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押井守の「ケルベロス」最新作はラジオドラマ
−3年後目処に映画化。3DCG映像も公開


左から川井憲次氏、押井守氏、雷電の指輪英明代表取締役
5月31日放送開始


 株式会社文化放送は、押井守氏のライフワーク的作品「ケルベロス」シリーズの新作として、連続ラジオドラマ「ケルベロス 鋼鉄の猟犬」を5月31日より放送する。また、同社が設立したラジオ放送とインターネット配信を主軸とした新事業会社、雷電(ライデン)においても、同作品の本編や関連映像の配信を予定。さらに、「最終的には映画化を視野に入れたクロスメディア展開を行なう」(押井氏)という。

 「ケルベロス 鋼鉄の猟犬」は、“雷電キネマ 第1弾 押井守シアター”として放送されるラジオドラマ。第1回は5月31日の深夜2時35分から3時まで放送され、以降毎月1回、最終水曜日の同時間帯に文化放送で放送される。また、10月からは毎週放送化を予定。5月末〜10月までに放送されるものはプロローグ的な位置付けになる模様。各話約30分で、放送話数は10月からのものに関しては計31本程度、それ以前に4、5本で、計36本程度になる。なお、CD/DVDなどのパッケージ化も検討しているという。

 36社のISPと提携し、インターネット上で音楽やライブ映像などの放送を予定している雷電では、6月15日から同作品の関連コンテンツ配信を開始。押井氏のスペシャルインタビューや、ケルベロスの関連秘蔵画像、オリジナルイメージトレーラー(3DCG)などを無料公開する。「ラジオドラマ本編のネット配信も可能であれば行ないたい。その場合は有料になる可能性があるが、詳しい内容はこれから決定していく」(雷電の指輪英明代表取締役)という。


■ ケルベロスシリーズとは

 押井守氏は「機動警察パトレイバー」や「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」など、様々なアニメを手掛けている一方、ライフワークとして「ケルベロス」シリーズも展開している。同シリーズは‘87年公開の実写映画「紅い眼鏡」に登場したキャラクターがベースになっており、“プロテクトギア”と呼ばれる甲冑のような特殊強化服に身を包んだ特殊部隊の隊員達にまつわる物語となっている。

 最大の特徴は装甲服の存在感と、犬を思わせる暗視装置付きのガスマスクによる“紅い目”というビジュアルインパクト。そして軽機関銃で反乱分子をなぎ倒すアクションシーンだ。彼らを主役とした作品は実写映画「ケルベロス 地獄の番犬」や、アニメ映画「人狼」など、度々映画化。さらに藤原カムイ氏によるコミック化など多方面に広がっている。

“紅い目”で登場したプロテクトギア。一部のファンに熱狂的に支持された その後も実写映画化、アニメ映画化、コミック化と様々な展開を行なってきた

 作品によって物語や設定、主人公などは異なるが、ベースの世界観はほぼ同じ。第二次世界大戦にアメリカが介入せず、ドイツと日本が戦い、日本が敗れる。ドイツの文化が流れ込んだ戦後日本において、反乱分子を武力で制圧するため、警察組織“首都警”が生み出した戦闘集団“特殊機動隊”が通称「ケルベロス」だ。


■ ドラマの舞台はヨーロッパ

ラジオドラマのイメージポスター

 しかし、シリーズ最新作となるラジオドラマの舞台は日本ではなく、第二次大戦下ヨーロッパとなる。ドイツの影響を強く受けたプロテクトギアの源流を辿り、独ソ線のロシア戦線に投入された“装甲歩兵”達に焦点を当てる。

 主人公のマキ・シュタウフェンヴェルク大尉は映画監督を夢みながらも、戦争という時代の流れに翻弄された女性。ドイツ軍の宣伝中隊に所属する彼女は‘42年、ワルシャワ駅から激戦区スターリングラードへ旅立とうとしていた。

 宣伝中隊の任務は、前線の兵士の様子を国民に伝えることだが、彼女の本当の目的は圧倒的な戦闘力を持ちながら謎に包まれている「第101装甲猟兵大隊」の姿をフィルムに収めること。彼らの映像を使い、記録映画「ケルベロス 鋼鉄の猟犬」を完成させることが彼女に与えられた任務だった。

