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DVDフォーラムは5日、「DVD Forum Japan Conference 2006」を開催。HD DVD/DVDの規格化作業の現状について報告した。 ■ リージョンコード導入に向け検討を開始
DVDフォーラムのワーキンググループをまとめ、最上位組織のSteering Committeeへ技術提案する技術部会(TCG)の活動については、レノボ・ジャパン製品開発研究所先端技術開発 三和邦彦副部長が説明した。 TCGでは、2005年以降4つのアドホックグループを設立。リージョン制御の検討や、互換性維持に関するガイドライン策定などの活動を行なっている。 「AD-022」はHD DVDにおけるリージョン(地域)制御を検討するグループ。現在市販のHD DVDビデオディスクについては、DVDのような国別のリージョン再生制限などは設けられていない。しかし、コンテンツホルダなどからは、リージョン制御を求める声が上がっており、導入に向けて検討を進めていくという。 従来のDVDのように単純に国別に再生制御を導入するだけでなく、HD DVDのインタラクティブ機能を活用し、「発売からある一定期間のみリージョン制御を行なうなど、新しい形の制御も検討している」という。ただし、現在のところ結論に至っていない。 HD DVDの技術仕様を検討する「WG-1」でもリージョン制御についての検討を進めており、TCGの活動などを受けて、どのように組み込んでいくかを検討。2007年初旬に企画書をアップデートする予定という。
昨年立ち上げた「AH0-18」では、CPRMによる著作権保護を施し、DVD-R/RWにDVD-Videoフォーマットで記録する仕組みを検討中で、11月には規格が完成する見込みという。 さらに、CPRMでなく、既存の市販DVDビデオソフトで採用されている「CSS」を使って、DVD-Rディスクにダウンロードコンテンツなどを録画するための技術検討に向け、「AH-021」を立ち上げた。北米を中心に要望が多かったため、CSSの導入も検討開始したが、実現時期などは現時点では未定。 「AH0-16」ではHD DVD-VideoやHD DVD-VRなどのHDアプリケーションフォーマットを、既存のDVDメディアに記録する方式の検討を実施。対応機器に応じて、Type1、Type2の2種類を検討している。 Type1は、録画/再生機やPC向けで、DVD-RAM/RW/RのいずれかのディスクにHD DVD-VideoもしくはHD DVD-VR形式で書き込める製品を対象とする。Type1機器では自己録再機能に加え、市販HD DVDやDVDビデオの再生機能も必須となる見込み。検討中のType2はカムコーダ向けの仕様で、DVD-RAM/R/RWのいずれかのディスクに、HD DVD-Video/VRの方式で記録にする。Type2ではHD DVD/DVDの再生機能は必須ではない。
■ 2層HD DVD/1層DVDの3層ツインディスクは2007年夏以降
HD DVD関連の物理規格については、HD DVD関連の規格を担当するWG-11を代表し、日本電気株式会社メディア情報研究所の山中豊 主幹研究員が説明を行なった。 HD DVDの物理規格の開発状況については、9月にHD DVD-R/RW/RAMの各規格で8cmディスク仕様が追加されたほか、HD DVD-RWの記録モードに修正が行なわれたことなどが報告された。また、中国向けのROMフォーマットを検討するグループがWG-11内に設立された。 中国向けディスク規格についてはVer.9.9が9月に発行。12月を目処に最終版となるVer.10.0の策定が予定されている。同規格は「中国の関係機関から独自のディスク規格を作りたい、という依頼があった。Steering Commiteeと関係機関で話し合いを進めているが、物理フォーマットについては、なるべく従来の規格を採用したいということで、記録コーデックの変更以外は、ほぼHD DVDと共通」という。アプリケーションフォーマットについては中国独自のものになる見込み。
今後の規格化については、1層HD DVD-R/RWの2倍速記録のオプション規格を策定。さらに、ディスクの片面に2層/30GBのHD DVDと、1層/4.7GBのDVDを形成する「3層ツインフォーマットディスク」の検討を開始する。 3層ツインフォーマットの規格化/製品化時期については、「2007年の早い時期に規格化作業を終了する予定。すでにプレーヤーが発売されているため、製品側の対応をどうするかなど、規格の最終段階で調整が必要になる。希望的観測だが2007年の夏以降の製品化を目指したい」という。 また、HD DVD-RW for DLにおいて、PCファイル向けの「Fragment recording mode」の規定を追加策定する予定。 □関連記事
