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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第314回:ソニーが放つ刺客、メモリ記録型AVCHD「HDR-CX7」
~ コンパクトかつ丁寧な仕上がりの自信作 ~



■ メモリタイプ、起動

 昨年、AVCHDの規格が立ち上がったときに、DVDとHDD、メモリをサポートするということはわかっていた。そしてこれまではソニーがDVDとHDD、松下がメモリという棲み分けで進んできたわけだが、いよいよソニーもメモリ型に進出してきた。

 メモリ進出の狼煙は、実は今年4月のNABで上がっていた。NABはプロ用の機器展だが、ここでメモリに記録するカメラ「XDCAM EX」が発表されたのである。もちろんこの流れはコンシューマでもアリだと薄々は感じていたのだが、実際に商品が出てみるとまた感慨深いものがある。

 「HDR-CX7」(以下CX7)は、ソニー初のメモリ記録型AVCHDカメラだ。型番の「7」はソニーでは勝負ナンバーなので、相当の自信作であることが伺える。すでに発売開始されており、ネットではもう10万円強まで下がってきているようだ。

 矢継ぎ早の新モデル投入でさらに盛り上がるビデオカメラ市場、その震源地的存在となりうるCX7を、さっそく試してみよう。


■ HDカメラもここまで来た!


1080i記録のビデオカメラでは世界最小・最軽量

 現在のところ、1080i方式HDビデオカメラとしては世界最小・最軽量となるのが、このCX7だ。DV時代はもうカメラが小さくなりすぎて、世界最小・最軽量の看板も「もういいよ」という感じだったが、フルHDの世界ではまだまだ通用するキーワードである。ちなみに1080iではないHDカメラで一番小さいのは、おそらく三洋XactiのHDモデルということになるはずだ。

 CX7に興味を示すユーザーがもっとも気になるのが、モノとしての作りではないかと思われる。小型HDカメラと言うことでは、松下の「HDC-SD1」、「HDC-SD3」も相当注目度が高かった。

SD1の業務用機「AG-HSC1U」と比較

 CX7とSD3を比較すると、CX7のほうが見た目でも若干小型なのがわかる。特にSD3はボディのグリップ側が盛り上がっているので、手に持ってみるとボディの半分を手のひらで掴む感じである。一方CX7はグリップ側の出っ張りが少ない分、鏡筒部全体を完全に手で掴む感じになる。

 液晶部分の出っ張りが少しえぐれているのも、指がここまで届いてしまうからである。だが握りの安定を考えると、このえぐれは重要なポイントだ。

グリップ感として重要な液晶部根元の凹み ヒップアップした形状が人差し指の操作性をなめらかにする

 ボディは後ろへ行くにしたがってヒップアップした形だが、この微妙なカーブが指によくフィットする。中指と薬指で十分ボディを掴み、人差し指を遠回りさせてズームレバーに綺麗に届かせるのだ。このあたりの作りは、「そう使う以外ない」というアフォーダンスを感じさせる。

塗装は細かいパール地になっている

 ボディの大半は細かいパール地の、光沢感のある黒で、よく見ると緑や紫の粒子が見える。これはVAIOやBDレコーダなどの表面塗装で使われた手法で、ソニーが得意とする技術だ。

 光学部及び映像エンジンは、以前レビューした「HDR-SR7」と共通で、記録メディアがメモリになったわけである。ただ操作性には若干違いがある。SR7にはレンズ脇にマニュアルコントローラがあったが、CX7にはない。またビューファインダもない。このあたりは、カメラとしての操作性云々よりは、かっこいいかどうかが決め手となっているように思う。

 各種ボタン類も、質感が高い。例えば液晶の横にあるズームや録画ボタンは、これまではフィルムカバーされたスイッチを使っていたところだが、CX7では金属質の独立したボタンになっている。内部のスイッチ類も同様で、とにかく質感にこだわり抜いている。

ボタン類も金属の質感をうまく使っている 液晶内部のボタンも抜かりはない


本体下部にメモリースティックスロット

 メモリースティックスロットは、液晶を開いた下部にある。使用するメモリースティックはMS PRO Duoか、新しく規格化されたMS PRO HG Duo。PRO HG Duoは従来のPRO Duoに比べて約4倍の高速読み出しが可能になっている。だがここまでの転送速度をUSB 2.0で出すのは無理で、専用のExpressCardアダプタを使用することで4倍速読み出しが可能としている。なおPRO HG Duoは8月発売予定。

 ここで大事なポイントを断わっておかなければならないが、CX7にはメモリは付属しない。松下のSD1、SD33には4GBのメモリが付属していたので、デフォルトで付属するものと思わないようにご注意願いたい。ちなみに現在4GBのMS PRO Duoは、1万円弱で買えるようだ。購入価格に1万円上乗せで予算繰りをしておく必要がある。

