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「レミーのおいしいレストラン」のバード監督が語る
-「映画監督がHD映像を求める理由」


ブラッド・バード監督

10月30日開催(現地時間)


 ウォルトディズニーホームエンターテイメントは10月30日、米ハリウッドで「レミーのおいしいレストラン(原題:ラタトゥーユ)」および「カーズ」のBlu-ray Disc版発表記念パーティを開催(米国では発表会ではなく、パーティ形式で関係者が語り合う形式のお披露目会が多い)。それに先だって、レミーのおいしいレストランを監督したブラッド・バード氏へのグループインタビューも行なわれた。


■「マイケル・ベイもBDに興味」とチェイペック社長

 ウォルトディズニーホームエンターテイメント社長のボブ・チェイペック氏は、公式な発言を行なうたび、いつも猛烈なBlu-ray Discへの支持コメントを出すことで知られているが、今回も「柔軟性、セキュリティ、将来性、容量の大きさ、そして実際の画質を見ても、将来はBlu-ray以外にあり得ない」と話し、「私が聞いたところでは、トランスフォーマーのHD DVD版と我々のBD作品を見て、監督のマイケル・ベイが“俺もBDで出したい”と話しているそうです」との裏話を披露し、会場の笑いを誘った。


レミーのおいしいレストランをBDで発売 レミーを模したチェダーチーズ

 もっとも、HD DVDへの攻撃もこの日はこれで終わり。イベントは有名なフレンチのシェフを招き、彼の考案した料理をバイキング形式で楽しむといった趣向で、華やかにイベントが進行された。レミーを模した、約1mのチェダーチーズが飾られたり、給仕担当者が映画の登場人物のコスプレをしていたりと、パーティ好きには楽しめるイベントとなっていた。

 なお、カーズ、レミーのおいしいレストランともに、北米では11月6日から発売。音声には24bit/48kHzのリニアPCM音声が収録され、価格は34.99ドル。なお、日本版は12月5日に発売され、価格は各4,935円。

 もっとも、個人的にはこうしたお祭り騒ぎよりも、その前にインタビューでおけるブラッド・バード氏のコメントの方が興味深い。早速、その内容をお伝えしたい。ブラッド・バード氏は「レミーのおいしいレストラン」、「インクレディブル」の監督であり、脚本担当でもある。



■ 大画面で見る映画だからこそ、細部の動きにこだわる

「レミーのおいしいレストラン」のこだわりを語るバード監督

 「今回の作品では、世界中にコンテンツを展開することを考えて、普遍的なテーマを扱おうと思ったんだ。おいしいコックになることを目指すというテーマは、世界中どこでも通用するテーマだし、フレンチは世界中で楽しまれている料理。だから、このテーマを選んだ」とバード氏。

 「周りのみんなは、“たかがマンガだろ?”と言うのだけど、僕はとにかく細部のディテールにこだわったんだ。フレンチ料理を学び、フレンチの料理技法や道具の使い方、道具の質感や整理のしかた、厨房の緊張感など、どんなに細かいところでも、リアリティを引き出すために最大限の努力をしている」。

 ディズニー/ピクサー作品のように、様々な動物やモノを擬人化したアニメは、リアリティを追求すると言っても、もともとがおとぎ話。だからこそ“マンガじゃないか”と揶揄されるのだろうが、バード氏は現実にはあり得ないテーマだからこそ、自然な雰囲気で見せ、制作者の意図を表現するのが難しいのだと話す。

 「たとえばカーズは車を擬人化した映画で、レミーよりも設定はずっと不自然だ。しかし、登場する車たちの動きはとても人間的だし、レースにおけるピットイン時のスタッフの作業も実にリアル。嘘の動きではなく、ピットスタッフたちが、本来あるべき仕事をきちんと各所でこなしている、つまり意味のある動きをしているから、不自然には見えない。これはネズミが料理を作る映画でも同じこと」。

 「3Dグラフィックスによるアニメの技法は、ある意味、中途半端にリアリティが高く見えてしまうから、細かなディテールを付けるのに嘘くささはタブーなんだよ。あらゆる部分でのディテール、何かが動くときの周りの反応が正しく連動していなければならないし、ひとつひとつ、題材にしている世界を描く世界観が完成されたものではければならない」。

 では、バード氏はBlu-ray Discで作品が発売されることに関して、どのように考えているのだろうか。アニメぐらいならば、特にHD化しなくてもいいのではないか? という意見もある。

