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大容量化、小型化、ビデオ対応など着々と進歩を続けるiPodシリーズ。今回の「Macworld Conference&Expo San Francisco 2006」では残念ながら新製品は発表されなかったものの、iPodシリーズの新たなオプション製品が追加された。
それが、第5世代iPodとiPod nano用のリモコン「iPod Radio Remote」だ。第4世代iPodまではヘッドフォン出力脇にリモコン端子を用意しており、再生/停止、スキップ/バックなどの操作が可能な専用リモコンがオプションとして販売されていた。しかし、iPod nanoではこのリモコン端子を廃止。これらのリモコンが利用できなくなるとともに、サードパーティ製のFMトランスミッタやフォトアダプタなどの周辺機器など、リモコン端子を利用するiPod用周辺機器の多くが、流用できなくなっいた。 iPod nanoでは小型化による実装面積の制限でリモコン端子が省かれたと考えていたが、その後発表されたビデオ対応の第5世代iPodでもヘッドフォン脇のリモコン端子は取り払われていた。
そのため、従来リモコン端子を活用していた多くの周辺機器が、Dockコネクタ接続型に移行している。周辺機器についてはDockコネクタに統合し、リモコン端子よりより高付加価値、高機能を実現するというのがAppleの基本方針のようだ。 と同時に、独自のDockコネクタの仕様開示のため、正式にAppleと契約して機器を開発する、いわゆる「Made for iPod」のプログラムも開始されており、サードパーティ製の対応機器を管理する狙いもあると思われる。 ともあれ、Dockコネクタへの統合により新リモコンの一層の高機能化も期待される。実際にFMチューナの内蔵などの機能強化が図られているわけだが、早速使用して、その使い勝手を検証した。 なお、19日現在、「iPod Radio Remote」の日本への入荷数は非常に限られているようで、AppleStoreなどでもなかなか入手できないようだ。AppleStore価格は5,800円。正直リモコンとしては若干割高な印象もある。 ■ シンプルなFM機能。放送のRDS非対応が残念
対応機器はiPod nanoと第5世代iPod。その他のiPodについてはDockコネクタ搭載製品でもiPod Radio Remoteを利用することはできない。なお、第5世代iPodとiPod nanoについても最新ファームウェアの適用が必要となる。 リモコンはiPodのクリックホイールを模したボタンを中心に、上面にヘッドフォン出力とホールドスイッチ、背面にクリップを備える。ホイール風の操作ボタンは中央が再生/一時停止、上下が音量アップ/ダウン、左右が曲スキップ/バックに割り当てられている。 操作体系としてはiPod shuffleとほぼ同じで、iPodのクリックホイールのようにくるくるなぞって操作することはできない。
まずは第5世代iPodに最新ファームウェアを適用して、iPod Radio Remoteを接続。するとメインメニューに[ラジオ]の項目が追加される。iPod Radio Remoteを接続していない場合は[ラジオ]メニューは出てこない。ラジオを選択する前に、メインメニューの[設定]から[ラジオの地域]で、[日本]を選択する。他の地域はUSA/ヨーロッパが選択可能となっている。 メインメニューで[ラジオ]を選択すると、ラジオ画面が起動する。地域設定をしてあれば、国内の主要FM局のプリセット情報がそのまま登録され、リモコンや本体ホイールの左右を押すだけで局の変更が行なえる。リモコン中央ボタンでラジオのON/OFF設定が可能となっている。
ラジオを起動すると液晶に受信周波数が大きく表示される[ラジオ局ウィンドウ]と、その下に[RDSウィンドウ]が現れる。しかし、RDSウィンドウには何も表示されず空欄のまま。本来は、RDS(Radio Data System)標準に準拠したデータが送られ、北米などではラジオ局の情報や聞いている曲、アーティストなどの情報が表示されるのだが、日本のFM放送ではこのRDSを送出していないため、特に何も表示されない。ちなみに、日本の「FM文字多重放送(見えるラジオなど)」には対応していない。ラジオ放送環境は各国で異なっているのでしかたないとはいえ、やはり残念だ。
ユーザーによるオートチューニング機能は特に用意されていないが、地域設定で日本を選択したところ、TOKYO FMやJ-WAVEなどの主要な局があらかじめ選局可能となっていた。任意の局を登録する場合はiPod本体のホイール中央(センターボタン)を押す。センターボタンを押すと、0.1MHz刻みでチューニングできるアナログラジオ風のメーターが現れる。左右ボタンでこのメーターを調節して任意の周波数を選択、センターボタンを押し続けると小さい三角形が画面に表示され、プリセット登録が完了する。 あとは、上下のボタンでボリュームの調節、左右ボタンで局選択を行なうというシンプルなものなので、別段戸惑うようなことはないだろう。FMラジオの録音機能なども備えていない。 ラジオの感度はまずまずだが、専用機には及ばない。あくまでポータブルオーディオプレーヤーの付加機能という印象だ。音質についてもFMにしてはややナローで、音場も狭め。充分音楽を楽しめるが、最高のクオリティでFMを楽しみた人にはやや物足りないかもしれない。 ■ 運用面で工夫も必要
Dockコネクタ接続と言うことで、運用面で気になる点も見受けられた。まず、下からケーブルを出すのでiPodケースなどでも対応を迫られる。Dockコネクタやホイールが露出しているタイプのケースでは問題ないが、汎用のケースなどを利用していると、従来と逆方向に収納しなければならない。 ただ、iPod nanoの場合、ヘッドフォン出力が最初から下部のDockコネクタ脇に用意されているので、さほど違和感は無いかもしれない。また、裏のクリップは良くできており、シャツやジャケットなどのポケット部などにしっかり固定できる。付属のイヤフォンは通常のiPod用の半分程度の長さなので、ケーブルの取り回しは比較的簡単だ。
FMだけでなく、音楽再生時などでもiPod用リモコンとしても利用できる。ただし、メニュー間移動やアルバム検索などは行なえず、操作できるのは再生/停止や曲のスキップ/バック、ボリューム上下のみ。このあたりは従来のiPodと共通だ。 iPod Radio Remote経由で音楽を聴いても、目立った音質の変化は感じないが、ソースによっては若干高域がヤセるような印象もあった。 便利なのはリモコン側とiPod本体の同時音声出力が可能なこと。つまり1つのヘッドフォンを用意すれば、2人同時に音楽を聴くことができる。また、iPod用にエンコードしたビデオやミュージッククリップを一緒に見る時などには重宝するだろう。 ■ 良くできたオプション製品も、必要な人向け リモコンやFMチューナが必須という人には魅力的な製品といえそうだ。また、FMラジオ画面の作り込みなどAppleらしいインターフェイスのこだわりも感じられ、iPodのUIにしっかりと融け込んでいるのはさすが。 ただし、FMラジオでRDS情報を取得できないのは魅力を半減させていると感じる。Apple側の問題ではないのだが、残念なところ。また、リモコンの機能としては必要最低限という感じで、リモコンのためだけに買うには5,800円という価格は割高感もある。もっとも、純正でこうしたオプションが用意されたのは歓迎すべきことだろう。FMよりさらに難しいと思われるが、AM対応や、Bluetoothヘッドフォンなど、iPodの魅力をさらに高める次の一手にも期待したいところだ。 □アップルのホームページ (2006年1月20日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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