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【新製品レビュー】
SonicStage要らずの「ウォークマン」を試す
ドラッグ&ドロップにも対応。ソニー 「NWD-B103F」


8月発売

米国価格:60ドル

購入価格:9,240円


 カセットテープ、CD時代はポータブルオーディオの代名詞であった「ウォークマン」。しかし、HDD/フラッシュメモリの時代に入り、iPodにその座を奪われた感は否めない。

 その一因として度々指摘されてきたのが、「著作権管理を厳密にするあまりユーザーの利便性を損なってきた」という点。楽曲管理ソフト「SonicStage」は数年前まで手持ちのCDのリッピング楽曲についてもチェックイン/アウトの管理が必要なほか、自社コーデックのATRACにこだわり、MP3の管理や転送ができないなどの制限が設けられていた。そのため、ユーザー側からは使い勝手に不満を感じる要素を残してきた。

 だが、近年のSonicStageでは、MP3もATRACもAACもシームレスに扱え、かつてのような不満は聞かれなくなりつつある。市場シェアもiPodには及ばずも、日本国内の地位は不動のものがある。「ハードはいいけれどソフトウェアが……」というウォークマンの評価は過去のものになりつつあると感じていた。

 しかし、7月に欧州で発表された「NW-B100シリーズ」は、SonicStageも不要でドラッグ&ドロップで楽曲転送と、従来のウォークマンでは考えられない“オープン”な製品だった。「ウォークマンでSonicStage不要」という点は、多くの人の興味を引いたようで、弊誌の週刊ランキングでも上位に入った。しかし、どのような形で楽曲転送できるのか、転送した楽曲の書き戻しは? といった疑問も残った。国内の一般店舗では購入できない製品だが、オーバーシーズモデルとして国内で販売していた1GBモデル「NWD-B103F(JE)」を入手し、テストした。購入価格は9,240円。

 折しも30日に米国や欧州で新型ウォークマン「NW-A/Sシリーズ」が発表された。転送ソフトをSonicStage CPからWindows Media Playerに変更して、WM DRMもサポート。ソニーとMicrosoftがタッグを組むという奥の手的な戦略だが、ATRACには対応せず、業界で広く扱われているMP3やAAC、WMAへの対応を進めていくようだ。

 なお、欧米ではATRACの音楽配信サービス「CONNECT」の終了もアナウンスされているが、ソニーでは「各地域の特性を考慮した製品戦略の一貫。国内においては従来通りにビジネスを進めていく」としている。今後の国内展開はまだわからないが、ソニーの新戦略の橋頭堡ともいえる「NWD-B103F」を試用した。


■ 至ってシンプルなプレーヤー

パッケージ

 同梱品はイヤフォンと取扱説明書のみ。本体は、細長いスティック状のデザインが特徴で、右端のキャップを外すとUSB端子が現れる。少々大きめのUSBメモリといったデザインは、4月から国内で販売されているウォークマン「NW-E010」シリーズに近い印象だ。外形寸法は、25×88.5×14.1mm(縦×横×厚み)、重量は約30g。

 本体前面に3行表示の液晶ディスプレイを装備。ディスプレイ右脇に再生/停止ボタン、右下にBACK/HOMEボタンを装備する。再生/停止ボタンの右上にスキップ/早送りボタン、右下にバック/早戻しボタンを備えており、これらのボタンを組み合わせて再生/停止や選曲操作が行なえる。

 本体上部には電源、ボリューム、録音開始/停止の各ボタンを装備。背面のジョグダイアル風スイッチが、「NWD-B103」にソニーらしいデザインイメージを与えているが、機能としては単なるHOLDスイッチだ。左脇にはヘッドフォンジャックとマイクを備えている。

 ウォークマンシリーズとしては、最廉価クラスの製品となるが、光沢ある塗装やメタリックな質感を強調した背面やヘッドフォンジャック部の仕上げには高級感がある。液晶部の微妙なラウンドも手になじみやすく、このあたりの細かい配慮にもソニーらしさを感じさせてくれる。

3行表示の液晶ディスプレイと基本操作ボタンを前面に装備する キャップを外してパソコンとUSB接続
本体上面にボリュームや電源、録音ボタンを装備する ヘッドフォンジャック脇にマイクを装備。背面のジョグダイアル風スイッチはHOLDスイッチとなる


■ ウォークマンでドラッグ&ドロップ転送

パソコンにUSB接続

 NWD-B103Fの特徴の一つが、ソニーのオーディオ管理ソフト「SonicStage CP」を使わずに楽曲の転送ができるという点だ。では、どのように転送するかというと、PCから直接ドラッグアンドドロップ、もしくはNWD-B103F内に収録されたソフト「Auto Transfer」を利用する。対応楽曲形式はMP3とWMAで、DRMつきのWMA楽曲は転送できない。

 キャップを外して、パソコンとUSB接続すると、PCからNWD-B103Fが認識される。通常のUSBディスクとして、ドラッグ&ドロップで簡単に楽曲転送できるが、接続時のウィザードに従って[WALKMAN Auto Transfer]を選択すると、転送元のフォルダ選択画面が現れる。同期したいフォルダを選択した後、[OK]を押すと、楽曲の同期が開始される。


パソコンに接続すると「WALKMAN」として認識し、WindowsのウィザードからAuto Transferを呼びだせる Auto Transferの同期フォルダを選択して転送する

パソコンからはUSBストレージとして認識される。本体内にAuto Transferのソフトウェアを収録しており、PC接続時に起動できる

 ドラッグ&ドロップで、177MBのMP3ファイルを転送した際の転送時間は、約4分43秒。最近のオーディオプレーヤーとしては転送速度が遅い部類といえる。なお、転送したファイルには特に暗号化などは行なわれておらず、PCに書き戻して再生することもできる。かつてのSonicStageのチェックイン/アウトなどの複雑な仕組みを考えると、隔世の感がある。