 原作・脚本・監督は全て押井氏が担当。音楽は川井憲次氏。主役のマキ大尉は榊原良子氏が演じているほか、池水通洋氏、内田夕夜氏、江原正士氏と実力派の声優が参加。発表会では5分程度のダイジェストが流されたが、押井作品お馴染みの役者の演技と川井氏の音楽、そしてラジオドラマゆえ榊原良子氏によるモノローグがメインとなるなど、映像は無いものの濃厚な押井ワールドが楽しめた。

30数本のドラマ全てを自分で執筆する押井氏。「ケルベロスは私の頭の中にしかないオリジナルの話であり、戦争や兵器に関する知識も必要。そう考えていくと、執筆を頼めるライターがいない事に最近気が付いた。毎週放送に恐怖を感じている」と笑う 押井氏が「相棒であり、なくてはならない存在」と語る川井憲次氏が今回も音楽を担当。「これまでにないイメージの音楽にチャレンジした。主題歌に作品のテーマが盛り込まれている」と語る ドラマの舞台と、主人公マキの移動経路

未弥純氏によって新たにデザインされたプロテクトギア

 押井氏によれば「ヘッドフォンで聴いてもらうのが最良になるよう音をチューニングしている」とのことで、「放送時間が深夜なので、暗い部屋で1人で、できれば布団の中で聴いて欲しい」という。

 ラジオドラマへの挑戦については「映像が氾濫し、食傷ぎみな現代だからこそ、音だけで成立するラジオドラマに可能性を感じる」という。特徴的なプロテクトギアを映像で表現することはできないが「その点は私のウンチクなど、言葉の情報でカバーしたい」とした。

 押井氏は「テーマは“孤立した少数の武闘派集団がいかに戦い、いかに滅びるのかということ。”基本は浪花節だと思っている。言葉の力で、聴いている人を泣かせてみたい」と抱負を語った。

ラジオドラマ収録の様子

 なお、アニメ監督でミリタリー好きというと、宮崎駿氏が連想される。宮崎氏は戦車や戦闘機を主題とした「雑草ノート」をラジオドラマ化もしている。押井氏は「宮さん(宮崎監督)はミリタリー知識が豊富で、独ソ戦にも詳しいので、実際に話し合ったらケンカになると思う」と笑いながら。「戦争についてはこれまでも何度か話してきたし、宮さんの作品にも影響を受けてきた。なので、今回のラジオドラマはそれに対する押井の反応とも言える」と説明。

 「ただ、宮さんは膨大な戦争知識があるのに、それを自分の作品の中では使わず、逆に禁じ手としている屈折した人。僕は思ったことはやるタイプなので、今回のラジオドラマの話を聞いたらきっと地団駄踏む姿が目に浮かぶ。でも、やったもん勝ちということで」と語り、会場からも笑いが漏れた。


■ 3年後を目処に映画化を構想

ドイツの機関銃「MG42」も展示されていた

 ラジオドラマ以外の展開も予定されている。「今後の展開で利用したり、自分の中のイメージを固めるためにも、新しいプロテクトギアを絵としてデザインしてもらった。これをベースに、とりあえずフィギュア化、実物大のギアが製作できるかどうかなどを検討している段階」だという。

 さらに、「今後様々な分野に展開していき、3年後を目処に映画化を考えている。ドイツ軍の電撃作戦のように多分野に手を広げて囲い込み、最終的に映画へと集約させたい。ただ、戦場的にスケールが大きいので簡単に映像化はできない。最終的に映画化するにしても、まずラジオドラマで出発するのが土台として正しいと考えている」という。

 また発表会場では、押井氏曰く「プロダクションIGの若手CGアニメーターが勝手に作ったもので、あまりに出来がいいので編集してラジオドラマのイメージ・ムービーにした」という3DCG映像も上映された。内容はプロテクトギアをまとった兵士達が戦場を闊歩する様子が抑えたトーンで描かれているもので、野戦砲を発射するケルベロスやタイガー戦車の動きなど、非常にクオリティが高く、ファンにはたまらないもの。雷電ではトレーラームービーの公開も予定している。

 押井氏は「映画版はこの映像の延長線上にあるものとイメージして欲しい。3DCGをふんだんに使った作品になるだろう」と語った。


□文化放送のホームページ
http://www.joqr.co.jp/
□雷電のホームページ
http://www.raiden.cc/
□関連記事
【2005年11月7日】文化放送、ラジオ放送とインターネット配信を主軸とした新事業「雷電」 (Broad Band Watch)
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/11699.html

(2006年5月24日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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