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IFPI、YouTubeの著作権侵害対策などを説明
-CODAセミナー。ファイル事前チェックも視野


IFPIのリョン・メイシー氏

7月12日開催


 コンテンツ海外流通促進機構(CODA)と日本貿易振興機構(JETRO)は12日、コンテンツホルダーなどに向けた第5回セミナーを開催。インターネット上での著作権侵害の実情や、海賊版対策などをテーマに3つの講演が行なわれた。

 セミナーは、2004年より年2回行なわれ、今回は5回目。著作物の違法アップロードや、P2Pの不正利用などの問題を受け、オンラインでの侵害問題を専門とする、国際レコード連盟(IFPI)のリョン・メイシー氏を講師として香港より招いたほか、中国の海賊版の現状や、著作権法の内容などをテーマに、弁護士の何連明(か れんめい)氏、久田眞吾氏が講演した。



■ YouTube掲載ファイルの事前チェックも?

 IFPIのアジア地域代表を務めるリョン・メイシー氏は、「オンライン上の海賊版:音楽産業への影響と対策」と題し、侵害形態の種類や、対策に関する同協会の取り組み紹介した。

 著作権侵害の主な形態として、FTPサーバーを用いた不正アップロードや、P2Pによるファイル共有の不正利用などこれまでの変遷をたどって説明。また、新たな問題として、動画共有サイト「YouTube」などへ投稿されるファイルの多くが著作権を侵害したものである点を挙げた。

 メイシー氏は「P2Pも第4世代まで進化・複雑化しており、グローバル化も進んでいる。もはや“個人の楽しみ”とは言えず、大きなビジネスとしながらも音楽業界に全く支払わないところが現れた」と述べ、無許諾の営利サービスとして「Kuro」と「EzPeer」の例を紹介。

 それぞれ開業は'99年で、課金開始も2001年より開始。年間売上高は「Kuro」が1,700万米ドル、「EzPeer」が1,000万米ドルに上った。だが、権利行使の結果として、「Kuro」は禁固18カ月となったほか、「EzPeer」とは控訴審で和解し、合法サイトとなったという。

インターネット上の違法音楽ファイル数の推移 KuroとEzPeerの事例

 そのほか、ファイルを分割することでユーザー同士のアップロード/ダウンロードを高速化させる「ビットトレント」(BT)や、大容量ストレージを持つフリーメールでファイルをやり取りするピアツーメールなどで違法行為が行なわれており、調査が難しくなっているとした。

 さらに、新たな“頭痛の種”として、YouTubeにアップロードされているビデオの多くが「他人のビデオを拝借している点」を指摘。リョン氏が「J-POP」で検索したところ、929件がリストアップされ、多くは会員企業の著作権が侵害されているものだったという。

 海賊版対策としては、まず政府による法制定や、法令の効果的執行などを挙げたほか、業界による技術的な保護手段の開発や、教育/啓蒙活動などであるとした。また、ISPや有料サービス事業者など、利害関係者との協力についても触れ、「訴訟以外にもビジネスとして新たなイニシアティブをとることが必要」とした。さらに、合法サイトに対しては積極的に支援することが重要だと述べた。

 前述のYouTubeに対しては、IFPIと提携関係にある全米レコード協会(RIAA)が、違法アップロードファイルの削除やユーザーへの通知などを要求するメールを送付。「この警告を見本に、今後はアップロード前にファイルのスクリーニングを行なうべきか、またその行為をYouTubeに要求するかなどについては現在のところ保留」としている。

 同協会の対策によって結果が出ているかという点については、「ブロードバンド普及は進んでいるが、その割合に比べると違法行為は横ばい。理想は減らすことだが、効果的に伸びを抑えている」という。

アジアにおいて、侵害行為が行なわれたサイトに削除を申し立てた場合、日本では92%が削除されるが、中国は40%、韓国は59%しか削除されていないという 違法行為(黄色)は、ブロードバンド普及(オレンジ)に比べ伸びていないため、効果が出ているとした


■ 日中の著作権意識の違い

TMI総合法律事務所の弁護士、何連明氏

 中国に進出する日本企業に対しての法的アドバイスなどを行なうTMI総合法律事務所の弁護士、何連明氏は、著作権侵害対策の訴訟や、行政保護手続きの事例などについて説明。

 文化庁が発行した「中国における著作権侵害対策ハンドブック」の作成に関わった何氏は、ハンドブックの内容を基に、中国と日本の著作権に対する意識の違いや、対策に必要な事項などを紹介した。

 海賊版の現状として、「正規品に海賊版を紛れさせて販売するなど、手口は巧妙化している」と述べたほか、「著作権法は1990年に公布されたばかりで、日本と比べ違法という認識が低い。さらには、最近の経済発展に(外国から)ケチを付けられているのでは、と言う人さえいる」と、順法意識の低さを指摘。

 また、著作権法の内容については「日本とほぼ変わらない」としながらも、「共同著作物について権利を行使する場合には、“全著作物の権利を害してはならない”という決まりはあるものの明確な規約はない」として、「契約をしても、履行時には自分の都合のいいように解釈されるため、コントロールできない場合が多い」と日中での権利意識の違いについても触れた。

久田眞吾弁護士は、中国での著作権侵害に関する裁判では、特に公正証書が証拠として有力視されると説明、関係者への対策として薦めた

 あさひ・狛法律事務所の久田眞吾弁護士は、実際の判例を基に、中国における著作権法解釈について講演。3月にJETROより発行された「中国における著作権判例事例調査」を参照しながら著作権侵害訴訟における争点などを説明した。

 例として「The Bone Collector」の海賊版DVD訴訟や、書籍が無許諾でアップロードされた「書生之家デジタル図書館事件」を挙げ、著作物の複製や送信などの権利について、日中で該当する法律がやや異なるものの、著作権の侵害に対して賠償が命ぜられた事例を紹介した。


□JETROのホームページ
http://www.jetro.go.jp/
□IFPIのホームページ(英文)
http://www.ifpi.org/
□関連記事
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【2005年6月10日】CODA、アジアで70万枚の海賊版DVDなどを押収
-総額10億円以上。CJマークの導入で対策強化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050610/coda.htm
【2004年11月15日】Yahoo!オークションの海賊版DVD対策が強化
-日本動画協会とヤフーが協力体制
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041115/yahoo.htm

( 2006年7月12日 )

[AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]


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