイムオーバーラップ表示させたりといった効果を披露した。

HD DVDでは本編再生中に登場女優のプロフィールなどがリアルタイムで閲覧可能 制作者コメンタリーも同様に本編再生中にスタッフの映像をオーバーラップさせてのリアルタイム視聴が可能

 特に興味深かったのは、HD DVDの合法的コピー(リッピング)のデモで、PCのHDDやネットワーク上のストレージにHD DVDの映像コンテンツをハイビジョンのままデジタルコピーが可能であることを(最後までではないが)実際にやって見せた。

HD DVDの合法コピーの専用メニュー。ディスク丸ごと転送、本編のみの転送、SD解像度での転送が選べる デモではHD解像度での転送を選択して実行

 Vista世代のWMCでは、こうした合法的にリッピングしたHD DVDコンテンツをサムネイル付きで管理することができ、Xbox 360のようなWMCクライアントで再生してみることが出来るようになるという。

Vista世代のWMCではHD DVDからリッピングした映像ライブラリを管理可能

 続いて、Xbox 360についても手短ながらマイクロソフト、Xbox Corporate Vice President,Peter Moore氏よりアップデート情報が報告された。

 それは、Xbox 360向けに外付けのHD DVDドライブが提供されるというものだ。接続形態や、価格は未定としながらも発売時期は2006年後半と発表された。

 なお、この件に関しては、モックアップ展示もなく、事実上の口頭でのアナウンスのみとなっている。マイクロソフトはWindows環境下でHD DVDを強力推進していくとするアナウンスを随分前より行なってきたわけだが、この流れをゲーム機であるXbox 360の方にまで拡大していくという意思表明に相当するものだと考えられる。

マイクロソフト、Xbox Corporate Vice President,Peter Moore氏 基調講演最後にはマイクロソフトChief Executive Officer,Steve Ballmer氏とゲイツ氏による、EA Sports製、Xbox 360用ボクシングゲーム「Fight Night Round3」(北米では2月14日発売予定)を使ったエキシビジョンマッチが行なわれた。勝ったのはゲイツ氏


□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/default_flash.asp
□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/

(2006年1月6日)

[Reported by トライゼット西川善司]


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