◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
シャープ、上期決算は減益も下期巻き返しに自信
-亀山第2工場で下期増産へ、32型の生産を強化


片山幹雄社長

10月25日発表


 シャープ株式会社は、2007年度上期連結決算を発表した。売上高は前年同期比12.0%増の1兆6,408億円と5期連続で過去最高を記録。だが、営業利益は12.3%減の790億円、経常利益は11.3%減の721億円、当期純利益は6.9%減の433億円と、中間期としては2005年度以来の減益となった。



■ 液晶テレビ薄型化競争は「望むところ」

 10月25日に、大阪市内のホテルで会見した片山幹雄社長は、減益の理由として、「ポーランドおよびメキシコにおける、液晶モジュールからテレビ生産までの工場の立ち上げ費用がかかったこと、予想以上に立ち上げが遅れたことが影響している。また、太陽電池が素材不足、原材料高の影響を受けたことも要因のひとつ。さらに、減価償却制度変更の影響もある」としたものの、「ただし、過去最高の売り上げを計上していることからも明らかなように、液晶テレビが売れずに減益になったわけではない。また、減益については、期初からある程度見込んでいた部分もある。下期は課題が解決できることから、通期見通しについては変更しない。大きな問題はないと認識している」とした。

 通期見通しは、売上高は前年比8.7%増の3兆4,000億円、営業利益は1.9%増の1,900億円、経常利益は2.6%増の1,750億円、当期純利益は3.2%増の1,050億円と増収増益を見込んでいる。

 液晶テレビ事業に関しては、今年7月から亀山第2工場で第3期生産ラインを稼働させたことで、月産6万枚まで引き上げたが、これを下期に、スループットの改善によってさらに生産数量を引き上げる計画。具体的な生産台数については明らかにしなかったが、同社では、2008年中には月産9万枚に引き上げる計画をすでに打ち出しており、前倒しで増産体制を敷くことになる。

亀山第2工場

 また、海外で32インチおよび26インチの需要が増加していることから、今年7月から、亀山第2工場において、32インチの生産を開始。「32インチで15枚取り、26インチで24枚取りできる第8世代の強みを生かして、コスト力を発揮できる形で、マーケットの流れに逆らわない体制へと迅速に転換している」とした。

 同社では、期初の計画では、年間900万台の液晶テレビ出荷のうち、40%を40インチ以上で占めると予想していたが、上期実績に占める40インチ以上の比率は20%。「米国におけるサブプライムローンの影響で、新築物件の着工件数が減少しており、それが大画面テレビの需要にも連動しているようだ。今年7月から大画面テレビの販売が急速に落ちている。地域ごとに差はあるが、年間を通じて40%という比率には達しないだろう。慎重に見ていく必要がある」とした。

 前年同期には、わずか4%であったことと比較すると大幅な上昇となっている。なお、上期の30インチ以上の構成比は、前年同期の47%から62%に上昇している。

 同社では、下期の業績見通しとして、AV・通信機器分野で約120億円の増益を見込むが、ここでは海外市場向けの32インチ以下の製品が成長の原動力となりそうだ。

 片山社長は、「上期は、ポーランド工場における従業員の確保、技術教育などに思った以上の時間がかかった。メキシコもようやく先日稼働したばかりで、上期業績には寄与しなかった。部材メーカーの現地への進出が遅れたことも影響している。しかし、10月以降、海外での生産数量が予定通りに増加しており、これまでと比べて、輸送コスト、材料調達コストが削減でき、クリスマス商戦に向けた生産量も確保できる」と、下期巻き返しに意欲を見せている。

 また、テレビ用液晶パネルの外販比率を、これまでの10%弱から20%に引き上げていく計画を明らかにした。「下期は、生産台数を増やしながら、外販比率を引き上げることになる」と、外販での収益拡大を目指す。

厚さ2cmの「未来の」超薄型液晶テレビ

 薄型化への取り組みについては、「薄型化競争を仕掛けた張本人が当社。当社が、いまのままで終わるわけはない」と、薄型液晶テレビを発表した日立製作所などを牽制。「他社の薄型攻勢には、いまの3つの製品ラインアップで十分戦える。また、技術発表している2cmの薄型液晶テレビの製品化もできるだけ早くし、普及機クラスで魅力ある壁掛けテレビを実現したい。薄型競争には技術力がないところは入ってこれない。当社のオンリーワン技術を生かすことができる分野であり、薄型競争は望むところだ」と意欲を見せた。