背面にHDMI miniを装備

 背面には、HDMI mini端子とアナログAV端子がある。HDMI mini端子用のケーブルは同梱されておらず、これも別途購入する必要がある。このモデルにもクレードルが標準装備されているが、そちらにもHDMI端子はない。。どうせならクレードル側に標準型のHDMI端子が欲しいところだ。

 クレードルは、本体の質感に合わせて光沢のある素材でできている。たださすがにここまでは、パール地塗装ではない。手前にワンタッチ ディスクボタンがあるほか、背面にUSB、コンポーネント、コンポジットAV端子がある。

クレードルも光沢感のある素材 背面にはレガシーポートが並ぶ



■ フルオートでは楽なのだが……

 光学部やエンジン部分が変わらないので、画質その他はSR7と同等だ。圧縮モードも同じで、4GBのメモリを使用した録画時間は以下のようになる。そのほかの細かいところは、SR7のレポートが参考になるだろう。ここでは新たに気付いた点などを中心にお伝えしたい。


動画サンプル
モード ビットレート 動画記録時間 サンプル
XP 15Mbps 約30分
ezsm_xp.m2ts (20.2MB)
HQ 9Mbps 約55分
ezsm_hq.m2ts (16.3MB)
SP 7Mbps 約65分
ezsm_sp.m2ts (12.3MB)
LP 5Mbps 約85分
ezsm_lp.m2ts (8.62MB)
編集部注:動画サンプルは、撮影時のH.264形式(.m2ts)。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 操作性でもっとも変わったのが、やはりマニュアルコントローラがないところだ。おそらくこのカメラの特徴としては、さっと取り出してハンディで撮ってしまう、という使い方になると思うので、フルオートで撮る分にはあまり問題はない。どんなシーンでもそつなく撮れるという作りだ。


静止画サンプル
解像感はいいが、後ろの菱形のボケがうるさいのが難点 x.v.Color搭載で色味ははっきりしている ディテールは出ているが、立体感に乏しい

 だがその反面、コントラストが押さえられて、かなり平坦な味のない感じの絵になりがちだ。例えば木漏れ日が綺麗なシーンを撮ったとしても、全体的にポヤンとしたフラットな絵になってしまう。マニュアルで少し絞れば現場の雰囲気が出るのだが、いちいちメニューに入ってスポット測光で設定するのは面倒だった。


静止画サンプル
オートではコントラストが浅い絵になりがち 少し絞っただけで現場の雰囲気に近づく

 常に全体を絞り目にする「AEシフト」のような機能があれば良かったのだが、それもないのでシーンごとにいちいち設定することになる。SR7はマニュアルコントローラがあるので、そのあたりの不自由はあまり感じなかったが、このカメラでは結構大変だ。

 また新GUIを搭載したシリーズ全体に言えることだが、手ぶれ補正のON/OFFがかなりメニューの奥に入ってしまっていて、切り替えしづらいのが難点だ。ハンディ中心ならそれほど切り替えないという意見もあるかもしれないが、手持ちだからといってずっと揺れてるわけでもないだろう。上級者になれば、手すりにカメラを乗せたりといった、静止物にカメラを固定する取り方も頻繁に行なうはずだ。できれば1つぐらい、機能が自由にアサインできるボタンが欲しかった。

 ホワイトバランスは、注意した方がいいポイントだ。オートでは若干寒色に、屋外では暖色に撮れる傾向がある。ニュートラルな色味が欲しい場合は、事前に「ワンプッシュ」でホワイトバランスを仕込んでおいた方がいいだろう。


静止画サンプル
ホワイトバランス「オート」では、若干寒色 一方「屋外」では暖色すぎる

 もう一つの特徴、といえるのかどうかわからないが、撮影時に液晶モニタを閉じても、スタンバイモードにはならないようだ。ビューファインダがないので確認しようがないが、レンズカバーが閉じないところを見ると、そのまま液晶のバックライトが切れるだけのようだ。

 考え方によっては、スタンバイモードよりも速く立ち上がると言える。電源OFFの状態から撮影開始までは9秒近くかかるので、マメに電源を切るよりは、大容量バッテリを付けて自動電源オフまでほっとくような使い方になるのではないかと思われる。

動画サンプル

ezsm_sam.mpg (180MB)

ezsm_hdy.mpg (53.2MB)
動画サンプル 「手ぶれ補正あり」で手持ちで撮影したサンプル
編集部注:動画サンプルは、XPモードで撮影したものを、ユーリード「VideoStudio 11」で編集し、記録時の解像度のままMPEG-2で再出力したものです。再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。



