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「AES 2007」が開幕。3chサラウンドスピーカーを各社提案
-SSDに記録するDSDレコーダ。「mp3HeadPhone」など


会期:7月19日~21日

入場料(当日券):展示閲覧は無料/講演は有料


 プロフェッショナル向けのオーディオ関連企業や、オーディオ技術者、研究者などが各種発表/展示を行なう「AES東京コンベンション2007」が7月19日から21日まで開催される。入場料(当日)は、展示のみの場合は無料。講演は別途料金が必要となる。詳しい価格はAESのページに掲載されている。

 レコーディングスタジオ向けの機材や、大学の研究室で行なわれているサラウンド研究の発表などが中心だが、一部コンシューマ向けの新技術や新製品の展示も行なわれている。


■ 3chサラウンドシステム

 フォステクスのブースでは、独自のアルゴリズムを採用した「Tri-Phonic System」と呼ばれる3chスピーカーが展示されている。フロントに横一列に配置した3chのスピーカーで、2chシステムよりも明瞭な中央定位や、広がりのある音場を再現するというもので、2chソースでもサラウンド再生が可能。単体スピーカーだけでなく、ユニット間の間隔が狭くなりがちなテレビ内蔵スピーカー、ラック内蔵スピーカーなどへの応用を想定している。

 フロント設置のスピーカーだけでバーチャルサラウンドを実現する技術は多く存在するが、位相処理を伴う場合、サラウンド効果が一番発揮されるスイートスポットから離れると逆相感/違和感を感じ、聴き疲れするなどの問題がある。

DTPS方式の試作機(DTPS II)

 「Tri-Phonic System」では独自のアルゴリズムでこの逆相感を低減し、スポットを外れた際でも不自然さを感じないという。この処理はDSPなどで行なうほか、アナログ回路のみでも実現可能。ATPS(Analog Tri-Phonic System)とDTPS(Analog Tri-Phonic System)という2つのバリエーションを用意しており、アナログ回路のみの場合は安価な追加機能として実装できるのが特徴。

 DTPS方式の試作機(DTPS II)は、ダイマジックと共同開発。音質や音場処理のより詳細な調節が行なえる。カーオーディオなどで採用されている「EUPHONY」技術を投入しており、試作機も小型筐体ながら倍音を使った低音再生能力の高さが印象的だ。

 「EUPHONY」はステレオ音源から5.1chサラウンドを作り出す「AST」、低音/高音の増強技術「DBEX」、バランスの良い再生音に整える「DSC」、少ないチャンネルでサラウンド再生を行なう「DVX」技術を組み合わせたもの。新たに3chサウンド用に、2ch信号からセンター成分を抽出する信号処理アルゴリズムに対応している。

アナログ回路で3chサラウンドを実現したATPSタイプの試作機 DTPS IIの試作機で、ピュアオーディオでの使用を想定したモデル

 また、同様のデジタル方式を使った試作機として、大型ユニットと木製エンクロージャを使った3chフロントスピーカーも展示。ピュアオーディオ分野でも訴求していくという。「2chスピーカー間の幅が広くとれない環境でも、中抜けが無く、広がりと密度のある音場再生ができる」(フォステクス)とのこと。

 いずれも具体的な製品化の予定はまだ決まっていないが、「単体発売だけでなく、テレビ内蔵スピーカーへの採用なども含め、幾つかのメーカーと交渉している段階」だという。

 これに関連し、ダイマジックのブースでも3chスピーカーシステムが展示。フォスターも協力したという試作機で、製品化の際には専用アンプとセットにした販売を予定。テレビなどへの内蔵も想定しており、「画面下部にスピーカーを配置しても、画面中央に音を定位させることもできる」という。

ダイマジックが参考展示している3chスピーカー。非常に薄型なのが特徴

 フォステクスではさらに、2chスピーカー用のサラウンド技術「Wide Space Surround」も展示。ラジカセやミニコンポなど、コンパクトな2chシステムでも十分な音の広がりが得られるという技術で、アナログ回路のみで安価に実装可能。逆相感も少ないという。展示では同回路を内蔵したアンプや、回路ユニットのみのバージョンも用意。ポータブルオーディオプレーヤーをソースに、アクティブスピーカーとの組み合わせも提案している。

