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7月9日からチバテレビ、テレビ神奈川など全国9局で放送が開始されるテレビアニメ「N・H・Kにようこそ!」。その制作発表会が「メイドカフェにひきこもれ! N・H・K決起集会!!」として東京・吉祥寺の「CROSS吉祥寺」で開催。出演声優に加え、原作者の滝本竜彦氏、エンディングを担当した大槻ケンヂ氏、音楽担当のサエキけんぞう氏も登壇。色々な意味で内容の濃いクロストークを展開した。
アニメ「N・H・Kにようこそ!」は、「ニート」や「引きこもり」などを題材に、甘くてイタイ青春を後ろ向きに駆け抜ける問題作。主人公の佐藤達広は、大学中退以来外出するのはコンビニだけ。友人もおらず、睡眠時間は1日16時間という典型的な引きこもり生活4年目の22歳。そんなある日、部屋の中でテレビアニメと向き合う彼は、自分が大学に中退したのも、無職なのも、全て巨大な悪の組織「N・H・K(日本引きこもり協会)」の仕業なのだと考え始める。 そんな彼のもとに、現れた少女・中原岬。「あなたは私のプロジェクトに選ばれました」と言いながら彼女が差し出したのは、今の生活から脱出し、社会復帰するためにサポートしてくれるという不思議な契約書だった。彼女の手前、見栄を張った達広は、高校の後輩でゲーム専門学校に通う山崎薫を引き込み、なりゆきでクリエイターを目指すことになるのだが……。
本格的にどうしようもない青年の物語だが、そこが他人事ではない共感を呼ぶポイントでもある。また、アニメやゲーム、秋葉原、メイドカフェなど、現代のオタク系要素を包括的に取り込み、それらを内部から鋭くえぐる社会的な要素を併せ持っている。原作は自身も引きこもりだったという滝本竜彦氏の同名小説。コミック版も少年エースで連載されている。
アニメ版の制作はGONZOが担当。「ケロロ軍曹」の山本裕介氏を監督に迎えている。また、エンディングテーマは「筋肉少女帯」のメンバーの再結集でもある大槻ケンヂと橘高文彦が担当。劇中の音楽はポップロックバンド「パール兄弟」が手掛けるなど、非常に個性的かつ豪華な顔ぶれとなっている。 発表会は吉祥寺に6月オープンしたばかりのコスプレ系イベントホール&オタク系飲食店複合ビル「CROSS 吉祥寺」で行なわれた。1階がコスプレ居酒屋、2階がイベントスペース、3階が男装した女性レイヤーによる王子様が出迎えてくれるカフェ&バーという構成。発表会にはコスプレ居酒屋のメイド店員も参加した。
■ 「メイド喫茶には20回行きました」
エンディングテーマ「踊る赤ちゃん人間」を歌う大槻ケンヂ氏は、作品について「俺の世代はニートやオタクという言葉すらなかったけれど、主人公と似たような青春を過ごしたなぁと共感できる部分が沢山ある」と、気に入っている様子。
原作の滝本氏が大槻氏から多大な影響を受けたと聞くと、「最初は俺のファンだと聞いて、嬉しいから沢山宣伝してあげようと思ったんだけど、よく聞いたら俺の本よりよっぽど沢山売れている。後で口座番号教えるから月2千円でいいから振り込んで」などと会場を沸かせた。
「パール兄弟」のサエキけんぞう氏は「普段は距離を置いておこうと思われがちなオタクを正面から取り上げ、その文化に風穴を開けようという社会的な作品。オタクって何なのかということを高い次元で考えている」と評価。自身も作品に携る中で、「最近はすっかり中原岬ちゃん萌え」になっているという。
主人公・佐藤達広を演じた声優の小泉豊さんは「原作を中心に読ませていただいたが、最後のほうは感動というか、慟哭というか、人間は1人で生きていけないというメッセージを感じ、非常に衝撃を受けた。主人公を、単なる記号としてのオタクとして演じるのではなく、1人の生身の人間として表現していきたい」と意気込みを語った。 なお、発表会場がメイド居酒屋の2階ということもあり、メイドカフェについての話も。意外にも大槻氏は行ったことがないとのことで「店外デートとかもあるの?」などと質問。「それは違う店です」とサエキ氏にツッコミを入れられる1コマも。
小泉さんは演技の参考にと中野のメイド喫茶に向かったものの、「勇気が出なくて入れなかった」という体験談を披露。話が盛り上がるにつれ大槻氏も「あーゆー店は勇気が無い人が入る店じゃないの!?」と興味津々。「今度絶対行ってみます」と決意を固めていた。
「最初取材で行きまして、それからはプライベートで20回くらい行ってます」というのは、流石の原作者・滝本氏。達人の楽しみ方として「メイドさんと話したそうな雰囲気を出しながらも、うつむきがちにチラチラと見るだけ。すると本当に優しい子が話しかけてきてくれる。それが凄く良い。お店によっても違いますが、全体的に学園祭的なショボイ感じが良いんです」と、通な楽しみ方を語った。
■ 音楽面も要チェック
当初、エンディングテーマは筋肉少女帯の名曲「踊るダメ人間」にしようという話があったという。しかし、大槻氏は「やはり新曲が良いという話になり、それならばダメ人間よりさらにダメな、赤ちゃん人間にしよう!! ということで“踊る赤ちゃん人間”が誕生した」という。会場ではエンディング映像と合わせ上映されたが、謎の宇宙人キャラ「ひきこもり星人」の動きと歌が完全にシンクロした秀逸な出来栄え。大槻氏も「ど根性ガエルのピョコン、ペタン、ピッタンコ以来の名作だ」とご満悦。 7月20日発売のCD(VICL-36098/1,260円)には、カップリングとして「踊るダメ人間 2006」も収録。さらに、「日本引きこもり協会のテーマ」も収録している。同曲の作詞は滝本氏が担当したのだが、大槻氏によれば「最初滝本さんからFAXで詞が送られてきたんだけど、リストカットとか練炭とか、自殺とか、SUICIDEみたいな単語が大量に書かれてて、こんなの通らないだろうと話していた。でもプロデューサーが、これこそロックですよ!! と言うのでそのまま提出してみたが、やっぱり通らなかった」と笑う。
劇中の音楽を担当したサエキけんぞう氏は「ロックバンドがアニメの音楽を手掛ける事は少ない。劇中の音楽は大量の違うパターンを作らなければならず、その点が難しかった。アニメを作る大変さをまざまざと見せ付けられ、それが面白かった」と感想を語る。「ボーカル曲も沢山入っているので、音楽も注意して聞いて欲しい」という。
最後に滝本氏は「全世界のあらゆる年齢層の人に観て欲しい。日本は文化的に最先端を行っていると考えているので、いずれ地球の半分くらいはニートになり、アニメなどの市場はさらに拡大する。ともかく原作や漫画よりもさらに面白いものを目指しているので楽しみにして欲しい」とアピール。大槻氏も「今日滝本さんに会って、こんなにギラギラした人だとわかって良かった。間違いなくヒットする」と太鼓判を押した。
□アニメ「N・H・Kにようこそ!」のホームページ
(2006年7月3日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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