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シャープのBDレコーダに込めた「純」へのこだわり
-AVCトランスコーダの「そのまま高画質」とAQUOS連携


AVシステム事業本部 デジタルメディア事業部 商品企画部 伊藤主事

7月1日発売


 この夏のデジタル家電商戦の主役となりそうなのが、Blu-ray Discレコーダ。GfKによるDVDレコーダ市場調査でも、Blu-rayの比率が5月に入り台数ベースで3割を突破、金額ベースでは5割を超えている。今夏商戦から、BDが本格的な普及期に入るといっても間違いはなさそうだ。

 しかし、現在のBDレコーダ市場では、ソニーと松下電器がともにシェア40%を超えて推移しており、2強体制ともいえる状況。その後に続くシャープは10%強となっている。

 シャープは昨冬以降、初心者をターゲットにしたBD-RE単体レコーダ「BD-AV1/AV10」と、HDD内蔵の上位シリーズ「BD-HDW20/15」の2方向からのBD普及を図ったが、特にHDD内蔵モデルの発売が遅れたことなどから、伸び悩んでいた。

 2008年に入ってHDDモデルが発売されてからは、シャープのシェアも10%後半まで拡大しつつある。しかし、そのBD-HDW20/15も、ソニー、松下の競合製品に比べて、機能面での物足りなさが残った。それがMPEG-4 AVC/H.264変換による長時間録画機能が無いという点だ。AQUOSとの親和性など、シャープならではの機能は有しているものの、やはり昨冬の一大トレンドともいえるAVC録画機能が無いため、競争力にかける印象を残した。

型番 BD-HDW30 BD-HDW25 BD-HDW22
仕様 地上/BS/110度CSデジタルダブルチューナ
MPEG-4 AVC/H.264録画対応
「AQUOS純モード」搭載
HDD容量 1TB 500GB 250GB
発売日 7月1日
店頭予想価格 28万円前後 18万円前後 15万円前後

 だが、7月1日に発売予定のBD-HDW30/25/22では、AVCによる長時間録画機能を搭載。さらに、AVC変換時のデータ放送記録や、AQUOSとの連携による画質向上など、「シャープならでは」の機能が盛り込まれ、大幅に魅力を増している。

 生まれ変わったシャープの「AQUOSブルーレイ」。そのこだわりを、商品企画を担当したAVシステム事業本部 デジタルメディア事業部 商品企画部 主事 伊藤公宜氏に伺った。

BD-HDW30。前面パネルの仕上げが下位モデルとの違い BD-HDW25


■ “トランスコード”の特徴を活かしたAVC録画「高画質純録り」

 新AQUOSブルーレイの最大の特徴といえるのが、MPEG-4 AVC/H.264による長時間録画だろう。HDW20/15では、地上/BS/110度CSデジタル放送をMPEG-2 TSでそのまま記録(DRモード)するのみだったが、新モデルではAVCによる録画に対応。AVC用の録画モードとして、ビットレートが約12Mbpsの「2倍モード」、約8Mbpsの「3倍モード」、約4.8Mbpsの「5倍モード」が用意された。2倍、3倍モード時にデータ放送も記録するというのもシャープならではの特徴だ。

 一見すると、ソニーや松下電器のBDレコーダと同様の機能のように思える、しかし、他社のレコーダがAVCエンコーダなのに対し、シャープのBD-HDW20/15では「トランスコーダ」を採用している点が大きな違いだ。

トランスコーダの搭載が、他社製BDレコーダとの大きな違い

 トランスコーダを採用した理由は、「画質」と「データ/AAC音声をそのまま記録できる」という2点が挙げられる。

 まず「画質」については、他社で利用しているエンコーダの場合、送出されたMPEG-2 TS信号を一度完全に復元し、ベースバンド信号とした後にMPEG-4 AVC/H.264にエンコードする。しかし、トランスコードでは、MPEG-2 TS信号を復元しながらAVCに変換するため、信号処理が一段少なくて済み、画質劣化を抑えられるという。

