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【新製品レビュー】
“カジュアル”を追求したDVD一体型プロジェクタ
新“どこでもドーン!”。エプソン「EMP-TWD10」


9月19日発売

標準価格:オープンプライス

実売価格:15万円前後


 透過型液晶搭載のフルHDモデルが大幅な画質向上とともに30万円台まで値下がり、LCOS系/DLP系も低価格化が進むなど、2007年の最新プロジェクタは、ホームシアターファンとって魅力的な製品が多くラインナップされた。

 しかし、市場のなかでトップセラーとなっている製品は、そうした「本格シアター」モデルではない。エプソンのDVDプレーヤー一体型のdreamioシリーズだ。2007年のdreamioのDVD一体型モデルは、720pパネルを搭載した「EMP-TWD10」と、480pパネル搭載の「EMP-DM1」の2製品をラインナップ。それぞれ人気を集めている。

 いずれも、「簡単」、「手軽」をコンセプトに、DVDプレーヤーやスピーカーを一体化し、一台で簡単にホームシアターを実現できるのが特徴。つまり、「本格シアター」よりも「カジュアルにDVDを大画面で楽しみたい」というニーズに応えた製品だ。価格は720pの「EMP-TWD10」が約15万円、480pの「EMP-DM1」が95,000円前後。それぞれに80型スクリーンセットモデルが用意されている。

 720pの上位モデル「EMP-TWD10」では、180度回転機構など搭載。設置性を高めた「どこでもドーン!」と命名し、カジュアルな利用を積極的に後押し。プロジェクタ利用者の拡大を目指している。今回EMP-TWD10を試用して、エプソンが提案するカジュアルプロジェクタの使い勝手をテストした。


■ 本体にDVD、スピーカーを内蔵した「どこでもドーン」

 EMP-TWD10が通常のプロジェクタ製品と大きく異なっているのは、DVDプレーヤーとスピーカーを一体化して、一台だけでホームシアターを実現できるという点。外形寸法は、330×260×174mm(幅×奥行き×高さ)で、リビングのテーブルの上にそのまま置くことができる。重量は約6.9kg。

 720pプロジェクタとして基本的な機能は一通り搭載している。0.55型/1,280×720ドットの液晶パネルと、ランプは出力140WのE-TORLを搭載し、輝度は1,200ルーメン、コントラスト比は1,000:1。レンズは1.5倍のマニュアルズーム/フォーカスで、2mで80型の投写が可能。さらに、上下50%、左右25%のレンズシフト機能も装備している。投写サイズは30~300型。

 本体内蔵のDVDプレーヤーでだけでなく、外部入力端子も装備。背面のカバーの内側に、HDMI端子のほか、アナログRGB(D-Sub 15ピン)、S映像、コンポジット、アナログ音声の各入力端子と、光デジタル、サブウーファの各出力端子を備えている。

本体前面向かって右側にレンズを備え、下部にスロットイン型のDVDドライブを装備する 背面。カバーを開くとHDMI端子やアナログRGB(D-Sub 15ピン)、S映像、コンポジット、アナログ音声の各入力端子があらわれる
ズーム/フォーカス調整は手動式。レンズシフト機構も備えている レンズカバーも装備する 本体上面に操作ボタンを装備する

 DVDプレーヤー部は、DVDビデオや音楽CDのほか、DivXやMP3を記録したディスクの再生に対応。ただし、CPRM対応のDVD-R/RWなどは再生できない。ドライブ右脇にUSBスロットも備えており、USBメモリなどに記録したMP3やDivXも再生できる。さらに、スピーカーは10W×2chのステレオスピーカーで、ドルビーバーチャルスピーカーも内蔵。コンサート、ドラマ、アクション、サイエンスフィクションの4種類の音響効果を選択できる。

 DVDとスピーカーを一体型のdreamio初代モデル「EMP-TWD1」から、「電源→DVD→ドーン(出画)」と「ドーン」の愛称で展開してきたが、さらなる設置性の向上を図ったEMP-TWD10では「どこでもドーン!」に進化した。

 「どこでも」の由来は、プロジェクタ投射部に180度回転構造を新搭載したため。これにより、ユーザーの前方に設置する場合は、レンズの反対側にスピーカーとDVDディスクスロットが位置し、ユーザーの後方に設置する場合はレンズ側にスピーカー/DVD部が配置されるようになる。スピーカーの音声が、常にユーザーに向かって出力されるように設置できるため、より設置の自由度が高まったといえる。

