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TI、300W出力を実現したオーディオ用デジタルアンプIC
-業界最高出力。コンボ・サンプルレート・コンバータも


「TAS5261」
11月14日発表


 日本テキサス・インスツルメンツ株式会社(日本TI)は14日、業界最高となる300W(4Ω時)の出力を実現した、PurePath Digitalシリーズ第3世代のワンチップのデジタル・アンプ用IC「TAS5261」(モノラル)を開発したと発表した。200W×2ch(6Ω時)のステレオタイプ「TAS5162」も用意。「TAS5261」は既に量産出荷を開始しており、1,000個受注時の単価は5,25ドル。「TAS5162」は12月の量産出荷を予定している。

 さらに、2chの非同期サンプルレート・コンバータ(SRC)と、デジタル・オーディオ・インターフェイス・レシーバ(DIR)、デジタル・オーディオ・インターフェイス・トランスミッタ(DIT)を1チップに集積した「SRC4392」も発表。ダイナミック・レンジを落とした低価格モデルの「SRC4382」や、SRCを内蔵しない「DIX4192」も用意しており、いずれも既に出荷中。1,000個受注時の価格は「SRC4392」が9.95ドル、「SRC4382」が7.50ドル、「DIX4192」が4.95ドル。


■ TAS5261/TAS5162

 TAS5261は、業界最高の300W出力(4Ω時)を実現したデジタル・オーディオ・アンプ用のパワーステージIC。36ピンのPSOPパッケージを採用しており、指先に乗るサイズのチップながら、300W/chのディスクリートFETドライバ、FET、保護回路を集積している。

 プロ用のスタジオ機材やハイエンドオーディオ、AVアンプ、DVDレコーダ、コンポなどへの搭載を想定している。従来、300Wなどのハイパワー出力が必要な場合、出力電力/電流が不足するため、効率の低いクラスABアンプやアンプ・モジュールが使用されていた。

 しかし、TAS5261では95%を超える高効率を持ちながら、ハイパワー出力を可能にした。S/N比も110dBを実現。モノリシック製品としては業界初となる40mΩのFETオン抵抗を実現したほか、全高調波+ノイズ(THD+N)特性も、8Ω時の場合1Wで0.05%以下、1~125Wで0.09%以下と高い性能を確保している。

 なお、TAS5261はモノラルタイプだが、200W(6Ω時)出力を2ch内蔵したステレオタイプ「TAS5162」も用意している。

同社のデジタルアンプ開発の歴史。ボーズのM3などに採用されたものが第3世代となっている 「TAS5261」の主な特徴 システム構成例

 どちらのモデルもMOSFETによるHブリッジなどの個別部品の外付けが不要で、基板実装面積の低減、レイアウトや放熱器のデザインの簡素化、製造コストの低減などが期待できる。内部配線には従来のアルミから銅配線に変更し、金のワイヤーも30本程度使用するなど「サイズだけでなく、音質にもこだわり、良い部材を惜しげもなく投入した」(ハイパフォーマンス・アナログ事業部の酒井正充氏)という。

TAS5261を搭載した評価ボード ヒートシンクを取り付けたところ。実際にはこれよりも小型のヒートシンクでも安定動作するという


■ SRC4392/SRC4382/DIX4192

 「SRC4392」は、2chの非同期サンプルレート・コンバータとDIR、DITを1チップに集積したもの。パッケージは48ピンのTQFP。AES/EBUと光デジタルの入力に対応し、サンプルレート・コンバータは最高216kHzまでサポート。業界最高性能となる144dBのダイナミックレンジと、-140dBのTHD+Nを実現した。

 最大の特徴は、光デジタル端子などから入力された信号を、デジタル・インターフェイスで受信し、サンプルレートを変換してDSPなどに渡すまでをワンチップで処理できること。サンプリング周波数は20kHz~216kHzまで、連続して対応しており、どの周波数でも144dBのダイナミックレンジを確保している。

 通常、入力されたサンプリング周波数が44.1kHzから48kHzなどに変更されると、内蔵されたDSPは係数変更を行なうため、その都度、内部のデータを全て書き換えて、新しい周波数に対応した処理を行なう必要があった。AVアンプの入力切替で一瞬音が途切れるなどの現象にはこうした理由が多い。

 しかし、SRC4392では216kHzまでの様々なサンプルレートを96kHzや192kHzなど、一定のレートに変換してからDSPに受け渡すことが可能。DSP側はリセット後にイニシャライズした状態のまま、同じレートで処理を行なうことができ、開発時のDSP係数変更の煩雑さから開放。結果として開発コストが低減できるという。

 また、入力周波数は固定ではなく、連続して対応しているため、例えば44.15kHzなどのズレたソースが入力されても、問題なく処理できるという。

「SRC4392」 「SRC4392」を搭載した評価ボード

 サンプリングレートコンバータの機能としては、入出力サンプルレート比を1:16から16:1まで連続対応。ダイナミックレンジは144dB、THD+Nは-140dBだが、これを128dBと-125dBにそれぞれ落とした低価格版「SRC4382」も用意している。

 内蔵した3つの機能を柔軟に利用するため、クロックラインとデータラインはバスライン構成を採用。ミキサーやAVアンプ、デジタルテレビへの内蔵など、様々な利用パターンでも搭載しやすいという。なお「DIX4192」はSRC機能を搭載しないモデルとなる。

主な特徴 ブロックダイアグラム

デジタルテレビで利用する際のデータライン接続例 ミキサーやAVアンプでのデータライン接続例


■ 「良い音には、高いデジタル/アナログ混在回路技術が必要」

 試聴デモはプレーヤーでCDを再生し、「SRC4392」で96kHzにアップサンプリング。そのデータを「TAS5261」を搭載したデジタルアンプ評価ボードに入力し、スピーカーをドライブするという構成。可変タイプの電源電圧で音量調整を行ない、デジタルデータのビット落ちが無いシステムとなっている。

 再生音にはまったく雑味が無く、極めてノイズレス。歌手の口の動きや個々の楽器の動きが驚くほど良く見える。女性ボーカルのサ行が耳に痛いほど鮮度の高い音質が確認できた。

 執行役員で戦略企画本部の岡野明一本部長は「TIというと“DSP”というイメージが強いが、DACやADC、オペアンプなど、アナログ製品もトップシェアを確保するほど力を入れている。また、Class-Dのデジタルアンプでは40%のマーケットシェアを持つICメーカーだ」と解説。

 さらに「音は最終的にはアナログとして耳に届く。良い音を得るためにはデジタルだけでなく、高いアナログの回路技術も必要」とし、今後もDSPとアナログのどちらにも注力し「シグナル・チェーンのすべてをサポートする」という姿勢を示した。

試聴システム。左が「SRC4392」の評価ボード、右が「TAS5261」の評価ボード 可変タイプの電源電圧で音量調整 執行役員で戦略企画本部の岡野明一本部長

□日本TIのホームページ
http://www.tij.co.jp/
□ニュースリリース (パワーステージ)
http://www.tij.co.jp/news/sc/2006/scj_06_089.htm
□ニュースリリース (コンボ・サンプルレート・コンバータ)
http://www.tij.co.jp/news/sc/2006/scj_06_090.htm

(2006年11月14日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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