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iPodを代表にすっかり市民権を得たデジタルオーディオプレーヤー。今までは、機能や容量、価格面での激しい競争が行なわれてきたが、コモディティ化が進み、そうした差別化はなかなか難しくなりつつある。そんな中、低価格化のほか、「リラックマ」や、「ハローキティ」などのキャラクターを採用した製品が登場するなど、従来とは違った側面で注目を浴びつつある。 ライトユーザー向けとしては、256/512MBなど必要充分な容量を持ちながら、価格も1万円程度。アクセサリ感覚で購入できるレベルまで下がってきたことも、そうしたプレーヤーの登場を促進している要因だろう。
そうした流れにのったのかは定かでないが、なぜか東芝からも新キャラクタが登場。ノートPC「Dynabook」のプリインストールソフトや、マウスなどで展開されていた「ぱらちゃん」がオーディオプレーヤー「音楽再生機能付 ぱらちゃんUSBメモリ」として単品発売されたのだ。 「ぱらちゃんUSB」は、5月中旬に発売された「Dynabook CX/855LS」の付属品として作られたモノだが、その際に好評だったため、単品発売を決定したという。直販サイトShop1048での限定販売で、価格は12,800円。 東芝のオーディオプレーヤといえば「gigabeatシリーズ」だが、これらは東芝 デジタルメディアネットワーク社の製品。一方、ぱらちゃんUSBは、PC&ネットワーク社によるものなので、全く系統の違う製品となる。AV Watchのアクセスランキングでも週間2位を記録するなど、なぜか注目を集める「ぱらちゃん」。とりあえず、試用した。 ■ え、アザラシじゃないの? ちょっとグロテスクなPC連携 試用の前に、“ぱらちゃん”のプロフィールを振り返ってみよう。「東芝のアクセサリーソフトぱらちゃん」のホームページによると、「生まれはパラオ ロックアイランド。偶然立ち寄った日本が気に入りそのまま滞在することになった」とのことで、名前の由来はこのパラオ ロックアイランドから。性別は「オスが有力」。「ぱらパパ、ぱらママや、ガールフレンドのぱぷちゃんや、友達のくじぃらん」などがいるそうな。 「種別でいうとアザラシでしょ? 似たキャラいるし」と思いきや、コスミオ公式ブログによると「誕生時のコンセプトは“愛嬌あるゴースト”」。なんとアザラシじゃないらしい……。
パッケージは事務機器のような白を基調とした地味なデザイン。本体のほか、同梱品は、USB延長ケーブルや、ネックストラップ型イヤフォン、取扱説明書など非常にシンプルだ。 外見はアザラシ型の曲面を活かしたデザイン。外形寸法は50×76×30mm(幅×奥行き×高さ)。重量は約40g。見ての通り外装に高級感は全くないが、着脱部などの作りは良く不満は感じない。ただし、思いのほか嵩張る形状かつプラスチック外装ということもあり、いかにも壊れそう。持ち運び時には袋を用意して、保護したいところだ。 前面がぱらちゃんの顔で、左頬あたりにヘッドフォン出力、左の胸びれの後ろにスキップ、バックボタンを備える。逆の側面にはボリュームボタンを装備。また、ひっくり返して腹の部分には、液晶ディスプレイと再生停止ボタンがある。下顎の部分にはストラップホールも備えている。 尾ひれの部分を引っ張ると、胴体から尾ひれ部分が外れ、USBコネクタが現れる。パソコンとの連携などはこの端子を利用するが、尾ひれを引き抜いたぱらちゃんはちょっとグロテスクだ。付属のネックストラップ型イヤフォンは着脱可能なタイプで、首からかけて利用できる。首から下げて見ると“水揚げされたマグロ”のように見えなくもない。
かわいらしいデザインが特徴の「ぱらちゃんUSB」だが、Dynabook用ノベルティの「ぱらちゃんマウス」と比較したところ、かなり形が違うような……。
■ 機能的には普通の低価格プレーヤー
