◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
放送番組のネット利用促進データベース構築で議論
-NHKの「アーカイブス」ネット配信は12月開始


1月29日開催


 総務省 情報通信審議会は29日、「デジタル・コンテンツの流通の促進に関する検討委員会 第31回」を開催。放送番組のネット配信など、コンテンツの2次利用の促進のための「取引市場データベース」についての議論が交わされたほか、NHKのアーカイブ映像をネット配信する「アーカイブス・オンデマンド」を12月に開始することが明らかにされた。


■ 取引市場DBは「支持」されるも、コスト負担などに課題

 議論の中心となった取引市場データベースは、放送番組を中心としたコンテンツの2次利用の促進を目標とし、DVD化やインターネット配信などに係る取引のルールを整備、一元管理するもの。

 現状では、放送コンテンツの2次利用について、著作権者と利用者とが直接相対して取引する「相対取引」が中心となっている。そのため、2次利用にあたり、出演者や楽曲の作者、脚本家などそれぞれの権利者などから事前に個別に許諾を得る必要があり、手続きのコストがビジネス規模に合わず、結果、2次利用が促進できないとの問題点が指摘されてきた。

 2007年8月の情報通信審議会第4次中間答申でも、コンテンツ取引市場の導入が提案され、昨年末より検討作業が進められていた。

 慶応義塾大学の中村伊知哉教授は、検討会における議論について報告。米国のiTunesやAmazonにおけるテレビドラマなどのネット配信や、韓国の地上波放送局MBCのネット配信などの現状を確認した一方、日本では手続きが煩雑なこともあり、過去の番組の再利用が著しく制限されている。より簡単な手続きが求められる、という点では意見は一致しているという。

 そのため、許諾権を前提とした権利関連情報を集約し、取引市場データベースを構築することを議論しているが、コンテンツの2次利用の需要や、既存の放送コンテンツとの競合、さらに、一定のコスト負担を伴う市場立ち上げを望む人がいるのか、など更なる検証が必要という。

 また、社団法人デジタルメディア協会(AMD)の菊池氏は、AMD会員企業のヒアリング結果などを報告。基本的には「取引市場データベースを支持する」との回答を得ているが、実際の立ち上げについては、「コストと効果の見合いで誰も手を上げない状況」とする。

 「相対取引で“現状維持”もひとつの選択肢ではある」としながらも、「世界的な流れ、ITの流れから考えると、疑問符が残る。コンテンツの輸入大国にならないためにも、早急に協力者を募っていくことが必要」と語った。


■ NHKのアーカイブスオンデマンドは12月開始

 映画制作やコンテンツ配給、海外向け国内作品販売などを手がける東北新社からは、制作時の取引基準の形成や、販路拡大などの利点など、データベースの構想への期待が語られた。一方、「どういったデータが取引活性化につながる」や、「メリットに応じたコスト負担」、「既存の配給・配給事業者の圧迫にならないような配慮」など、問題点も指摘された。

 「Yahoo!動画」などソフトバンクグループの動画コンテンツの管理や配信事業を担当するTVバンクも、「(データベースの)トライアルには賛成」とする。「放送番組のネット視聴へのニーズは高い」としながら、現状では、許諾の複雑さなどから「制作委員会が著作権を管理保有するアニメ以外は展開できていない」という。

 また、放送事業者の代表は、「単にネット上に流れるということでなく、適法な形で、適切に流れることが肝心。動画投稿サイトのような無許諾な違法な複製物があふれるような場所への対策が必要だ。“悪貨が良貨を駆逐する”というのが現状。この段階でビジネスを成立させるのは難しい」と動画共有サイトの問題を指摘した。

 NHKは、インターネットを使ってNHKのコンテンツを配信する「アーカイブス・オンデマンド」について報告。「従来は放送法で制限されていたが、大きなハードルを越え、新しい放送法が4月から施行される。来年度の予算が執行できる段階で本格的に取り組むため、すぐにとはいかないが、12月にはサービスを始めたい」とした。

 VODによる提供本数は、「1日あたり10本から、15本」としており、一定期間は再配信を行なう。また、「スタートの数カ月後には、過去のアーカイブスのVODも考えている」という。

 視聴料金については、NHK受信料の支払いの有無に関わらず有料となる。これは、「独立会計で事業を行なうことが定められているため」という。利用環境については、パソコンだけでなく、ネットワーク対応のテレビなども予定。また、「将来的にはモバイル端末など幅広く視聴できる環境を作っていきたい」としており、「動画共有サイトに、無許諾のコンテンツがアップロードされている状況があるが、正規流通として提供するということが、非正規な流通を抑える道にもなる。テレビ画面をネットコンテンツと争奪するだけでなく、ネット側に進出して、番組を見てもらいたい」と語った。

□総務省のホームページ
http://www.soumu.go.jp/
□デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/digitalcontent.html

( 2008年1月29日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.