◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
JASRAC、著作権保護期間延長など'07年の活動方針を説明
-定額制音楽配信の料率も決定。YouTubeと会談を予定


JASRAC 吉田茂 理事長

1月25日開催


 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は25日、2007年の活動方針説明会を開催。著作権保護期間の70年への延長を訴えていくほか、定額制音楽配信への対応、私的複製と私的録音録画補償金制度の導入に向けた取り組み、映像作品のYouTubeへの無許諾の動画投稿の防止策について説明した。


■ 定額制音楽配信用の料率も決定。YouTube対策も

 昨秋にサービスが開始された「Napster」のような定額制(サブスクリプション型)音楽配信サービスなど、新しいネット上の音楽利用方法への対応を進め、新たにサブスクリプション型サービス用の利用料率を策定。料率規定を1月1日より変更し、許諾を開始したことが報告された。

【サブスクリプション型サービスの月間利用料率】
再生制限情報料あり情報料なし月額最低使用料
広告料収入等有り広告料等収入無し
音楽
サービス加入中情報料/広告料収入の7.7%または
77円×月間の総加入者数
55円×月間の総加入者数5,000円
サービス解約後6カ月情報料/広告料収入の12%または
120円×月間の総加入者数
85円×月間の総加入者数
可視的な利用(歌詞テキスト、楽譜など)
サービス加入中情報料/広告料収入の10%または
100円×月間の総加入者数
55円×月間の総加入者数5,000円

 JASRACの菅原瑞夫理事は、「これまで以上に発信、配信側で細かい制御ができるようになり、利用者の利便性向上も見込める。JASRACとしても後押ししていきたい。既に許諾をお取りいただいたサービスもはじまっている」と、積極的に新しい配信方法に対応していく姿勢を示した。

 また、私的録音補償金制度についても言及。補償金の支払い対象となる機器・記録媒体は録音はMD、CD-R/RW、録画はDVD-R/RWで、iPodなどは対象外となっている。

 JASRACの泉川昇樹常務理事は、「携帯オーディオプレーヤーは音楽を録音して楽しむことを目的とした製品。国内出荷は2003年の65万台に対し、2005年は約470万台と約7.2倍に増えている。一方補償金の対象となるMDの出荷は減少しており、私的録音補償金は2000年度の40億円をピークに2006年度は15億円まで落ち込んだ」とし、「著作権者は甚大な不利益を被っている」と説明した。

 また、パソコン以外のカーナビ、携帯電話、データ用CD-Rなどへの私的録音も増加しているとし、「汎用性を理由にこうした機器や媒体に補償措置が講じられないことは補償金制度の目的、公平の観点から問題」と述べ、文化庁により、補償金制度の抜本的見直しと、平成19年度中に具体的な結論を得る方針が明らかになっていることから、「声を大にして求めていく」と訴えた。

 なお、動画配信サイト「YouTube」における、著作権侵害防止の要請については、「2月の第2週にYouTubeのCEO、CTOと、Googleのビデオ関連担当者が来日する予定」とのことで、JASRACら関連団体は、YouTube側への対策を求めていくという。

 具体的には、YouTubeのトップページに日本語で注意書きを掲載することや、アップロードの際に氏名・住所などの登録、違法な映像をアップロードしたユーザーのアカウントを停止などを求める。


■ 著作権保護期間の延長も求めていく

三田誠広氏

 著作権保護期間を現在の「作者の死後50年」から、「70年」に延長するよう求めていく方針については、保護期間延長を呼びかけている「著作権問題を考える創作者団体協議会」で議長を努める、作家の三田誠広氏が説明した。

 三田氏は、延長反対者の多い「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」と、シンポジウムで意見を交換していることなどを紹介し、「われわれの意見を含めて何が問題か、明らかになってきた」と説明。

 ただし、自身の専門とする文芸の分野についても、「プロ以外の自費出版や、インターネット上の詩や短歌などが増えている。文芸家協会はプロだが、それ以外の人たちには、どういう風にアクションしたらいいのかはわからないのが現状」という。

 著作権者の死後50年で、作品がパブリックドメイン(PD)となることについては、「作品利用する業者にとって、50年でPDというのは救いになっている。それをいきなり70年にしてくれというのは、大変な手間になることは、それはその通りだと思う」と一定の理解を示しつつも、「われわれも単に長くして欲しいといっているわけではない。簡単に許諾が受けられ、すぐに利用できる状態にすることこそが目的」として、各権利者団体の作品情報などに一括してアクセスできるようなデータベース/サイトの構築を提案。「単に50年、70年というだけでなく、どうやって円滑な利用ができるかということを視野に入れて、システム作りに踏み込んでやるべきだ」とアピールした。

 また、著作権者の許諾先が不明な場合に、文化長官の裁定により、補償金の供託を行うことで、文化長官より許諾を得られる「裁定」制度についても、「より合理的な裁定制度を検討し、提言していきたい」とした。

 さらに、反対派による「日本がコンテンツの輸入大国のため、日本の国全体の利益を考えると延長しないほうが得である」という意見を紹介。「わたしは、著作権は私権だと考えている。国全体の問題として考えるのはおかしい」と訴えたほか、ぴあ総研による2002年度のエンタテインメント関連産業輸出入額調査の輸出が1兆4,347億、輸入が1兆6,562億円というデータを引き、「日本が『コンテンツ輸入大国』ということはない」と説明した。


各権利者団体の代表が集まり保護期間延長を訴えた

 また、戦争中の敵国での著作権行使が不可能であることから、第2時世界大戦中に存在した米英など連合国国民の著作権について、通常の保護期間に戦争期間を加算する「戦時加算制度」についても言及された。

 敗戦国の中でも日本のみが加算義務を負っていることから、正当性、合理性に疑問を投げかけ、廃止を求めていく方針という。JASRACの加藤衛常務理事は「著作権協会国際連合(CISAC)に対し、実質的な解消を求める書簡を送っている」とし、「単に50年を70年というだけでなく、反対派もそうした問題をあげて議論していくことが必要。単純に損だ、得だという議論でなく、取り組んでいく」と説明した。


□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/

( 2007年1月25日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.