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■ 楽曲入りのMP3プレーヤーが登場
iPodの普及で携帯音楽プレーヤーが一般的に認知されるようになって久しい。だが、こうした製品のターゲットは依然として20~30代の若者が中心だ。理由の一つはやはりパソコンとの連携だろう。どんなに簡単になってきたとは言え、パソコンに慣れないユーザーからすると、CDから曲を取り込む操作と言うのは詳しい人が近くにいないと抵抗があるようだ。
そこで、これまでも松下電器産業のSD-Audio対応コンポ製品と携帯プレーヤーの連携によるPCレス環境や、シーグランドのCDから直接USBマスストレージに記録可能なMP3レコーダ「ez6」、CDDBを内蔵、ライン入力に対応するTRANSGEAR 「HMP-100」など、PCレスで携帯プレーヤーを使う提案を各社が行なっているが、成功したところはあまりない。 そんな中、あらかじめ懐かしのヒット曲を入れた状態のプレーヤーを身近なコンビニで低価格販売する、という新たな戦略で登場したのがファミリーマートの「Pocketful Memory Player」だ。40~50代のユーザーをターゲットにするべく、渡辺プロとのコラボレーションで、'60~80年代のヒット曲12曲を内蔵した状態で販売される本製品は、携帯プレーヤーを試してみたいが、パソコンとの連携に難色を示す高年齢層ユーザーにとっては望まれていた製品ではないだろうか。 そこで、今回はこのPocketful Memory Playerを実際に購入して、特に初心者ユーザーにとっての使い勝手について検証した。 ■ ファミリーマートでの扱いは消極的
5月5日に近所のファミリーマートの店頭で購入したのだが、店内に入ってざっと周囲を見回してみるも、特別なポップなども特になく、どこに置かれているのかがさっぱりわからない。売り切れたのかもしれないと、店員に確認するべくレジに向かうと、レジ前にひっそり置かれていたので、安心して購入できた。購入価格は7,980円。 あまりのそっけない扱いに、他の店舗の様子が気になったので2、3店覗いてみたが、いずれの店舗でも特に大々的な宣伝はしておらず、高額商品のため、万引き防止も兼ねてか、カウンター前だったり、プリベイト式携帯電話などと同じように、レジカウンターの裏に積まれていたりとあまり売る気の感じられない陳列に感じた。少なくともポスターの1つくらいはあってもよかったのではないだろうか?
■ 低価格プレーヤーらしい質感
本体の作りは一昔前の海外製品にありがちなSDカード対応のMP3/WMAプレーヤーで、全体的にプラスチック筐体というのが一目で分かる安っぽい作り。本体カラーはホワイトで表面部をアクリルパネルで覆っている。 付属品はヘッドフォン、USBケーブル、取扱説明書、歌詞カードなど。取扱説明書は全32ページとなかなかしっかりした作りになっているほか、歌詞カードもジャケット写真が大きめに配置されており、見た目にはにぎやかな作り。ただし文字フォントは小さめのため、ターゲットの年齢層には少々読みにくいかもしれない。
イヤフォンはスピーカー部とケーブルまで間の部分が長い変わったデザイン。本体の外形寸法は55×17×55mm(幅×奥行き×高さ)、電池を含まない重量は38g、電源は単4電池×1で本体背面に蓋がある。 液晶ディスプレイは128×64ドットのモノクロだが、青色LEDのバックライトを備え、日本語表示も可能。表示文字サイズも一般的なサイズで、視認性は悪くない。パソコンとの連携はUSBで行なう。 本体右側面にはボリュームと再生/一時停止ボタンを装備し、側面角には、上下操作で曲の早送り/巻き戻し、押下することでメニュー起動を行なうメニュースイッチを配置。また、本体下部にはSDカードスロットを備えるが、スロットは空いたままでカバーなどは特に備えていない。SDカードスロットのそばにはハードウェアのHOLDスイッチも備えており、本体上部には3.5mmのステレオイヤフォン端子を搭載する。