上部のボタンで、音楽再生機能も簡単に利用できる 側面のスピーカーユニット部

プロジェクタヘッドが180度回転する【動画】

 実際に回転させてみても、動きは滑らかで、180度回り切るときちんと固定される。シンプルながら、使い方に応じてプロジェクタの設置の向きを変えられるというのは非常にユニークなアイデアだ。

 また、外部機器を接続しなければ、配線は電源ケーブルだけと非常にシンプル。既存のプロジェクタと比べると設置の手軽さという点では確かなアドバンテージがある。もちろん、外部入力を利用するときには、ケーブルをつなぐ必要がある。

 光学1.5倍のズームレンズを備え、2mの距離から80型投射ができるなど、狭い部屋でも十分な大画面投射が可能だ。また、レンズシフト機構だけでなく台形補正機能も備えているので、たいていの設置シーンで、問題なく大画面投射ができそうだ。

 ただし、あまり高い所にEMP-TWD10に設置してしまうと、DVDの取り出しのなどが面倒になることもある。このあたりはDVD一体型のデメリットでもある。基本的には床起きやローテーブルの上に置いて、床置き型のスクリーンに投射するというのが一番わかりやすいように思う。

 床置き型の80型スクリーンのセットモデル「EMP-TW10S」が用意されているので、テレビ替わりに気軽に使いたい場合は、こちらを積極的に選択したい。


カラーボックスの上において、80型のスクリーンに投射した 投射例(左)。反転して逆側の壁に投射してみた(右)


■ 簡単設置と大画面が最大の魅力

リモコン

 リモコンは蓄光式で、プロジェクタの付属品としてはかなりボタン数が多い。内蔵したDVDプレーヤーやスピーカーの操作のための、10キーやボリュームなどの各ボタンを備えているためボタン数が増えてしまっているのだ。ボタンレイアウト自体はシンプルでわかりやすい。

 ただし、既にプロジェクタを使ったことがある、あるいは利用中の人にとっては、「プロジェクタに向かってボリューム調整をする」という考え方がなかなか馴染みにくいかもしれない。実際、使い始めにプロジェクタでなく、アンプに向かって操作してしまうことがあった。

 まずは、「マスターアンドコマンダー」、「Mrインクレディブル」などのDVDビデオを、シアターモードを中心に観てみた。液晶パネルは0.55型/1,280×720ドットで、最新のD7/C2Fine搭載フルHDプロジェクタと比べると、画素の格子が見えやすく、また、黒浮きも感じられる。しかし、37型のフルHD液晶テレビと比べると、80型の迫力は雲泥の差。あたかも“そこにいる”かのうような実感、体感という点では、大きな差があることが確認できる。

 DVDプレーヤー部のアップスケーリング品質もしっかりしている。DVDとプロジェクタが一体化しているため、すべての操作をdreamioに向かって行なう、というのも慣れるとわかりやすい。

 また、外部機器と接続し、BDビデオ「ダイハード4」や「ドリームガールズ」、HD DVD「ザ・シューター 極大射程」などを視聴した。フルHDプロジェクタと比べて、顕著に解像感が落ちるという感じではないが、違いは確かにある。だが、ハイビジョンらしさはしっかり維持されている。40型クラスのフルHDテレビを所有している人でも、大画面を味わえるという点ではやはり全く別物の体験といえるだろう。

 ただ、D7/C2Fine搭載機や最近のプラズマテレビに慣れてくると、コントラスト感がもう一歩。カタログ値では1,000:1としているが、ピークの輝度はあるものの、黒浮きもそれなりにあるので、明暗の変化が若干単調に感じてしまう。解像度は今のままでも満足できるが、コントラストはもう少し向上に努めてほしい。

 画質モードは、「ダイナミック」、「ゲーム」、「リビング」、「シアター」、「シアター・ブラック」の5種類を用意している。

 気になったのは切り替えに時間がかかること。モード切替ボタンを押すと、約4秒ほど後に、画面が一瞬消えて切り替わる。最近のプロジェクタとしてはかなり切り替わり動作が遅い。

入力切替はやや遅めだ

 ダイナミックは輝度が最大になるモードで、黄味がやや強く出る傾向がある。ただし、比較的明るい部屋でデジタルチューナを接続して、テレビを視聴するなどの利用時には案外しっくりくる。標準モードの「リビング」にすると、色味はナチュラルになり、暗い部屋では使いやすいが、人肌などではまだ黄色が強い傾向も感じる。ただテレビ録画視聴などには一番適したモード。

