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政府の知的財産戦略本部は5月31日、「知的財産推進計画2007」を正式決定した。模造品の取り締まり強化や、ネットワークを活用したコンテンツ流通に向けた法整備などの方針が盛り込まれている。 コンテンツ流通を促進する法制度や契約ルールの整備については、IPマルチキャストを利用した地上デジタル放送の再送信に向けて法整備を2007年度中に講じることなどを確認。コピー保護技術を含む、端末技術の標準化やコンテンツ流通市場の整備も年度内に進める。 また、権利者不明コンテンツの流通促進に向けた方策の検討も進めるほか、私的録音録画補償金制度見直しについて、「年度内に結論を得る」としている。具体的には、技術的保護手段との関係を踏まえた私的複製の範囲の明確化や、使用料と複製対価の関係整理などに取り組むという。 ユーザーによるネットコンテンツ利用環境の整備への取り組みとして、検索サービスで用いられるサーバーに、文書や画像データが複製される問題について、著作権法上の課題を明確にして2007年度中に結論を出すとしている。 さらに、2008年中にNHKアーカイブスのネット配信サービスが行なえるよう、法整備を進める。そのほか、音楽CDにおける再販制度維持についての検討なども継続して行なうという。 コンテンツの海外展開については、海外を意識したコンテンツの創出や、コンテンツ事業者の国際競争力強化などを課題としてあげている。また、日本コンテンツの魅力を伝える「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」を開催するほか、年度中に「アニメ文化大使」事業を実施。在外公館などにおいて、日本のアニメ作品上映を行なうなど「現代日本を紹介し、対日理解を促進する」としている。 また、コンテンツ関連の研究開発課題として、高精細映像技術の開発支援やハイビジョン技術の海外普及促進などをあげている。また、情報家電のネットワーク化に向けた、配信モデルやホームゲートウェイ仕様の確立を目指す。 なお、コピー制御については、「地上デジタル放送のコピーワンスルール見直しに代表されるように、事実上利用にあたって制約になる可能性がある。検討プロセスを公開し、透明化を図ることが必要」としており、2007年度中の早期に結論を得ることを目標としている。また、民間の動画配信サービスなどのコピー制御についても、「権利者が安心してコンテンツを提供できる環境を作るとともに、過去の失敗例に学び、使いやすさに配慮したルールの採用を奨励する」としている。 知的財産の保護に向けた取り組みも強化。ネットオークションの監視、取り締まりの強化などを行なうほか、劇場内で無断撮影された映像の違法流通への対策を実施する。また、海賊版の販売行為など、著作権法違反行為のうち親告罪とされるものについて、2007年度中に非親告罪の範囲拡大を含め見直しを行ない、「必要に応じて法改正などの整備を行なう」としている。 ■ 各社、団体のコメントも公開 同計画の策定に向けて、各社、団体が提出したパブリックコメントもあわせて公開されている。 社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)では、私的録音録画補償金制度の廃止や、通信と放送の融合に向けた著作権法改正などを訴えている。また、コピーワンスについても、「技術的な措置の緩和による、消費者の利便性回復が急務」としている。 社団法人日本映像ソフト協会(JVA)は、暗号化技術を解除して行なう複製の禁止を著作権法に盛り込むように訴えているほか、リッピングソフトの流布防止に向けた刑事罰の導入などを求めている。 アップルジャパンは、「科学的根拠がない」と私的録音録画補償金制度の即時撤廃を訴えている。また、「仮に私的複製による権利侵害を被ったと主張するなら、その原因は複製防止技術を備えていない、著作物パッケージを製造販売しているレーベルにある」としているほか、「iPodユーザーは一般ネットユーザーの3倍有料コンテンツを購入している。iPodこそが有料かつ合法的なコンテンツ流通の最強の推進役」と説明。 アップルジャパンの声明は、文化庁著作権課長らを名指しで批判するなど、きわめて攻撃的なものとなっているが、通常アップルジャパンがこうした形で声明を出すことはほとんどない。アップルジャパンに同声明の提出について事実関係を確認したが、同社が提出した声明であるのかを含めて、「ノーコメント」として明言を避けた。 □知的財産戦略本部のホームページ ( 2007年6月5日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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