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NECエレ、H.264エンコーダ内蔵の携帯電話用LSI「M2」
-クロック自動制御など低消費電力化技術を新開発


7月4日発表

サンプル価格:5,000円


 NECエレクトロニクス株式会社は4日、携帯電話向けシステムLSI「M2」を発表。7月4日よりサンプル出荷を開始する。サンプル価格は5,000円。10月から量産を開始し、月産100万個を予定している。

 2006年9月に発表した「M1」の後継LSIで、通信用のデジタルベースバンド部とアプリケーション部を1チップに統合したシステムLSI。

 アプリケーションプロセッサは、ARMとの共同開発によるCPU「ARM1176JZF-S」(最高500MHz)と、DSPの「K701」(最高500MHz)を搭載。ARMプロセッサには、並列処理技術を採用し、処理能力をM1から2倍に向上した。

M2の内部構成。チップ内に通信機能とアプリケーション機能を内蔵 並列処理技術を採用し、処理能力を向上しながら消費電力の増加を抑えた

 通信規格はW-CDMA/HSDPAのほか、GSM/GPRS/EGPRSが利用可能。HSDPAは最大3.6Mbpsデータ通信に対応するほか、外付けコアを利用することで、7.2Mbpsデータ通信にも対応できる。

 映像処理機能については、H.264エンコーダ/デコーダをLSIに内蔵。対応解像度は640×480ドット。液晶ディスプレイへの出力は最大800×480ドット解像度に対応する。

 リサイズ、フィルタリング、レイヤ合成などの、画像処理機能を装備。3D音源も内蔵し、最大128和音再生が行なえる。

 インターフェイスはUSBのほか、液晶ディスプレイ接続用のパラレル/シリアル、地上デジタル放送用にはOFDM、カメラ用にYUV パラレル/CCPなど。ITU-R.BT656出力にも対応する。

 そのほか、UART、I2C、Audio/Voice Serial、SPI、IrDAのシリアルインターフェイスを装備。メモリーカード用に、SDカード・インターフェイスを搭載。汎用入出力ポートとして、GPIO(General Purpose Input/Output)を備える。

 なお、システムLSIのほか、無線周波数処理ICや、評価ボードなどのリファレンスデザインキット、開発ツールなどを含む半導体ソリューション「Medity2」は2007年末に提供開始予定としている。



■ M1と同等の消費電力を実現した低消費電力化技術

 M2はM1から処理能力を2倍とし、機能を大幅に強化しながら、消費電力はM1とほぼ同等に抑えている。発表会では、M2で新たに採用された低消費電力化技術に関する説明を行なった。

 携帯電話の待ち受け画面表示時に、液晶表示に必要なデータをフレームバッファから直接ディスプレイコントローラに転送する「LCDダイレクトパス技術」を搭載。その他の回路を動作させずに液晶表示を行なえるため、消費電力を低減できる。

M1は低消費電力が特徴のシステムLSI M1とM2の性能比較。M1ではH.264デコーダのみだったが、M2ではエンコードにも対応 低消費電力化技術により、M1とほぼ同等の消費電力を実現

 システムバスの負荷状況をモニタし、低負荷時に自動的に周波数を低下させ、消費電力を低減する「周波数ダイナミック制御」技術を採用。また、全体の動作状態を、用途に応じて分類した「機能マクロ」ごとにモニタし、各機能の利用状況に応じて、機能マクロ単位でのクロックラインの電力削減やクロック停止する「クロック自動制御」技術も備える。

 65nm製造プロセスを採用するM2は、チップサイズは小さいが、高速に動作するほどリーク電力が増加し、余計な電力を消費する。そこで、リーク電力量と処理速度の異なる3種類のトランジスタを用意。リーク電力が少なく低速なトランジスタを低速処理に割り当てるなど、用途に応じて使い分けることで、リーク電力を低減する「マルチVtトランジスタ」を採用。

 これらトランジスタのうち、高速動作の2種類には電源スイッチを内蔵し、機能マクロごとに利用状況に応じて数マイクロ秒単位でのスイッチオン/オフを行ない電力消費を抑える。

クロック自動制御技術を採用 3種類のトランジスタを処理速度に応じて割り当てる「マルチVtトランジスタ」。スイッチ制御により、さらに消費電力を低減

 ばらつきの大きいリーク電力を制御する「基板バイアス」技術も採用。モニタ回路でトランジスタのリーク電力をチェックし、最適化を行なう。なお、基板バイアス技術は、米Transmetaの「LongRun2」技術を利用している。

基板バイアス技術により、リーク電力の最適化を行なう

 これらの低消費電力化技術はいずれも、システムLSI内のみで自動的に処理されるため、ソフトウェアからの制御がほとんど必要ないという。

 今後は、今回開発した低消費電力化技術を他の同社製チップにも採用することで、製品ラインアップ全体の低電力化を進めていく方針。

会場では、携帯電話のバッテリとVGA解像度液晶を搭載する評価ボードを展示。640×480ドットのH.264映像を再生するデモを行なった

□NECエレクトロニクスのホームページ
http://www.necel.com/index_j.html
□ニュースリリース
http://www.necel.com/news/ja/archive/0707/0401.html

( 2007年7月4日 )

[AV Watch編集部/ike@impress.co.jp]


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