 シアターでは、色温度が下がり、ぐっと落ち着いた印象となる。ダイナミックやリビングで感じた人肌の黄味が消え、自然だ。シアターブラックでは、より輝度が落ち、黒の締りが出てくるが、同時にランプ輝度がかなり落ちるため、コントラスト感が物足りなく感じる場面もあった。汎用的に使えるのは、シアターだ。

 また、入力切替はリモコンの専用ボタンを利用するが、切替時間は5~6秒とかなり遅い。DVDプレーヤーと外部入力との切り替えだけでなく、全ての入力切り替えが遅めだ。


言語設定ではDivXの言語も選択できる 音声設定。機能的にはシンプルだ



■ サウンドシステムとしての能力は高い

サイドにスピーカーを内蔵している

 また、EMP-TWD10では音質面の強化も行なわれている。左右に10W×2chのステレオスピーカーを内蔵しているほか、サラウンド機能として「ドルビーバーチャルスピーカー」を搭載。DVD再生時には、コンサート、ドラマ、アクション、サイエンスフィクションの4つのモードが選択できる。

 ドラマや、アクションモードを選択し、DVDなどを再生したが、DVD「マスターアンドコマンダー」の砲撃シーンで木片が細かく飛び散っていく感触や、跳弾の動きなどが、しっかり描き出され驚いた。音離れがよく、粉々の木片の実体感が確かに伝わってくる。

 ユニットのサイズにしては、低音も思いのほかしっかりしている。砲弾の爆発音などでは、低音がもう少し欲しいと感じることもあったが、耳をかすめる砲弾の動きや、水しぶきの細かな情報量が、小さなスピーカーからきちんと伝わってくるのには驚いた。

 音楽CDを聞くと、ややダイナミックレンジが狭く感じることもある。しかし、ロジクールのiPod用スピーカー「mm50」と比べると、力強さも低音の量感も上回っており、S/N感も高い。機能的にはCDステレオ的に使える。リモコンだけでなく、本体にも操作ボタンを備えており、再生やスキップ、ボリューム調整など、ひと通りの操作が可能だ。ただし、本体がプロジェクタのため、CDステレオとしては動作音が大きめだ。

 また、ユニット構造の工夫からか、スイートスポットが広いというのも特徴。ベッドの上に寝転んだり、座ったりと視聴位置を変えても、音場感などの変化が少なく、映画や音楽を楽しめる。また、指向性が広いため、床においても、きちんとした音場感が出るし、180cmの本棚の上において、ベッドの上で聞いてもそれなりに聞こえる。部屋のBGM的に使うCDステレオとしての能力もなかなか高い。また、USBメモリに記録したMP3ファイルやDivXファイルの再生にも対応する。

 動作音は、近づいてみると確かにそれなりにうるさいのだが、そもそも本体にスピーカーを搭載し、そこから音が出る構造なので、「プロジェクタそのもの」の騒音が気になることはほとんどない。1m以内にプロジェクタを置いて、瞬間的に無音になった場合でも、さほど気にならなかった。


■ 大画面でDVDを気軽に楽しむユニークな製品

 ユニークな回転機構や、プロジェクタとしての高い基本性能はもとより、音楽プレーヤーとしての使い勝手まで、さまざまな要素をバランス良くまとめあげたユニークな製品だ。

 720pという解像度は、最新のホームシアタープロジェクタと考えると物足りなさが残るかもしれない。単純に画質を求めるという方向であれば、同じエプソンの「EMP-TW200」のほうが魅力的。特にBD/HD DVDビデオなどで映画を見るという用途に限れば、やはり画質差は小さくはないだろう。しかし、DVDを簡単に楽しむという方向であれば、これ一台ですべてがそろうというEMP-TWD10のパッケージングのうまさは、非常に魅力的だ。

 回転させたり、ステレオとして使ったりと、さまざまな楽しみ方が用意されているのもうれしい。「使うことが楽しい」プロジェクタというのもなかなか珍しいと思う。もちろん将来的には、BDやHD DVDプレーヤー内蔵や、フルHD化/コントラストの向上などの画質向上も望みたいが、そのためには、BD/HD DVDが一般層にも手軽に手のどどく存在になる必要があるだろう。

□エプソンのホームページ
http://www.epson.jp/
□ニュースリリース
http://www.epson.jp/osirase/2007/070904.htm
□製品情報
http://www.epson.jp/products/dreamio/emptwd10/
□関連記事
【9月4日】エプソン、DVD一体型プロジェクタ「dreamio」新モデル
-「どこでもドーン!」。720pモデルは180度回転
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070904/epson2.htm

(2007年12月13日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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