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松下電器産業株式会社は10日、2008年度の経営方針記者会見を開催。液晶テレビの37型を全世界に展開し、地域によっては40型も視野に入れたラインアップの拡充を図るほか、IPSアルファテクノロジへの出資比率を高め、液晶事業の垂直統合型事業構造への転換を進めることなどを説明した。 大坪文雄社長は2007年度の総括として、掲げていた“海外2桁増販”について「北米でのスローダウンがあったものの、デジタル関連、白物家電ともに好調で、達成できる見通し」と説明。 デジタルAV、生活快適実現事業、カーエレクトロニクス、半導体・デバイスの「4つの戦略事業」についても、「4事業全体で初年度目標を達成する見込み。選択と集中、モノづくり立社についても、プラズマ/半導体工場の投資や原価低減、商品力強化などを進めた。リチウムイオン電池の不具合があり、品質問題を撲滅することはできなかったが、大きな課題として引き続き取り組んでいきたい」とし、ほとんどの目標を達成したことを報告した。 その上で、「売上高10兆円」、「ROE(資本利益率) 10%」、「CO2排出量、2006年度比で30万トン以上の削減」という2009年度経営目標、いわゆる「GP3計画」を説明。それに向けた2008年度の取り組みとして、同年度の経営目標を「売上高プラス5%以上」、「ROE 8%以上」、「CO2排出量 10万トン以上の削減」を掲げた。
■ 液晶テレビのラインアップ拡充を
2008年の事業について、液晶テレビでは37型を全世界に展開すると発表。「地域ごとに市場実態を見据えて、40型台も視野に入れたラインアップの拡充を図る」という。さらに、「液晶需要の拡大に対応するため、事業基盤の強化が必要。37型以上でもしっかりと世界に打って出るための具体的な取り組み」とし、2007年12月25日に発表した日立、キヤノンとの包括的な提携を紹介した。
大坪社長は提携にもとづいて、現在30%出資しているIPSアルファへの出資比率を高めて、子会社化することや、2009年度生産開始を目標に、新パネル工場を建設することなどを説明。ただし、「詳細が決まり次第発表する」とし、工場の具体的な建設場所や規模などについては明言を避けた。
なお、新工場では40型も視野に入れつつ、30型代メインに生産するため「それらを効率的に生産できる第7、第8世代あたりのマザーガラスを中心に考えている」と説明。 競合他社が第10世代などを進めていることに対して「競争力不足ではないか?」との問いには「確かに効率的にビハインドはある。しかし、IPSパネルは透過率が優れており、透過シートやバックライトのランプの数、倍速駆動ドライバーの数などを抑えられ、ビハインドを吸収して余りあるものがあると考えている」とした。
有機ELについては、「我々はあくまで大画面テレビ用を考えているので、2015年くらいに立ち上がるくらいではないか」と語り、早期に有機ELテレビ市場が立ち上がることはないと予測。しかし、「研究開発は進めており、液晶新工場と合わせ、2010年度以降、液晶市場が有機ELへ置き換わった場合への布石を打つ」と語った。 プラズマについては、「世界シェア25%を目指すGP3計画を実現するための中核」として、引き続き注力する姿勢を強調。尼崎に建設中の第5工場についても「投資、建設と、あらゆることが予定通り進んでいる」とした。 その上で、2008 International CESにおいて、薄さ24.7mmの50型や、150型のプラズマを発表したことを報告。「薄型タイプは天井吊り下げ、壁掛けなど、大画面テレビの可能性を大きく広げるもの。150型も含め、こうしたモデルが開発の可能になった背景には、発光効率を高める独自の新技術がある。これを高めることで大画面化、省エネ化、高画質化を進め、薄型テレビの技術革新をリードする」とアピール。
プラズマは「海外での2桁増販」にも欠かせない要素。BRICsとベトナムでの成長を加速するため、商品面では富裕層を突破口に展開。103型のプラズマを前面に押し出し、デジタルAVで牽引、白物家電で地位を固めるという手法でいきたい」と語る。 合わせて、2008年度に冷蔵庫と洗濯機の欧州販売をスタートすることも発表。2009年度以降には中国、アジア、アメリカなどの他地域への展開も推進することも明らかにした。
■ 普及価格のBDレコーダ投入へ そのほかのAV機器に関しては、Blu-ray Discレコーダの普及価格製品を投入し、市場拡大の牽引を図り、ハイビジョンムービーでは、超小型モデルなど、SDカードムービーの展開を加速する。 デジタルカメラではコンパクトタイプの差別化を進めるとともに、世界最小・最軽量で、高画質な一眼レフモデルの投入も検討しているという。 設備投資では、デジタルカメラの高画素化に対応するため、微細化技術の進展に対応した新棟を、富山県砺波市にある砺波工場内に建設する計画を発表。稼動は2009年を予定し、200mmウェア換算で生産能力は月産3万枚。総投資額は940億円にのぼるという。デジタルカメラだけでなく、ビデオカメラ、医療分野でも使用するイメージセンサを生産する。 ほかにも、カーエレクトロニクス分野では、売上げ1兆円プロジェクトの達成を、当初予定の2010年から2009年に前倒しする予定。マニュファクチャリング関連では、開発の初期段階で、徹底的に原価を詰めるプロセスを導入。商品を構成する全ての部品を張り出した「イタコナボード(製品に使われた材料を突き詰めると鉄板か粉末、つまりイタかコナに帰結することに由来)」を活用。さらなる原価低減に努める努力も怠らない。 環境負荷の低減については、業界トップの省エネ性能を持つ商品を150機種以上、同時に下位30%の商品を半減させることを2008年度の目標に設定。CO2排出量の削減も2007年度の6万トンから、2008年度は10万トンを目指すという。
大坪社長によれば、2008年の経営スローガンは「打って出る!」だという。「2008年はGP3計画の中間年度であり、これまでの成果を刈り取りながら、売上高10兆円、ROE 10%を達成できると思っていただけるような成果を残したい」とした。
□松下電器のホームページ
(2008年1月10日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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