 また、このAVC変換時に、放送局のMPEG-2 TSエンコーダによる処理情報、具体的には動きベクトルやレート配分、Iピクチャなどを引き継いで変換できるため、元信号に忠実な処理が可能という。これが画質面の大きなメリットというわけだ。

 さらに、映像信号以外は変換しないため、AVC記録モードでの録画時でも、音声はAACのまま記録可能。データ放送も変換無くそのまま記録できる。これが、シャープがトランスコーダを採用した大きな理由だ。なお、このトランスコーダは他社との共同開発となっている。東芝のDVDレコーダ「RD-X7」などもAVC変換用のトランスコーダを採用しているが、これらとも全く別のLSIを搭載しているという。

 トランスコード方式の採用による欠点としては、アナログ放送をAVC変換できないという点。同様に、アナログビデオ入力のAVC変換も不可能となっている。トランスコーダではMPEG-2 TSの信号以外はAVC変換できないためだ。

 伊藤氏は、シャープのBDレコーダの位置づけを「デジタル放送をそのまま録画する機器」と説明する。ほかの多くのレコーダでは省略してしまうデータ放送を、“そのまま録って再生する”ことにこだわっているのも、こうした考え方からのものなのだという。

AVC変換時でも、音声をAACのまま、データ放送をそのまま記録できる

 放送波を「そのまま録る」。これがシャープのレコーダのコンセプトで、例えAVC録画変換機能が入ったとしても、その考え方は揺るがない。AVCによる長時間録画という特徴を入れながらも、音声やデータはそのまま。シャープではこのコンセプトを「高画質純録り」と命名している。

 なお、BD-HDW30/25/22では、BDやDVDへの直接録画には対応せず、HDDへの録画後に、BD-R/REなどにダビングする必要がある。シンプルな使い勝手を実現するために、まずはHDDに録画という操作体系に統一したという。

 HDDからBDへダビング時には、AVCの2倍、3倍モードでのダビングが可能。ただし、5倍モード変換しながらの、BDへのダビングはできず、HDDに5倍モードで録画した番組のみ、BDに5倍モードのまま高速ダビングができる。5倍モードではデータ放送を省略する処理が必要となるため非対応としたという。

ハイビジョンジャストダビングを搭載

 さらに、ディスクの残量に合わせて、10段階の画質から最適なビットレートを自動選択してBDにダビングする「ハイビジョンジャストダビング」を装備。この機能も他社製品へのアドバンテージとして訴求している。

 AVC変換による長時間録画という、スペックを得て、競争力を高めたBD-HDW22/25/30。しかし、システムに高負荷がかかるAVC録画にはまだ改善しなければならない点もある。

 まず、AVC録画中にはBDビデオの再生はできない。また、デジタル2番組録画時に、1番組をAVCで、もう1番組をDRモードで録画している場合、追っかけ再生などはできず、番組視聴以外の操作はできない。なお、DRモードで2番組録画している場合は、追っかけ再生が可能だ。ソニーのBDレコーダなどでも、AVC録画時に多くの機能制限があるが、このあたりは今後の課題といえるだろう。


■ 「純モード」でAQUOS連携を積極アピール

一発天気・ニュースを搭載

 録画機能についても地道なアップデートが行なわれている。新たに「高速キーワード検索」機能を追加し、キーワードからの番組検索に対応。さらに、GUIもオーバースキャン領域をなくした新しい高精細番組表や操作画面としている。

 また、任意のニュース番組を自動で更新録画して、ワンボタンで最新ニュースを呼び出せる「一発天気・ニュース」機能も装備。加えて、録画番組を28のサムネイルで表示する「見どころ28」を搭載。選択した録画番組を時間ごとに28等分した小画面で一覧表示するもので、一時間番組の場合約2分ごとにサムネイル化、サムネイルを選択することで、番組の任意の地点までスキップできる。なお、ダビング10については、アップデートにより対応予定。


