|
総務省は6日、1月より開催されてきた「通信・放送の在り方に関する懇談会」の最終報告書を公開した。 同懇談会は、デジタル化やIP化などの技術革新に対し、制度や事業者の問題などで、最先端サービスの提供が困難になっているとの現状認識から、竹中平蔵総務大臣の下に専門家を集めて開催されたもの。今回、約半年間に渡って開かれた全14回の会合の意見を取りまとめた最終報告書が公開された。 報告書では、2011年の地上デジタル放送への移行や、2010年の通信インフラのブロードバンド化完了を見越し、2011年を「完全デジタル元年」と定義。「“世界最先端のインフラ”を最大限活用できるための戦略の確立と、2011年段階で全ての国民/組織/産業がデジタル化/IP化のメリットを最大限に享受できる体制を整える」ことを目標に、「利用者の視点」、「競争力の強化と事業展開の多様化」、「ソフトパワーの強化」の3点を重視し、環境整備の具体策を提案している。 ■ 地上デジタルのIP再送信は「地域限定不要」 放送事業については、IPマルチキャスト放送を著作権法上も放送として扱われるよう、環境整備を薦めることや、地上デジタル放送のIPマルチキャスト再送信、区域外再送信などについて提案されている。 地上デジタル放送のIPマルチキャストによる再送信については、「デジタル化・IP化の特徴は、距離や地域の制約を取り払うこと。地方局の番組制作力の強化と経営基盤充実に資する面もあり、基本的には地域限定を行なうべきではない」と、現行の地上波免許地域に限定せずに再送信を行なうよう提案。 ただし、地域限定の問題は「本来事業者側で判断すべき事柄」とし、行政の積極的な関与については否定。また、「難視聴地域への補完手段としてのIPマルチキャストは推進すべきだが、それを越える部分については各放送事業者の判断や関係者協議を踏まえて決定すべき」、としている。 また、「一定割合以上はハイビジョン放送とする基準を緩和すべき」と、ハイビジョンに拘らない放送の在り方も提案。アナログ放送停波により空くこととなる周波数帯体については、「新たな通信・放送サービスの登場が期待される。希望する者には電気通信役務利用放送法を用いて通信設備を用いた放送も行なえるなど、新規参入を容易にすべき」と提案している。 また、マスメディア集中排除原則の緩和の実施を提言。「持ち株会社方式や、キー局による地方局の出資などが可能な、IP/グローバル化の時代にふさわしい原則を確立すべき」としている。 ■ NHKは衛星とFMを削減。受信料の値下げ/義務化も NHKについては、経営委員会の抜本的改革を強く求めるととともに、チャンネル数削減や受信料制度の改革などを提案している。 NHKの8チャンネルといういチャンネル数は、「電波の希少性や役割を勘案した場合、明らかに多すぎる」と報告。 衛星放送については、「難視聴対策としては適当だが、1チャンネルで充分であり、もう1チャンネルを削減すべき」と提案し、さらにFMラジオについては「公共放送としての役割は既に終えたモノと考えられる。2011年までに停波の上、速やかに民間への開放などの措置を取るべき」と報告している。 なお、地上波テレビ放送については、「視聴者ニーズを勘案して、直ちに削減することは困難。地方や高齢者への配慮などの観点から、現行の2チャンネルを当面継続すべき」としており、衛星ハイビジョンの2011年停波と合わせ、現行の8チャンネルから5チャンネルまで削減するよう求めている。 また、NHKの既存番組のアーカイブを積極的にブロードバンド上で公開するよう提案。「積極的に公開することで、日本のコンテンツ制作力を強化すると共に、海外に対する映像情報発信を促進すべき」と提言し、従来までの行政指導による制約を廃止し、アーカイブをブロードバンドで有料利用することを提案。そのための施策として、権利処理など事業部門の子会社化を提言している。 さらに、受信料制度の改革については、「大量の受信契約の未契約のまま視聴する事例があまりに多い現状を看過することはできない」とし、NHKのガバナンス強化やスリム化、徴収コストの削減とともに、現行受信料の大幅引き下げを提言している。 一方、それらの施策を元に、「値下げを前提に受信料支払いの義務化を実施すべき」、「さらに必要があれば、罰則化も検討すべき」と報告し、受信料の支払い義務化や罰則強化も求めている。 ■ 「世界で最も鮮明なテレビ放送が我が国の基本政策」と民放連 また、NTTについてもアクセス網分離などを提言。また、現在法律で義務づけられているNHKの研究と、NTTの基盤研究についても「見直しを早急に行なうべきである」とした。 なお、社団法人日本民間放送連盟(民放連)は、報告書に対する声明を発表。報告書の法体系の見直し提案の「現行制度のような期間放送の概念の維持や放送規律の確保を前提」という点や、マスメディア集中排除原則の緩和などを評価。 一方、「地上デジタル放送の一定割合以上ハイビジョン放送とする基準を緩和すべき」という提言については、「現在放送事業者が進めている放送のデジタル化計画との整合性を欠いている」と批判。「世界で最も鮮明な映像を配信する地上テレビジョン放送ネットワークを実現し、テレビ大国を目指している我が国の基本政策に合致しない」と反論している。 また、NHKの伝送部門分離についても危惧を表明すると共に、IPマルチキャストの著作権法上の扱いについても、「コンテンツの安定的供給には権利者側と事業者側との良好な関係が不可欠。関係方面に充分な配慮を求めたい」としている。 □総務書のホームページ ( 2006年6月7日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|