|
無線や赤外線などを利用したコードレスヘッドフォンや、音楽プレーヤーを内蔵したヘッドフォンは種々あるが、RWCの「mTUNE」は、それらとはかなり異なるアプローチを採用したコードレスヘッドフォンだ。 iPod nano/shuffleをハウジング内に収納してしまうという大胆な発想でコードレス化、というよりも音楽プレーヤー機能内蔵ヘッドフォンとなる。フラッシュメモリの採用で、iPod nanoなどのオーディオプレーヤーが小型/軽量化されたため、こうした製品も実現できるのだろう。 もちろん、専用のヘッドフォンが出るほどマーケットが大きいのはiPodならでは。光デジタル入力などはないのでDVD視聴などの汎用性という意味では、そう融通の利くモノではないが、従来のBluetoothや赤外線を使った製品と比較すると、“コードレス”の概念を変えてしまう製品だ。今回はiPod nano対応の「mTUNE for iPod nano」を試用した。 価格はオープンプライスだが、店頭予想価格は8,980円前後。ボディカラーはブラックのみ。iPod nanoにはブラックのほかホワイトも用意されているので、できればホワイトモデルも用意して欲しかったところだ。 ■ ややチープな本体 製品には3.5mmステレオミニプラグのコードも付属。ヘッドフォン部は、プラスチックの質感が非常にチープで、ヘッドバンド部やハウジングの質感は8,000円以上のヘッドフォンとは思えない。重量も180gと、大きさの割には軽量だ。 ユニット径は40mm。周波数特性は20Hz~23kHz。最大出力は250mW、音圧感度は105dB、インピーダンスは32Ω。左ハウジングにiPod nanoを装着可能で、iPod nanoを挿すだけで音楽再生が可能となる。 ハウジングの側面には、iPod nanoのClick Wheel操作用の穴が空いており、ヘッドフォンに装着したまま、ボリュームなどのすべての操作が可能。音質もiPod nanoにあわせたチューニングを施しているという。
■ 低域重視の音作り。普通のヘッドフォンとしても利用可能 音楽を聴くための準備は、iPod nanoをスロットに差し込むだけ。実際に装着してみると、イヤーパッドはソフトで肌触り良く、側圧もちょうどいい。外見はかなりチープなのだが、付け心地としては価格に充分に見合う。
左側にiPod nanoを装着するため、重量バランスが左寄りになると予想されたが、特に問題なく、mTUNEを装着していてiPod nanoの存在を意識することはほとんどない。 そのほかの操作はiPod nanoと同じ。というかiPod nanoをそのまま操作する。楽曲の再生やボリュームコントロール、スキップ/バックなどの全ての操作をiPod nanoで行なう。液晶を見ずにアルバムや楽曲の選曲は難しいので、アルバムなどを選択してから、mTUNEを装着する、というのが一般的な利用法だろう。 常にシャッフルモードにしておけば、再生/停止ボタンを押すだけなので、mTUNEを外すことなく利用できるだろう。また、ボリューム操作もmTUNEを装着しながら行なえるが、コツをつかむまでは逆に回したりミスも多かった。 音を出してみると、パッシブ型のヘッドフォンながら、かなりの大音量をmTUNEで楽しむことができる。ただし、密閉型にしては音漏れも若干多い。また、iPod nano直挿しというデザインはやはり一目を引くようで、電車内で装着してみるとかなりの視線を感じる。利用したiPod nanoが、本体にマッチせず目を引きやすいホワイトモデルと言うこともあるかもしれないがが、正直かなり恥ずかしい……。 音質も良好だ。低域がかなり強く出る個性的な音作りで、ポップスやロックなどのベース、バスドラムをかなり重く厚く再現するので、低音を重視する人にはかなり楽しめるだろう。ただし、ソースによっては低域過多になるほか、反応の遅さが気になることもある。
また、ダイナミックレンジが広いわりに、急峻な変化の少ないクラシックソースではさほど低域が強調されない……など低域のクセをつかむまでは違和感を感じることもあるかもしれない。 なお、3.5mmのステレオミニ端子を装備し、ケーブルも同梱されるため、ほかのオーディオプレーヤーでもmTUNEを利用できる。音質もiPod nano装着時と同傾向だ。さらに、mTUNEに装着したiPod nanoとステレオミニ入力のミキシング再生も可能だ。 ミキシングといっても、単に並列に接続されているだけなので、それぞれの音量を調整するためにはプレーヤー側のボリューム操作を行なう必要がある。正直、あまり使いみちはないかもしれない。 ■ 人の視線を我慢できるか? とにかくユニークという点では、ほかに比べようも無い製品だ。特に「家の中でiPod nanoの音楽を手軽に楽しみたい」という用途においては、デジタル伝送コードレスヘッドフォンより、手軽かつ安価にコードレス環境を実現できる。 音質にクセはあるモノの、相応の再生能力は持っている。iPod nanoをソースとする限り、赤外線アナログ伝送のコードレスヘッドフォンを使うよりは、遙かに高音質に音楽が楽しめるだろう。 問題はこれを外出時に利用できるのか、ということ。重量バランスやヘッドフォンのクオリティ、音漏れなどの基本的な要素では、電車や屋外での利用を妨げる要因は無い。選曲時にヘッドフォンを外さなければならないが、一度再生を始めてしまえば完全コードレス化が実現できるというのもメリットだろう。 結局のところ、外出時にiPod nanoをむき出しにしたままのデザインを許容できるか、人の視線を我慢できるのか、ということにかかってくる。iPod nanoを見せびらかすという意味では格好のアイテムだが、iPod nanoは単にスロットに挿さっているだけなので、誰かにiPod nanoだけ引き抜かれて持ち去される可能性もなくはない。 10分程電車内でかけてみたが、個人的には人の視線が気になって仕方がなかった。他人が何を言っているか聞こえないとはいえ、指さされるとかなり恥ずかしい……。逆にiPod nanoの存在を誇示したい人にとってはこれ以上のアイテムはないかもしれない。 □RWCのホームページ (2006年2月10日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|