■ 平坦な絵柄に弱い静止画

 静止画は、動画と同時記録で460万画素、静止画モード切替えで610万画素相当の撮影が可能だ。最近のデジカメはコンパクトでも1,000万画素を超えるものが出始めているが、そこまでは至らないものの、通常の使用では十分な画素数であろう。

 動画と静止画の切り替えは2秒程度で、モードチェンジの余計なアニメーションが気になるものの、快適だ。動画と同時撮影の静止画は、相変わらず3枚までと言う制限がある。だが300万画素でよければ、付属のソフトウェアを使って動画から静止画を切り出せる。このあたりの感覚は、従来のビデオカメラの在り方からは考え方を切り替えていかなければならない部分かもしれない。

 色味は動画よりもやや色温度を低く撮る傾向がある。またこちらも明るめに撮れるので、シーンによっては多少絞ってやる必要があるだろう。全体的な解像感は良好、暗部もきちんと落ちているが、等倍で見るとボケ足の平坦な色味の部分にかなりの偽色を感じる。このあたりは、圧縮アルゴリズムの問題かもしれない。


静止画サンプル
背景のボケにかなり偽色を感じる もう一歩ディテールが欲しい感じもする
背景の黒は綺麗に落ちている マニュアルで少し絞ってやらないと、雰囲気が出ない



■ 期待できる転送・再生

 メモリの特徴ということでは、リムーバブルであり高速転送ができるという点は今後の注目ポイントだろう。通常のMS PRO Duoを使っている分には、カメラをUSBで繋いでもメモリを取り出してカードリーダーに入れても、速度的には大差ない。だがMS PRO HG DuoをExpress Cardで転送すれば、そのあたりに大きなメリットが産まれることになる。

 Express Cardは最近ノートPCを中心に採用が進んでおり、小型HDカメラとの相性もいい。再生環境という意味では、先月末に行なわれたPS3のファームウェアアップデートで、メモリ上のAVCHD再生が可能になった。メモリを取り出してPS3にセットするだけでHD動画をテレビで見られるのは、利便性が高い。

 だが逆にそこまでITリテラシーの高い人が使うのならば、アナログやUSB中心のクレードルはほとんど使い道がないということでもある。このあたりはまだまだ当分、両極端のユーザーをサポートし続けなければならないだろう。

 付属ソフト「Picture Motion Browser」の使い勝手などは、SR7のレビューから変わったところはない。そこで今回は久しぶりに、「ワンタッチディスク」を試してみた。ほとんどXPモードで撮影した動画および静止画で約2GBのデータをDVDメディアにバックアップするのに、15分弱であった。

高速化を果たした「ワンタッチディスク」 約2GBのデータ記録が15分弱で完了

 AVCHDの初代機HDR-SR1で試したときは、同じテスト機、ほぼ同じデータ容量で1時間近くかかったことを考えれば、劇的に速くなっている。また以前は動画と静止画で別々のディスクができたが、今回は両方が1枚のディスクに収録されるようになっている。


■ 総論

 AVCHDは、DVDにハイビジョンを記録するということでセンセーショナルであったわけだが、その後の展開を俯瞰してみると、一番大きな影響はメディア特性によるカメラの多様化だったのかもしれない。Blu-rayプレーヤーでかかるDVD、長時間録画のHDD、小型軽量化のメモリと、カメラ性能は同じでも、ユーザーベネフィットで選択できるようになった。

 CX7は、メモリの特性を最大限生かしたという意味で、様々な仕掛けを用意した。小型・軽量化はもちろん、新規格の高速メモリもそうだし、PS3での再生もその一つだ。

 メモリやHDMI miniケーブルが同梱されていないので、それ以外の投資が必要なのは残念だが、ここまで小さくなったこと、10万円程度で買えることなどを考えると、もはやSD時代と同じ感覚でHDが使える。また松下SD1/3と違ってSDモード、しかも4:3画角でも撮影できる点は、意外にレガシーな用途にも追従できてしまう。

 最先端のベネフィットを装備しながらレガシーな機能を捨てていないあたりに、IT企業でばりばり仕事するOLだが家に帰れば意外に料理が上手いみたいな器用さを感じさせる逸品だ。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200705/07-0529/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/handycam/PRODUCTS/HDR-CX7/index.html
□関連記事
【5月29日】ソニー、メモリースティック記録のAVCHDビデオカメラ
-1080i方式で世界最小・最軽量。60/100GB HDDモデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070529/sony1.htm
【4月26日】米Sony、メモリースティック記録のAVCHDビデオカメラ
-AVCHDで世界最小。60/40GB HDDモデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070426/sony1.htm

(2007年7月11日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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