パソコンとの連携や充電はUSB接続で行なう。USB端子を備えているので、PCへの直挿しも可能だが、ぱらちゃんは横幅がかなりあるので、隣のUSB端子に確実に干渉する。延長ケーブルが付属するので、こちらを活用したい。 MP3/WMAデータの転送は、特に専用ソフトはなく、普通のUSBメモリにデータファイルを転送するのと同じように、音楽ファイルをドラッグ&ドロップするだけというシンプルな操作。同社のgigabeatが暗号化が必要なのに比べると非常にお手軽だが、プレイリストなど楽曲を管理する機能はまったくない。 128MBのMP3ファイルを転送した際の転送時間は約47秒とかなり高速。512MBフルに転送しても2分程度で転送が終了する計算だ。もっともそんなに曲数を送ってしまうと、本体側で管理しづらいのだが……。 電車に乗って首からかけてみたが、正直かなり恥ずかしい。他の首掛け型プレーヤーと比較しても一回り大きいので、必要以上に目に付くように感じた。もっとも、胸ポケットのあるシャツなどには収まるので操作する時だけ、取り出せばそんなに目立たない。
再生フォーマットはMP3とWMA。WM DRM付のWMAファイルは再生できない。試しにWAVファイルや、iTunesで作成したAAC、iTunes Music Storeで購入したAAC、OGGなどのファイルも転送してみたが、ぱらちゃん側で認識されなかった。 再生機能はシンプルで、液晶右脇の再生/停止ボタンを約3秒長押しすると、電源がONとなり、再生可能となる。あとは液晶に正対して上面のボタンが楽曲スキップ/バック、下面のボタンがボリューム上下となる。 HOLDスイッチなどが無く、誤動作防止のためなのか、再生/一時停止操作時に、ボタンを1秒程度押し込まないと再生/停止しない。クリック感はあるのだが、そのまま約1秒保持しないと実際の操作に移らないので、慣れるまでは若干戸惑った。他のボタンについては押すと即座に反応するので違和感は感じない。 再生画面はシンプルで、全楽曲数や、現在再生中のファイル名、再生時間、バッテリ残量が表示されるだけ。アルバム名やアーティスト名などは表示できない。また、スキップ/バックボタンでは、曲中の早送り/戻しは行なえず、楽曲の送り/戻しのみとなる。
ファイルの再生順は、本体に転送した順となる。フォルダ単位での転送/再生も可能で、ファイル名に曲順を付与したファイルをアルバム単位でコピーしたところ、アルバム順の再生も行なえた。 ただし、本体側でのフォルダ管理機能はなく、30曲転送したうち11曲目に転送された曲の場合、[11/30]などといった具合に表示される。この11曲目までたどり着くには、電源投入後10回スキップボタンを押す必要があり、検索性はイマイチ。100曲以上の楽曲を管理するのは現実的ではないだろう。なお、再生位置のレジューム機能は備えている。 ■ 音質はまずまず。ぱらちゃん人気は向上するか?
イヤフォンはネックストラップ付のインナーイヤーで、質感も音質もチープ。低音だけはやたらと出るが、バランスが低域よりすぎる。中高域にかけてはディティールが抜け落ちて、1枚ベールがかかっているような印象。ある意味、聞きやすいのだが、あまり褒められる音質ではない。ただし、普通のインナーイヤフォンにしては遮音性も良く、装着感も良好だ。 イヤフォンをSenherser PX200やケンウッド KH-C701などに変えて本体の音質をチェックしたところ思いのほか良好で、素直な音作り。低域はかなり下の帯域まできっちり出て力強く、中域もしっかりしている。音量をあげると高域が歪むことはあるものの、しっかりした再生性能で、思いのほか楽しめた。なお、イコライザ機能などは備えていない。 電源は内蔵のリチウムイオン充電池で、USBポート経由で充電する。カタログスペックの連続再生時間は約10時間だが、実際にMP3を中心に連続再生したところ、約11時間で再生停止した。 基本的には普通の低価格プレーヤーで、機能はひととおり揃っているし、何より音質面でも充分な性能を持っていることは評価できる。メモリ容量は512MBだが、実際に楽曲を500MBも転送すると楽曲検索が難しい。そういう意味では、音楽再生も出来る「USBメモリ」という扱いが正しいようだ。 □東芝のホームページ ( 2006年6月28日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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