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エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社は16日、映画化を前提としたDVDドラマをリリースする「DVD First」や、アニメ映画の強化、ニコニコ動画の活用などを軸とした、映像事業の構造改革を実施したと発表した。 同社は音楽事業に次ぐ収益の柱とすべく、2005年4月から映像事業に本格参入。洋/邦画、アニメなどを手掛けてきたが、経験やノウハウの不足、映像業界における構造的に不利なポジションにいたこと、市場環境の悪化などの要因で、3年間の累積損失が75億円に膨らみ、2009年3月期も9億円の営業赤字を予想。2010年3月期以降の黒字化を目指し、構造改革に踏み切った。 現在の映像業界では、自社の劇場網を持つ大手配給会社、自社メディアを活用したプロモーションやパッケージ販売を行なう系列会社を持つテレビ局、定番アニメによる長期的な収入のあるアニメ会社、タレント・バリューを活かしたキャスティング/プロモーション力のある大手プロダクションが高収益を上げている。
しかし、エイベックスにはこうしたプラットフォーム力やコンテンツ力が不足。洋画の買い付けで赤字作品を出したり、他社が企画した邦画に出資社として参加しても出資比率のわりに権利が獲得できずに収益が不足。DVD化を前提としたテレビアニメのビジネスモデルではDVD化権の高騰により収益が悪化し、オリジナルアニメの制作を試みるものの実績に結びつかないなど、トライ&エラーを繰り返してきたという。
その経験から同社は、本質的な課題を「プロダクション力、マスプロモーション力が活用できなかったこと」、「作品の企画開発に携れず、プロデューサー・ポジションに立てなかったこと」と分析。これらを克服するための今後の方向性として、新しいキー・ビジネスモデルを掲げた。
■ DVD First 他社が企画した作品に後から参加したのでは収益性の高い権利が得られないため、豊富なアーティスト/タレントが所属し、映像制作機能も持つ同社の強みを活かし、原作・クリエイター・キャスティングなど、映画の企画をエイベックス自らがトータルに提案。プロデューサー・ポジションに立ち、DVD化権を含め、有利な権利の獲得を目指す。
そのコア戦略として、映画化を前提とした上で、映画公開の前に連動したコンテンツのDVDを発売する「DVD First」を展開する。これは、大塚愛が主演したDVDドラマ「東京フレンズ」で採用された戦略。DVDドラマがまずリリースされ、その続編として映画版を公開。最後に映画をDVD化するというもの。 最初のDVDの段階でDVDビデオ、主題歌CD、サントラCD、グッズなどの売上げがあり、その後の劇場公開で再びそれらの売上げが増加。DVDドラマは映画の宣伝としても機能するほか、DVDと映画を同時に製作することで、撮影セットなどの固定費削減も見込めるビジネスモデルとなる。
同社は2007年夏から中村獅童と小雪のマネジメントを行なっているが、今後は同社所属の「S級音楽アーティスト/タレント」を出演させ、成功例を作り、ビジネスモデルを軌道に乗せたいという。また、東アジア向け映画への取り組みも強化。エイベックス自ら主体的に企画開発を行ない、東アジアでヒットするようなコンテンツのプロデュースに務めるとしている。
■ アニメ映画強化。ニコニコ動画も活用
アニメ事業では、テレビアニメを中心に展開しているが、今後はアニメ映画も強化。既存のDVD化を前提としたビジネスモデルも継続するが、出資比率を従来よりも抑え、コンテンツを絞り込むことで収益の安定化を目指すという。また、オリジナルコンテンツについても、有力な製作スタジオとの連携を模索。アジア市場も視野に入れた、アニメ映画の企画を推進していく。
さらに、出資するドワンゴの子会社、ニワンゴが展開している動画共有サイト「ニコニコ動画」も活用。ユーザー間やネット上での話題を創出した上で、同社のマスプロモーション力を活用し、マス層へ拡大。劇場公開作品などへ繋げたいという。劇場公開後もネット配信による収益化を行なうなど、テレビなどの既存のメディアを使わない「ニューメディア・モデル」の確立を目指している。
□エイベックス・グループのホームページ
(2007年11月16日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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