■ USBカバーやSDカードスロットなど、随所に見られる作りの悪さ まずはじめに、PCとの接続を試してみた。ボタン類と並んで、本体右側面に備えるUSB端子にはゴム製のカバーが付いているので、これを空けてUSBケーブルを接続する。だがカバーはかなりきつめの作りになっており、端子を出すのに手間がかかった。 Pocketful Memory Playerはマスストレージに対応するので、接続すると2台のリムーバブルストレージとして認識される。1台が内蔵メモリでもう1台がSDカードスロットとなる。これらストレージに対して直接ファイルをコピーすることで音楽ファイルの転送を行なう。フォルダ単位でのファイルコピーも可能。 内蔵メモリの容量は128MB。楽曲がここにあらかじめ保存されているので、読み取り専用領域なのかと思ったら、どうやら通常のメモリ領域のようで、普通にファイルを追加したり、収録楽曲の削除が行なえた。収録楽曲が不要になったらPCにバックアップして使うことも可能だ。内蔵メモリのうち、本体内の収録楽曲が64MBを使用しているので、残る64MBには自由に曲が追加できる。 SDカードスロットは最大1GBまでのメディアに対応する。試しに容量1GBのTranscend製SDカードを挿入してみたが、問題なく利用できた。SDカードスロットは、カードを固定する部分がかなり奥にあるため、指で押し込むだけでは入りきらず、カードのふちを爪で押し気味にしないとうまく挿入できない。
■ 収録楽曲はDRM付きMP3
本体内にあらかじめ収録されている楽曲のフォーマットはMP3で、ビットレートは192kbpsと高めだ。接続したPCなどにコピーも行なえるが、コピーガードがかかっているため、そのままコピーしてもファイルは正常に再生できない。PC上で普通に再生すると音が乱れてしまうため、まともに聴くことはできない。 しかし、一度PC内にコピーした楽曲であっても再びプレーヤーに戻した場合には正常に再生が行なえる。マニュアルによると、「Netsync DRM」と呼ぶ保護技術を使っていた。「Netsync」は主に韓国で使われている保護技術のようだが詳細については不明。 収録楽曲は下表の通り。個人的にはハナ肇とクレイジー・キャッツの「スーダラ節」やトワ・エ・モアの「或る日突然」、アン・ルイスの「六本木心中」などは昔から知っていた好みの曲だったので、素直に楽しめた。またザ・ピーナッツの「スターダスト」は海外曲のカバーで、シングル未発売の曲である。当時有名だったバラエティ番組である「シャボン玉ホリデー」のエンディングテーマらしいので、当時見ていたファンには懐かしく感じられるだろう。個人的にはもう少し曲数が多ければよいと思ったが、収録楽曲目当てに買うのであれば、単体で手軽に聴けるので損はないだろう。
■ メニュースイッチの操作性に疑問
実際の操作は、再生ボタンを押すと本体が起動する。起動時間は、前述の1GBのSDカード利用時で12秒前後、SDカードなしの状態で5秒前後(実測値)。SDカード内データの読み込みに若干時間がかかるようだ。起動中であってもSDカードの着脱は可能。着脱時には、画面上に「SD Card Remove」、「SD Card Detected」といったメッセージが表示される。ただし起動中にSDカードを挿入した場合、たまにリセットがかかったり、電源がオフになったりする場合があるので、SDカードを使いたい時は起動前に挿しておく方がいいだろう。
再生順序は、本体内蔵メモリ、SDカードの順番で行なう。SDカードと本体メモリの切替のような機能はない。また、フォルダ単位でファイルをコピーした場合でも、フォルダ単位での管理は行なえなず、本体側では内蔵メモリ、SDカード内の全ての音楽ファイルが全て同列に並んで順番に再生される。つまりSDカード内の聴きたい曲を選んで再生したい場合には、スイッチでそこまで曲移動しなければならず、非常に厳しい。フォルダごとにコピーした場合には、フォルダごとにファイルが並ぶため、複数フォルダの曲が入り混じってのソートも行なわれない。 再生可能なファイルフォーマットは、MP3とWMA。対応ビットレートはMP3が8~320kbps、WMAは32~192kbps。