高速キーワード検索を搭載 見どころ28

AQUOSとの連携で「純モード」に

 また、新「AQUOSブルーレイ」で強力にアピールしている点が、AQUOSとの連携。新たに、テレビ/レコーダをAQUOSでそろえることで最適な画質が得られるという点を訴求するため「AQOUOS純モード」と命名し、テレビ/レコーダのセット利用を呼びかけている。

 これはHDMIでファミリンク対応のAQUOSと接続した際に、ガンマやノイズリダクションをAQUOSにあわせた設定値にして出力するというもの。ファミリンク対応のAQUOSであれば、設定値はすべて共通となっているという。これ以上の詳細は「秘伝のタレ」として明らかにしていないが、AQUOSで一番自然な画質モードとして、利用を推奨している。

 同社のBDレコーダでは、HDMIケーブルを同梱していることもあり、HDMI接続率がすでに9割を超えている。また、シャープ製レコーダのユーザーのうち、約7割がテレビとしてAQUOSを使っているなど、セット利用率が高いという。そのため、伊藤氏も「AQUOS同士」の連携の強化を今後の課題としてあげる。

 現在の「AQUOSファミリンク」は、HDMI接続したテレビやラックとの連動が中心となっている。しかし、他社のAVアンプなどでもファミリンク対応を謳う製品は増えているほか、レコーダには、赤外線「IrSS」を使ったデジタルカメラ連携機能なども搭載しており、こうした周辺機器連携の強化が今後の目指す方向のひとつだという。

 また、i.LINKも引き続き搭載し、同社のハイビジョンレコーダやAQUOSからの映像入/出力に対応。ただし、i.LINK経由ではAVC録画したタイトルを出力することはできない。これは、i.LINKからAVC記録の番組を出力する規定が無いためなのだという。しかし、今後もしばらくはi.LINKの搭載は続けていく予定という。


■ 先進的な消費者には「エコ」も性能

 また、新しい提案としては「エコモード」の搭載があげられる。近年、AV機器においても「環境性能」に注目が集まっているため、各社が製品リサイクルや、消費電力削減をアピールしている。

専用スイッチでエコモード

 しかし、新AQUOSブルーレイのエコモードのアプローチはかなり変わったものだ。本体前面の右端に専用のスライドスイッチを用意。これでONにすることで、エコモードに入る。通常のBD-HDW22/25/30では、待機時の消費電力は1Wだが、エコモードでは0.3Wに低減される。

 エコモードでは、常時動いているブースターの動作を抑制するなどの工夫により待機時の消費電力を低減する。ただし、エコモード時にできることは録画予約の実行のみで、リモコン用の赤外線受光部などもOFFになってしまう。そのため、操作を再開する場合は、エコモードのスイッチをOFFにスライドさせる必要がある。

 消費電力が削減できるとはいえ、スイッチを誤ってONにしてしまった場合、リモコンが効かないため、故障と判断してしまう人もいるのではないか? あるいはサポートへの電話などが増えるのではないか、という危惧も残る。

 シャープでは、このエコモードについて、「利用イメージとしては、テレビの主電源を切る感覚」と位置づけている。伊藤氏は、「テーブルタップでも、スイッチでON/OFFできる製品を使われている方も多い。その代わりにも使っていただける。意識の高い方に使っていただければと思っています」と語る。

 こうした環境性能の高さ、消費電力の少なさに着目する消費者が増えているだけでなく、「販売店様の意識も非常に高い」という。そのため、「意識の高い層」に対して、環境性能をアピールしていくことも、このエコモードの狙いなのだという。

 昨冬のBDレコーダ商戦に出遅れたシャープだが、夏商戦に向けて強力なラインナップを用意してきた。もともと、レコーダ市場全体では30%を超える台数シェアを有しているだけに、強力なブランド力を持つAQUOSとの連携を活かした展開が、この夏商戦には期待できそうだ。

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/080519-b.html
□製品情報
http://www.sharp.co.jp/products/av/bd/prod01/index.html
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080519/sharp3.htm
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-シャープが“機能限定”BDレコーダを投入する理由
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071030/sharp.htm

( 2008年6月9日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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