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日本ビクター株式会社は、マグネシウム製ユニットを採用した新スピーカーシリーズの第1弾モデルとして、ブックシェルフタイプ「SX-M3」を6月上旬に発売する。価格は1本99,750円。
2ウェイ、2スピーカーを採用したリアバスレフタイプのブックシェルフスピーカー。ウーファは14.5cm径のコーン型、ツイータは1.9cm径のドーム型。最大の特徴は、同社独自のオブリ・コーンユニットを、マグネシウム合金の振動板を使って実現したこと。振動板の中心を中央からずらすオブリコーンは、中心から周辺部までの距離を変えることで、振動板で発生する高域の共振が分散され、高域特性のピークを無くせるという利点がある。 音速が速く、軽量で適度な剛性を持つことから、金属系の振動板を採用するスピーカーは多いが、金属振動板には内部損失が小さく、癖のある音になりやすいというデメリットがある。ビクターではそれを前述のオブリコーンで改善していたが、オブリコーンの良さをさらに引き出すための素材として、新たにマグネシウムを採用したという。
マグネシウムはアルミニウムの2/3と軽量でありながら、音速や剛性は同等。なおかつ内部損失は2倍以上あるという。軽量であることから、アルミニウム振動板よりも厚さを1.5倍とし、剛性は3倍になっている。これをオブリコーンとすることで、軽くて強く、付帯音が少なく、癖の無い音のユニットを実現した。
さらに、高域から低域まで一体感のある音色とするため、ツイータにもマグネシウムを使用。ドーム型だが、中心をずらした“オブリドーム”形状を採用した。特殊形状であるユニットを、メカニカル・ロス無くドライブするため、DDOD(ダイレクト・ドライブ・オブリドーム)構造を採用。ドームの周囲にボイスコイルボビンをまきつけた一体成形を採用。「澄み切った高域、ベールをはぎ取った自然な音を実現した」という。
ウーファの磁気回路も構造を見直し、交流磁束により発生する歪みを低減するため、銅キャップやアルミショートリングを搭載。キャンセルマグネットを搭載せずに防磁をやめ、磁気ギャップのリニアリティを改善するためのT型ポールも採用。「防磁タイプでは無くなるが、再生音のクオリティを追求した」という。 ウーファユニットの固定方法も見直し。エンクロージャ内部に木製のベースを内蔵しており、ユニットの背後から強力にマウント。ブックシェルフながら、重心が低く、音像定位が安定した再生が可能だという。ただし、ベースはエンクロージャーと一体化しているため、磁気回路の振動がそのままエンクロージャーに伝わり、再生音にキャラクターが乗ってしまう。 そこで、背後に向かって傾斜のあるエンクロージャデザイン「リア・テーパード・キャビネット」を採用。平行面を減らすことで定在波を減らしたほか、側板にサウンドバーと呼ばれるチェリー無垢材を使った補強を入れ、振動を分散。さらに、側板そのものにMDFをチェリー突き板でサンドイッチした響きの自然な素材を採用し、“鳴き”が生じても極力再生音に影響しない音になるという。
底面には鋳鉄製ベース/フットを採用し、振動がスタンドに伝わることを防いでいる。全体の再生周波数帯域は50Hz~60kHz。クロスオーバー周波数は3.5kHz。インピーダンスは6Ω。定格入力は30W、最大入力は120W。外形寸法は217×276.5×358mm(幅×奥行き×高さ)。重量は11.5kg。 なお、専用スタンドも6月上旬の発売と同時か、それ以降にリリースする予定だという。
■ 名機「SX-3」のDNAを受け継ぐ ホームAV事業グループ AVシステムカテゴリー 商品企画部 商品企画グループの馬渡重光主事は、同社スピーカーの歴史を振り返り、'74年に発売された「SX-3」を紹介。JBLやアルテックなど、高能率なホーンスピーカーが人気を集める当時、白木のエンクロージャーとクルトミューラー製コーンユニットを搭載したSX-3は革新的なモデルとして高い評価を得たが、販売開始当初の売れ行きは芳しくなかったという。 しかし、口コミで徐々に人気が広まり、その後のSX-500、SX-L5、SX-V1などへ繋がったほか、正統後継モデル「SX-500DE」(ドルチェ・エテルノ)は現在でもラインナップされるなど、同社を代表するスピーカーでもある。「SX-M3」は型番からも、「SX-3」との関係を強く意識させるが、馬渡主事は「原音探究を掲げ、スピーカー自体の歪みを無くすというコンセプトは、SX-3と同じ。白木やクルトミューラー製コーンなど、時代の最新技術を取り入れる姿勢も継承している。M3も最初はなかなか認知されないかもしれないが、音を聞いてもらえばその良さがわかっていただけると思う」と語る。ちなみに“M3”には「ミュージック」、「マグネシウム」、「メカニカルベースマウント」という意味が込められているという。
ターゲットとするユーザー層は団塊の世代より少し若い、50歳前後。「定年までにまだ時間やお金に余裕があり、'70~'80年代のオーディオブームや、ビートルズ来日などを体験。生活の中に音楽がある人達」だという。 今後はシリーズ展開を予定しており「今回のモデルの反響にもよるが、年内に次のモデルを投入したい」という。どのような構成のモデルになるかは未定だが、フロア型やトールボーイ型となるとウーファ用のユニットがどうなるか気になるところ。「マグネシウムが大型システムのウーファに適しているか、別の素材を使ったほうが良いかなども含め、現在検討している段階」とのこと。 また、同社は2月に行なわれた「A&Vフェスタ2008」において、今回のスピーカーの試作モデルを展示すると同時に、デジタルアンプDEUS(Digital Emotional Universal Sound)を「ハイエンドまで進化させた」という単品アンプを参考展示している。新スピーカーシリーズと組み合わせるアンプとして、同モデルの製品化も目指しているという。
□ビクターのホームページ
(2008年5月15日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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