「HD DVD-Video」、「HD DVD Video Recording」など、HD DVD用のアプリケーションフォーマットについては、株式会社東芝デジタルメディアネットワーク社 HD DVD事業統括部 光ディスク開発部の三村英紀参事が説明した。 現在HD DVD-ROM向けとなっているHD DVD-Videoを、記録型DVD/HD DVDで利用可能にするための検討をすすめているほか、録画用フォーマットのHD DVD-VRの記録型DVDメディアへの技術検討を開始。また、HD DVD-Video規格についてはプレーヤーの動作の明確化や機能の削除などの規格修正が図られたという。 今後のHD DVD-Videoの機能追加としては、音声形式として44.1kHzのサポートを必須とし、18カ月以内のなるべく早い段階で対応するよう勧告している。現在は48KHz~192kHzまでのサポートとなっているが、「音楽業界から、CDの音源(44.1kHz)など既存のコンテンツをそのまま活用したいという強い要望があったため」追加を決めたという。 また、署名付きコンテンツの導入や、リージョン制御の導入なども予定しており、これらを盛り込んだバージョンアップを2007年の初旬に予定している。
ビデオ録画向けのHD DVD-VRフォーマットもアップデートを予定。HD DVD-VRでは、放送などをストリーム録画する「SOB」とビデオオブジェクト「VOB」2つの記録モードが用意されているが、VOBのオプション音声としてHE-AACの採用を検討中。またSOBの対応ストリームとしてATSCや、STBなどで利用が想定されるManufacturer Streamのサポートを2007年初旬を目処に予定している。
HD DVDのコンテンツ保護技術については、インテル株式会社 研究開発本部 デジタルコンテンツ・テクノロジー・グループの畑中康作 シニアマネージャが解説。
HD DVDでは著作権保護技術としてAACSを利用しているが、恒久ライセンスは始まっておらず、現行製品では暫定ライセンスにおける運用となっている。暫定ライセンスの期限は2007年6月30日まで。恒久ライセンスの導入については、「今日も会議を行なっており、ファイナルに向けて進行中」という。 正式ライセンスの導入後には、ネットワーク経由で認証を行ない、HDDやHD DVD、メモリーカードなどへのコピーを許可する「マネージドコピー(Managed Copy)」に対応。また、電子透かし(ウォーターマーク)などが追加される。なお、ウォーターマークはVerance製で、同社からのライセンスを各社が個別に受けるかたちとなる。 ■ DVD-R DLも高速化
DVD関連の規格化状況についても報告された。パイオニア株式会社 技術開発本部 ホームシステム開発センター光ディスクシステム開発部の谷口昭文部長は、12倍速DVD-R DLやDVD-RW DLの規格化状況を解説した。 また、日本ビクター株式会社経営企画部の鈴木弘明 主幹は、現在策定中の業務用オーディオフォーマット「DVD-PAR」について報告。DVD-PAR規格は、放送やスタジオ、映画の録音用のほか、長時間の監視映像など業務利用向けのDVD用音声記録形式。現在のバージョンは0.9で早期の規格策定を目指す。 DVD-PARでは音声形式として、放送局や映画業界の標準フォーマットとなっている「BWF(Broadcast Wave Format)」と、オーディオ録音規格のDVD-ARを拡張した「DVD-AP」が利用可能となる。 BWFはWAV(リニアPCM)にタイムコードなどのメタデータ情報を備えたフォーマット。DVD-PARでは、BWF/DVD-ARの両方式を拡張し、コンテンツIDやタイムコードなどの、メタデータの管理機能を追加している。
■ ヘビーユーザーがHD DVDを牽引する
また、会場では「HD DVDへの期待」と題し、各業界の代表者が講演を行なった。 ユニバーサル・ピクチャーズジャパンの秋山玄社長は、JVAの調査を例に引き、「年間3万円分以上のDVDを購入する約6%のユーザーが、金額ベースでは約市場の約77.7%を占めている」とヘビーユーザーにHD DVDの画質を訴えていく方針を説明。さらに、「地上デジタル放送への移行が急速で、ハイビジョンコンテンツが日常化が進んでいる。ヘビーユーザー以外にもハイビジョン画質訴求し、我々のビジネスを最大化するチャンス」と、HD DVDの推進をアピールした。
また、電通総研 コミュニケーション・ラボの山本浩一部長は、ユーザーの消費動向をモノの所有を前提とした「所有志向」、未知の体験を求める「可能性志向」、単にコンテンツを確認したい「純粋視聴志向」の3つのタイプに分けて分析。 レコーダのHDD容量の増大により、視聴しきれないほどのコンテンツを蓄積する消費者層が拡大することから、「今後、可能性ニーズが減少。DVDに“可能性”を求めて購入する人は減っていく」と予測し、「新しい可能性価値の創造が必要」と語る。 そのためには、レアタイトルの増大や、ショッピングサイトなどに依存しないタイトルの検索などによる新たな発見の創出、さらにパッケージ情報のオンライン化などが求められるという。 また、所有を促すためには、新しい「所有価値を提案する必要がある。年間一定枚数以上購入すると、特別なステータスを与えるようなプログラムも必要ではないか」と提案した。
また、両氏に加え、DVDフォーラムTCGの三和氏、ワーナーホームビデオの長谷瓦二シニアバイスプレジデント、東芝DM社 デジタルAV事業部DAV商品企画担当グループ長の片岡秀夫氏によるパネルディスカッションも行なわれた。 □DVDフォーラムのホームページ ( 2006年10月5日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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