「Wide Space Surround」を使用したデスクトップオーディオ試作機。アンプにサラウンド技術が搭載されている サラウンド技術のみのユニットと、アクティブスピーカーを接続したデモ


■ ポータブルレコーダの記録媒体に新風

 コルグでは、DSD形式で録音が可能なポータブルレコーダとして、ハンディサイズの「MR-1」や、5.6448MHzでの録音も可能な「MR-1000」をリリースしている。いずれも記録媒体としてHDDを採用しているが、同社のブースで、フラッシュメモリを使った大容量ストレージ「SSD(Solid State Drive)」を記録媒体にした試作機が展示された。

 「MR-1000」の内蔵HDDを、32GBのサムスン製SSDに乗せ換えたもので、録音機能はMR-1000と同じ。DSDIFF/DSF/WSD形式での録音でき、リニアPCMでは最大24bit/192kHzでの録音をサポートする。SSDを採用したことで無音動作が可能で、消費電力も低減、重量も軽減できるという。

 また、「HDDを使用していると耐衝撃性に問題があるが、SSDならば信頼性がより向上する」という。製品化の予定については「今回の展示の反響も含め、今後製品化するか否かを決定したい。容量も32GBで決定ではなく、製品化の時期に価格との兼ね合いで最適なものを選んでいきたい」としている。

左が「MR-1000」、右が「MR-1 32GB SSDを採用した試作機。筐体や機能など、主な仕様は「MR-1000」と共通

「PD606」

 フォステクスのブースでは、HDDに加え、DVDドライブも内蔵したレコーダを参考展示している。80GBの1.8型HDDと、12cm DVDマルチドライブを採用しており、DVD-R/RW/RAM(カートリッジ無し)への書き込みに対応。HDDとDVD-RAMへの同時記録が可能で、直接記録ができるのはDVD-RAMのみ。DVD-R/RWはデータバックアップに使用する。

 「PD606」は、6chアナログ入出力(XLR)と、8chデジタル入出力(D-Sub 25ピン)を用意し、最大8トラック記録が可能。24bit時は44.1/48kHzで最大8トラック、88.2/96kHzで最大4トラック、176.4/192kHzで最大2トラックの録音が可能。

 4chアナログ入力、2chアナログ出力、2chデジタル入出力を備えた下位モデル「PD204」も用意。いずれも2007年の秋~冬頃の発売を予定しており、価格は未定。「PD606」は130~150万円程度になる見込みだ。

DVDマルチドライブに録音可能 1.8型HDDにも同時録音できる 下位モデル「PD204」


■ ヘッドフォン向け新技術「mp3HeadPhone」

 仏Thomsonのブースでは、5.1chサラウンド再生に対応するMP3フォーマット「MP3 Surround」などを紹介する一方、ヘッドフォン向けの新音響強化技術として「mp3HeadPhone」を展示している。

 2chソースを再生した際の頭内定位の違和感を緩和するほか、低音の表現など、音質そのものもヘッドフォンに適したものに変換するという技術で、リアルタイム処理が可能。デコードされた音声に適用するため、MP3だけでなく、そのほかの音楽フォーマットにも適用できる。

 パソコン向けの音楽プレーヤーソフトや、ポータブルオーディオプレーヤーの音質モードの1つとして訴求する予定。なお、同社では7月17日に、日本向けにMP3関連技術を紹介するサイト「all4mp3.jp」を公開しているが、後日同サイトで「mp3HeadPhone」が体験できるソフトウェアを無償配布する予定。

mp3HeadPhone 日本語サイトも公開されている

既報の通り、TOKYO FMでは浦和レッズとマンチェスター・ユナイテッドのサッカー試合を、ダイマジックの「EUPHONY」技術を用いてサラウンド放送する。ダイマジックブースでは中継用のサラウンド収録対応マイクも展示している DTSではDTS-HD dts Japanでは、DTS-HD Master Audioなどに対応したスタジオ向けエンコードシステムを展示した


□AESのホームページ
http://www.aes-japan.org/
□関連記事
【7月17日】Thomson、「MP3 Surround」の日本語サイトを開設
-エンコードソフトや、5.1ch楽曲などを無償提供
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070717/thomson.htm
【7月13日】TOKYO FM、サッカーを2chバーチャルサラウンドで中継
-レッズ VS マンチェスター。2chラジオで聴取可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070713/tfm.htm

(2007年7月19日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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