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株式会社東芝と関西テレビ放送株式会社は29日、京都競馬場で開催された「天皇賞(春)」で、「HD DVD体験イベント」を実施した。
関西テレビが27日に発売開始したHD DVDビデオソフト「ディープインパクト ~日本近代競馬の結晶~」と、東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA2/XF2」などを京都競馬場「陽だまり広場」の専用ブースに設置。天皇賞を訪れた競馬ファンに、画質やインタラクティブ機能などのHD DVDの魅力をアピールした。 ブースでは、液晶テレビ「REGZA」とHD DVDプレーヤーを組み合わせて、HD DVD「ディープインパクト」のデモや、プロモーションムービーを上映した。 また、「ディープインパクト」発売を記念した特製のビニールシートをプレゼントするクイズイベントも実施し、イベント参加者の長蛇の列ができた。クイズは、HD DVDとDVDで同一コンテンツをREGZAに表示して、来場者に「どちらがHD DVDか」を質問。正解者にはビニールシートをプレゼントする、というもの。 ビニールシートは約1,000枚用意し、1時間ごとにクイズを実施。ほとんどの人が正解し、ビニールシートを手にしていたが、時折間違えてしまう人も。なお、不正解の人にもボールペンをプレゼントしていた。
また、現場では、HD DVDプレーヤーとHD DVDソフト「ディープインパクト」をセットにして、特別価格で販売。午前中の取材時には、まだ購入者はいなかったが、「(レースに)当たったら買いにくる」という人が多数いたという。 「ディープインパクト」という競馬界のビックタイトルの発売と天皇賞にあわせたイベント開催となったが、来場者のHD DVDの認知度は、「今のところ、さほど高くない」という。 しかし、クイズの正答率の高さに見られるように「DVDとの画質の違いが誰にでも伝わる」ことから、競馬にとどまらず「映画以外」のコンテンツの取り組みも進める、HD映像の魅力をアピールし、HD DVDの認知の拡大とともに、普及につとめていくという。 また、関西テレビで放送中のHD DVDのCMには競馬実況で有名な杉本清さんを起用。会場の大型スクリーンで、HD DVDのCMが放送され、「次世代の高画質。おーっとポインター機能だ」と、名調子でHD DVDをアピールした。
■ 「レースを楽しむ」付加機能。HDソフトでトップを HD DVD「ディープインパクト ~日本近代競馬の結晶~」は、国民的人気を誇る三冠馬ディープインパクトの、全出走14レースをノーカットで収録している。収録時間は110分。調教師へのインタビューや種牡馬生活の模様、俳優の緒形直人がディープインパクトの血統的背景を巡るリポートなども収めている。 また、凱旋門賞を除く13レースの映像に、HD DVDのインタラクティブ機能を活かしたディープインパクト専用カメラの映像を子画面表示できる「ディープインパクトカメラ」を用意。さらに、レース中のディープインパクトの位置取りを表示する「ディープポインター」も選択可能となっている。 ディスクは片面2層。映像は1080iで、MPEG-4 AVCフォーマットで収録。音声はドルビーデジタル2.0chで収めている。
「ディープインパクト」の企画・制作を担当した関西テレビ放送 クロスメディア事業局の山岡重行氏は、「競馬ソフトのHD DVD化は、大きな夢だった」と振り返る。 同作品は2月にDVD版を発売しているが、HD DVD版は2カ月遅れでの発売となる。HD DVD化の企画は、DVD版の作業が既に進んでいた2006年11月で、東芝のHD DVD事業統括部の担当者と山岡氏がフジテレビのライツビジネス感謝祭会場で意気投合したことがきっかけで、「(DVD化より遅れたことにつては)企画化の時期や、HD DVDの新機能導入のための技術的製作期間などが原因。やりたいことを盛り込み、楽しんでHD DVD化に取り組めた」と語る。 同作品のマスターは、関西テレビの競馬中継用のモノが中心となっている。同社の競馬中継では、ハイビジョンの導入が早くから進んでおり、1990~91年頃からGIを中心に関西テレビの収録番組で採用。地上デジタル放送時にあわせて、競馬中継のHD放送を開始していたという。 そのため、2004年のディープインパクトのデビュー以来の国内映像についてはほぼHDマスター(凱旋門賞など、一部はアップコンバート)を利用可能だったという。放送時の圧縮歪みなどもなく、「放送より上、ほぼマスターに近い画質を実現できた」と胸を張る。 また、放送を前提として収録したものの、実際の放送では使われていない映像も多数収録した。