 さらに、堺の新生産拠点に関しては、「地盤の改良工事が始まる段階にあり、10社以上の企業が進出することが決まっている。いまは、並行して進出企業と仕組みづくりについて話し合いをしているところ。シャープ1社では21世紀型のコンビナートは形成できない。どうやったら新たなバリューを作り上げられるかを考えている。現段階での進捗状況は順調だと理解している」とした。



■ 携帯電話見通しは上方修正。エレキ全体は減益

 AV・通信機器分野の上期売上高は、前年同期比33.2%増の7,831億円。営業利益は19.0%減の163億円。

 そのうち、液晶テレビの売上高は55.2%増の3,831億円、出荷台数は48%増の374万台となっている。地域別には、日本が33.1%増の150万5,000台、北米が74.5%増の121万台、欧州が23.7%増の74万台、中国やアジアを含むその他地域では179.6%増の29万台となっている。しかし、テレビ事業は、営業減益になったという。

 携帯電話の売上高は27.6%増の3,365億円、出荷台数は17%増の804万台。「国内向けには、ソフトバンクモバイル、NTTドコモ、KDDI向けにワンセグモデルをラインナップし、上期は国内トップシェアを維持した。下期はワンセグ携帯電話の強化を図るほか、薄型化、デザインの強化に取り組んでいく。特に、スタイリッシュな薄型モデルの投入により、新たなシャープユーザーを獲得していく」と語った。

 携帯電話事業の通期売上高見通しは、370億円上方修正し、前年比7%増の6,500億円を見込むが、出荷台数では、期初計画通りの前年比5%増の1,550万台とした。

 DVDプレーヤーおよびレコーダは、上期は22.0%増の231億円、通期では33.1%増の600億円を計画している。

 電化機器は、エアコン、冷蔵庫が伸長したことで売上高は8.5%増の1,293億円となったものの、営業利益は41.8%減の668億円。冷蔵庫は上期が19.9%増の356億円の実績、通期では7.5%増の620億円の計画。エアコンは上期が27.6%増の366億円の実績、通期では18.7%増の580億円の計画とした。

 電化機器の通期見通しは、売上高が0.4%増の2,400億円、営業利益は47.1%減の10億円としている。ただし、減価償却制度の変更要因を除けば、通期営業利益は前年実績を上回ることになるという。

 情報機器は、売上高は2.4%増の2,221億円、営業利益は1.8%増の161億円となっている。パソコンの売上高が前年同期比39.1%減の64億円と大幅に減少したが、複写機および複合機、通信融合端末が伸張したことで増収増益となた。

 AV機器・通信機器、電化機器、情報機器で構成されるエレクトロニクス機器は、売上高が前年同期比22.8%増の1兆1,346億円、営業利益は10.8%減の331億円。

 LSIは、フラッシュメモリの販売減少があったものの、携帯電話、デジタルカメラ向けのCCDおよびCMOSイメージャーが伸張し、売上高は前年同期比2.7%増の989億円、営業利益は59.0%減の13億円。

 液晶は、売上高が前年同期比8.6%増の5,498億円、営業利益は0.6%増の371億円。携帯電話向けのTFT液晶が市場環境悪化の影響を受けたものの、亀山第2工場の第3期生産ラインの稼働もあり、テレビ向けの液晶パネル出荷が増加した。

 太陽電池などを含むその他電子部品は、売上高が前年同期比0.2%増の1,620億円、営業利益は70.7%減の45億円。太陽電池のシリコンの原材料不足、原材料高が影響。太陽電池は、上期売上高が前年同期比15.5%減の682億円となったほか、通期見通しも、当初の1,600億円の売上高計画を、前年比0.9%減となる1,500億円に修正した。

 だが、太陽電池では、シリコンウエハーの原材料の自製化を富山工場で開始。さらに、来年1月からは、外部からの一定数量の部材調達を確保できたこと、これにより、操業体制を改善できるなどのプラス要素もある。また、2008年度以降には、薄膜太陽電池の生産が開始され、シリコンウエハーの部材不足を解消できるといった明るい要素があるとして、「下期でも60億円の利益増加を見込む。中期的に見ても、まったく心配はしていない」(片山社長)とした。

 なお、LSI、液晶、その他電子部品で構成される電子部品等は、売上高が前年同期比6.1%増の8,108億円、営業利益は22.8%減の431億円となった。


□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□決算資料
http://www.sharp.co.jp/corporate/ir/library/financial/index.html
□関連記事
【7月25日】シャープ、第1四半期は2桁の増収を維持
-液晶テレビは30型以上が63%占める
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070725/sharp.htm
【4月25日】シャープ、4年連続で過去最高業績を更新
-片山社長「有機ELに一番備えている会社はシャープ」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070425/sharp.htm

( 2007年10月25日 )

[Reported by 大河原克行]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.