 「インクレディブルのDVDでは、高画質であることにかなりこだわって制作してもらった。あの映画も、細かい質感や動きなどに心を配って製作したからね。そのおかげでインクレディブルのDVDは、SD画質のディスクの中では特に高画質なものになったと思っている。でも、BDはもっとすごいと言われて、実際に評価してみるると、これが想像を超えていた。自分が作った映像が、意図した通りの表現で目の前のスクリーンに現れるというのは素晴らしいよね」。

 もう少し具体的に、エンドユーザーは本当にHDパッケージを購入する必要があるのだろうか? これは基本的な疑問としてある。監督の立場から見て、DVDではなくBDで発売する意味のようなものは、どこに見ているのだろう。

 「お世辞抜きで、BDの画質には驚いたんだ。色の正確性、細かなディテールの深さ。良いプレーヤーとプロジェクタ、大きなスクリーンがあれば、我々が意図している映像をそのまま見せることができる。映画は劇場の超大画面で見ることを前提に、とても小さなディテールまで作り込んで制作する。DVDでは細かすぎて見えないところまでね。その作り込みの部分は、これまで劇場でしか楽しめなかったけど、今ならBDで楽しめる」。

 「結局のところ、アニメでも画質はとても重要だ。たとえば、髪の毛ひとつとっても、キャラクタの表情によって微妙に髪型が変化させている。これは意図的なものなんだ。背景の中で主被写体以外のキャラクターが、表情を変えたり、それに伴って髪の毛が立ったりする。DVDの解像度では、そのあたりの細かい描写は大きなスクリーンに広げてみても、よく見えないんだよ。でもBDならば、とても見通しよく見える。特に何度も繰り返し見る子供たちは、毎回、新しい発見を映像の中にしてくれるんじゃないかな」。

 家庭の多くのテレビでは、そうした細かい描写まで見通せないのではないか? という質問もあったが、バード氏は「それでもBDで出すことに意味がある」という。

 「繰り返しになるけれど、アニメーターはあらゆる手段を使って、映像の中にキャラクターの人格を浮かび上がらせる。その場の雰囲気を細かな演出で表現する。たとえばフォーカス感を微妙に変化させて見せるシーン。DVDでは、狙ったようなフォーカス感の変化が出せない。BDならば、たとえ小さなサイズでも伝えたいことは伝わる。これは音に関しても同じことだ。たとえ小さなテレビしか持っていなかったとしても、そのディスクをしかるべき場所に持ち込めば、もっと大画面でも楽しめるのだし、ホームユーザーの手元に、これだけの品質の映像を届けられることが重要なんだ」。

 このように話すバード氏。当初は“お印的”にBDに対する推奨コメントを出すだけだと思っていたのだが、想像以上にBDで作品を発売することに積極的な発言をした。インクレディブルのBD版発売に関しては「そのことはディズニーの中でもトップシークレットのはず。実際のところ、僕にもわからないけど、そのうち出てくるとは思うよ」と煙に巻いたバード氏だが、今後はBDを意識してインタラクティブ機能を活かした映像を、あらかじめ制作しておくことも考えているようだ。

 「従来からある監督のコメント音声とかも、それなりにおもしろいとは思う。でも、制作者から言うと、もっと別に伝えたいことはある。たとえばアニメの場合、歩き方とか様々な動きをプログラム次第でどうにでも変更できるから、スタッフみんなでいろいろな意見が出て対立するんだ。それはもう戦争のようにみんなで、どっちがいい!と主張し合ってね。でも、どれがベストということではなくて、純粋に表現手段の違いなんだよ。だから、インタラクティブな機能を使って、候補に挙がった様々な別バージョンの表現を切り替えたりしながら見せることができればうれしいと思っている。もちろん、ゲームなどでキャラクタやストーリーのアナザーストーリーを展開するというのも、世界観が拡がっていいんじゃないかな」。

□Walt Disney Home Entertainmentのホームページ(英文)
http://disneyvideos.disney.go.com/
□ディズニー スタジオのホームページ
http://club.buenavista.jp/disney/
□国内版の作品情報(レミーのおいしいレストラン)
http://wdshe.jp/disney/product/data.jsp?cid=793#bluray
□関連記事
【Blu-ray/HD DVD発売日一覧】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/bdhdship/
【10月15日】Blu-ray版「レミーのおいしいレストラン」の音声仕様が変更
-リニアPCM音声が6.1chから5.1chに
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071015/wds.htm
【9月19日】ディズニー/ピクサー新作「レミーのおいしいレストラン」BD/DVD化
-カップ&ソーサー付属など、DVDは2種類用意
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070919/wds.htm

( 2007年11月1日 )

[Reported by 本田雅一]


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