「ディープインパクトカメラ(ディープカメラ)」における、ディープインパクトのみを追いかけた映像もその一つだ。 「ディープカメラ」では、メイン画面でレース画面を流し、右脇のPinP画面でディープの専用カメラが確認できるというもの。HD DVDのインタラクティブ機能を活用したものだ。 ただし、右脇の一部をディープの映像が占有するため、例えば左回りのレースではゴール画面などが見えにくくなってしまうこともある。ディープがメイン画面でもよかったのでは? と尋ねると、「競馬映像の一番重要な点はレースの流れを見せること。作品としての流れを考えるとレースがメインと判断した」という。 なお、ディープカメラの映像は、特典映像として収録されているため、ポップアップメニューから呼び出しても確認できる。一部は放送で使われたものの、通常のG1レースでは10台以上のカメラを利用して収録するため、それらから厳選して、ディープの動きを捉えたことで、よりレースやディープの駆け引きなどが体感できる映像を目指したという。 「ディープポインター」はレース中のディープインパクトの位置取りを表示するもの。レースの流れとディープを確認できる便利な機能だが、ちょっと動きがカクカクして見えるのが気になった。 山岡氏によると、これらの機能については、「見ながら使える」ことを意識したという。映画タイトルの場合、監督のコメンタリーやメイキング映像など、映画を「見た後」に特典としてHD DVDのインタラクティブ機能が利用される場合が多い。本作の場合、レースを楽しむ付加機能としてそれらを使っているというわけだ。 なお、音声が2チャンネルというのも放送収録時の状況によるため。一部で5.1ch化の導入も開始したので、「テレビ、視聴者側の環境が整えば、マルチチャンネル化も進められるかもしれない」という。 以前は競馬中継を担当していたという山岡氏は、「ディープは凱旋門賞でトップを取れなかったが、ハイビジョンディスクで世界初。トップをとろう、という思いを込めた」と語る。 競馬DVDの採算ラインは「大体2,000枚ぐらい」とのことだが、「求める人がいる限り、なるべく意見を聞きながら多くの作品を出していきたい。放送側としては、ファンの拡大が見込める限り続けていきたい。ビジネスより競馬振興に主眼を置いた活動」と語る。 ただし、ディープの人気は別格で、DVDのセールスも「競馬作品として人気は圧倒的」とのこと。HD DVDについては、「プレーヤーの普及次第でまだわからないが、競馬好きには新しい機器が好きな人が多い。東芝さんと一緒にファンをつかんでいきたい」という。 なお、Blu-rayについては、「声がかかれば挑戦してもよい」というが、現時点で進んでいる案件は無いとしている。 ■ 「競馬ファンとしてBDには負けられない」東芝DM社藤井社長
会場には、東芝上席常務でデジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏も登場。競馬ファンで、「個人的にはいままでで一番嬉しい、思い入れのあるHD DVDソフト」と語る。「HD DVDは明らかに美しく、臨場感が凄い。毛並みから馬の動きまで、よくわかる。新馬戦が初めてHDで見られたことが嬉しい」とその魅力について熱弁をふるった。 ディープポインタ、カメラなどのインタラクティブ機能については、「私でもすぐ使える。映画の特典の“後で見る”と違って“みながら”使えるのがいい」と紹介。競馬ファンとして、「これ(競馬)はBDには絶対負けたくなかった。先行できて嬉しい」と語る。 また、Blu-ray陣営の「勝利宣言」については、「歴史的に、戦争で『勝った』と自分から言ったところが勝った試しはない」とコメント。特に米国市場でのHD DVDプレーヤー販売には手応えを得ているという。 ただし、「新しい市場の予想は難しい。昨年も50万台以上の販売を目指したが、10数万台だった。悪い数字ではないが、広がりが足りなかった」という。だが、「2007年に入って米国でプレーヤーの販売が加速している。米国はさらに拡大し、2007年は200万台を予定している」と北米でのプレーヤー販売に期待をかける。 なお、日本市場については、「レコーダが数万~10万台ぐらいでないと、動いていかない。プレーヤーもさらに安いものが必要でしょう」とした。ソフトについてもこれまでは映画が中心だったが、「映画以外にも、競馬などのスポーツや、音楽などコンテンツを増やして、“これは楽しい”、というのを増やしていきたい」と期待を込めた。 □関西テレビのホームページ ( 2007年5月1日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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