 また、ドラッグ&ドロップ時でもAuto Transfer利用時でも、転送時間はほとんど変わらない。Auto Transferは、より転送を簡単にするためのランチャという位置づけのようだ。



■ シンプルで使いやすい操作系。ウォークマンらしい高音質

メインメニュー メニュー言語は簡体中文など8カ国語が選択できるが、日本語は用意されていない

 電源を投入すると、データベースを再構成中というメッセージが5~10秒強表示された後、メニュー画面があらわれる。メインメニューには[Voice]、[Music Library]、[FM]、[Setting]の4つが用意されている。楽曲検索は[Music Library]で行なう。なお、Settingでは利用言語が選択できるが、英語、フランス語、中国語、韓国語などが用意されているものの、日本語は無い。

 メニュー内の移動はスキップ/バックボタンを利用する。楽曲検索はシンプルでわかりやすい。MusicLibraryで、再生/停止ボタンを押すと、All Songs、Artist、Album、Folder/Filename Sortの4つの検索モードの選択画面が現れる。スキップ、バックの各ボタンで任意の検索メニューを選択できる。

 アーティスト名検索は[Artist]、アルバム名では[Album]を利用するが、[Folder/Filename Sort]は、ソニー製品としては珍しくそのままフォルダ階層を表示し、検索できるというモードだ。従来よりUSBストレージクラス対応のプレーヤーを利用していた人にとっては馴染みやすい検索モードだろう。


Artist、Albumなど4つの検索モードを用意 アルバム検索 フォルダ検索モードも装備

再生画面。日本語表示にも対応する

 なお、一階層戻る場合や再生中にメニューに戻る場合には、BACK/HOMEボタンを利用する。メニューの日本語表示はできないが、日本語の楽曲情報は問題なく表示できる。楽曲のスキップ/バックや早送り/戻し、ボリューム操作などもボタン位置を覚えてしまえば、ほとんど迷うことなく操作可能だ。

 再生モードは、ノーマル、シャッフル、一曲リピート、フォルダリピートが選択できるが、メニューのSettingから項目をたどって設定する必要がある。ワンボタンでシャッフル呼び出しなどの機能は備えていない。イコライザは、ノーマルのほか、Heavy/Rock/Jazz/Classical/Popとカスタムモードを用意している。

再生モードを選択 イコライザも搭載

付属のイヤフォン

 付属のイヤフォンは、プラスチックの質感がかなりチープではあるものの、音質は悪くない。イヤフォンを「MDR-EX90SL」に変更して聞いてみたが、本体の音質もよく、ウォークマンらしい、力強くクリアな中低域が気持ち良い。音像のバランスがくっきりとし、解像感のあるしっかりしたサウンド。音質面で不満を感じることはなさそうだ。

 また、FMチューナも内蔵している。ただし、対応周波数帯域が87.5kHz~108kHzなので、日本国内ではほとんど使えない。MP3形式でのボイスレコーディング機能も搭載。ビットレートを96/128/192bpsから選択できる。


FMチューナを内蔵するが、日本国内では利用できない ボイスレコーディングの音質設定も可能


■ 音がよく使いやすい「普通」のウォークマン

 「ウォークマンながらSonicStageが要らない」という以外には、大きな特徴もないのだが、デザイン、音質、操作インターフェイスなどがしっかりと作り込まれており、ベーシックなオーディオプレーヤーとして完成度は高い。

 不満点としては、転送速度が遅いこと。もともとウォークマンとSonicStageの組み合わせはあまり転送速度が速いほうではないのだが、ドラッグ&ドロップで転送してもやはり遅い、というのはやや残念だ。また、DRM保護されたDRM楽曲や、ATRAC、AACなどのコーデックもサポートしていないので、それらを求める人にはお勧めできない。

 同クラスの「NW-E010」なども用意されており、こちらはAACやATRACにも対応しているので、無理に海外モデルのNWD-B100を利用する必然性はあまりない。ただし、BACK/HOMEボタンを使った操作性は個人的にはB100のほうが好みではある。もっとも付属のイヤフォンはNW-E010のほうが良く、ジャケット表示やシャッフルなどの機能もE010のほうが優れてる。

 ともあれ、さらなるオープン戦略推進を明らかにしたソニーウォークマンの橋頭堡ともいえる製品。国内での新展開にも期待したい。

□Sony Europeのホームページ(英文)
http://www.sony-europe.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.sony-europe.com/view/ShowPressRelease.action?section=en_EU_Press&pressrelease=1184310537445&site=odw_en_EU
□ニュースリリース
http://news.sel.sony.com/en/press_room/consumer/portable_audio/walkman_players/release/31221.html
□関連記事
【7月24日】Sony、SonicStage不要/ATRAC非対応のウォークマン
-MP3/WMA再生対応の「NWD-B100」シリーズ
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070724/sony.htm
【8月20日】米Sony、H.264ビデオやWM DRM対応の新ウォークマン
-楽曲管理ソフトはWMP11。ATRAC非対応に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070830/sony2.htm
【4月20日】【新レ】音質重視のベーシック ウォークマン
-“シャネルの口紅”をイメージ? ソニー 「NW-E010」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070420/np009.htm
【新製品レビュー バックナンバー】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/backno/npback.htm
【2006年6月2日】【デバ】新ウォークマンはnano/shuffleの間を狙う?
9,980円のスティックモデル ソニー「NW-E002」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060602/dev151.htm

(2007年8月31日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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