そのほかの再生機能として、リピート機能の設定は1曲/全曲が選択可能。プレイリストなどの機能は備えていない。 液晶ディスプレイには各種曲情報などが4列表示で行なわれる。現在再生中の曲数/全曲数の表示のほか、SDカードの有無/イコライザ設定などが並ぶ。 本体操作部の作りについては、再生ボタンやボリュームボタン、HOLDスイッチについては良好だったが、メニュースイッチはかなり使い勝手に難があった。 メニュースイッチは、上下に長押しすることで、早送り/巻き戻しを行ない、次の曲/前の曲への移動にはこのスイッチを軽く上下に押す。 また、A-B間リピートの機能も備えており、曲再生中に、メニュースイッチを短く押下することでリピート区間を設定でき、設定したポイント間の再生を繰り返す。メニュー画面は、停止中であればメニュースイッチを押すだけ、再生中は長めに押下すれば開く。 ところが、こうしたメニュースイッチの全ての操作感がイマイチで、早送りや巻き戻しをしようと長押ししているつもりでも、曲が移動してしまったり、曲再生中にメニューを開こうとしたら、曲が移動してしまったりした。この点については全部個別のボタンに割り当てる方が使い勝手はよくなったのではないかと思う。 一昔前の海外製プレーヤーの1つとしてみれば、こうした使い勝手の悪さも仕方ないと諦めて使えるが、Pocketful Memory Playerの場合、こうした製品に馴染みのない人をターゲットにしている。こういう細かい使い勝手の部分がしっかり作られていなければ、楽曲に魅力を感じて購入した人がいてもすぐ使うのをやめてしまうだろう。 内蔵楽曲も含めて、音質は可もなく不可もなく、イヤフォンの音質についても価格相応だ。低価格なプレーヤーにありがちな低音域/高音域の再現性の悪さも感じるが、あまり気にしない人向けと言うことだろう。本体設定には5種類のイコライザーを用意するので調整が可能だ。 単四電池駆動時間は公称値で12時間。実際に動作確認をしてみたが、これはほぼ公称値通り連続で再生できた。バッテリ残量マークの表示で見ていると、4段階ある表示のうち、3段階目くらいまでは早めに消耗してしまうが、実際の状態よりも悪い状態で表示されるらしく、かなりギリギリまで使うことができた。
■ 価格の割高感など課題も多いが評価したい方向性
一通り、Pocketful Memory Playerを使ってみたが、楽曲入りの製品を出すことで、これまで敬遠していた新たなユーザー層の開拓に挑戦している点は素直に評価したいところ。懐メロ好きで、収録楽曲の中に好みのものがあれば、電池を入れてイヤフォンを繋ぐだけですぐに利用でき、気楽に音楽を携帯できるのは魅力的だ。 とはいえ、製品の品質には大いに疑問を感じる。操作感の悪さなど改善するべき点は多いし、全体的に見た目が安っぽいのもマイナスイメージだ。また、付属ソフトもないため、もし今回Pocketful Memory Playerで、携帯音楽プレーヤーに興味を持った人がいたとしても、そこから先に進むためのステップがないのである。せめてCDから直接MP3ファイルに変換するソフトが1本付いていてもよかったのではないかと思う。 これで価格が4,000円前後ならまだ評価できるのだが、この作りで7,980円はちょっと高いと感じる。もちろん内蔵楽曲分の値段を考慮して、アルバム1枚分相当の値段(3,000円)を引いたとしても、4,980円を出してこれを買うなら、個人的にはもっと品質のよい高級プレーヤーを購入するだろう。 次モデルがもし発売されるなら、よく深夜の通販番組などで販売しているような'60~70年代のフォーク・ポップス全集などの豊富な楽曲を収録したHDDプレーヤー製品を是非発売してほしい。少々割高になったとしても、楽曲数が多くて製品の品質が高い方が、ユーザーにとっては魅力的な製品になるだろう。 □ファミリーマートのホームページ ( 2006年5月15日 ) [AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]
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