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株式会社デジタルドメインは、フランス・Cabasse(カバッセ)の同軸4ウェイスピーカーハイエンドモデル「La Sphere」(ラ・スフィア)を9月1日に発売した。専用のチャンネルデバイダがセットになっており、価格はペアで1,400万円。ブラックパールとパールの2種類を用意する。
デジタルドメインの静電誘導トランジスタ採用DCアンプ「B-1a」(100万円)と組み合わせたシステムとして販売され、ドライブするためには「B-1a」が最低4台必要になるため、システムでの最低価格は1,800万円。デジタルドメインでは、一部のユニットをBTL接続で駆動する6台でのドライブを推奨。その場合は合計2,000万円のシステムとなる。
デジタルドメインでは5月に、同社のマルチビットSACDトランスポート「2930DSP-4」(38万円)とともに、Cabasseのフロア型スピーカー「Karissima」(カリスマ/ペア240万円)の日本発売を発表。今回の「La Sphere」はそれに続く、Cabasseのスピーカー第2弾となる。
■ 点音源を追求 '50年代から真空管アンプや3ウェイスピーカーなどを手掛けてきたCabasseは約60年の歴史を持つフランスのメーカー。'93年に発売した、3ウェイ同軸ユニットと三角錐の低音用エンクロージャを組み合わせた「Atlantis MC001」など、同軸ユニットの開発や使いこなしに定評があり、理想的な点音源も追求しているという。 「La Sphere」も、タコや宇宙人と思えるような独創的なフォルムが目を引くが、同軸ユニットを活用することで理論的な点音源を追求した結果、生み出されたフォルムになっている。
上部の球形部分は4ウェイの同軸ユニット。前面にある白黒の部分の再内周がドーム型の28mm径ツイータで、振動板にはポリプロピレンを使用。その周囲を囲む白いリング状のユニットが10cm径のミッドレンジ。黒いエッジ部を挟み、その外周にあるのが21cmの中低域ユニット。中低域ユニットには、独自の「Rohacellフォーム熟成型」を使って製造される、軽量で剛性の高い「Duocell」振動板を使っている。
ここまでが1つの3ウェイ同軸ユニット「TC23」。その背後に、55cm径の大型ウーファ「55ND46」を配置している。具体的には、ウーファの前にフレームを設置し、そこに「TC23」を取り付けて4ウェイの同軸としている。固定用アームの形状は、音質を歪ませないように設計されているという。
点音源に近づけるためには、各ユニットからの音を合わせて、歪みなく放射させる音響レンズの開発が必要になる。そこで様々な試作を経て、音の回折効果を最小限に抑えた、呼吸球デザインのフロント部が完成。表面には回折を抑えるための、波打つような模様が作られている。 エンクロージャには、ダンピング用エラストマーと複合素材からなるキャストサンドイッチ構造を採用。球形であるため、定在波が発生しないのが特徴。フエルトを内張りすることでダンピングを行なっている。内部の木製の骨組みには、造船技術を導入。真後ろにボルトを備えており、全面の音響レンズを強固に締め付けることで、全体に圧力をかけ、強度を高めているという。 デザイン性の高いスタンドにも、回折効果を避けるという狙いがある。材料はアルミダイキャスト。ボトムプレートにウエイト付の複合材を使っており、アルミとエラストマーによるサンドイッチ構造も取り入れ、高いダンピング特性を確保したとする。 スピーカーターミナルはスタンドのベース部後方に用意。ネットワーク内蔵しておらず、4つのユニットを個別のアンプでドライブする方式を採用。システム全体の再生周波数は20Hz~24kHz。外形寸法は70×70×140cm(幅×奥行き×高さ)。重量は100kg。
ネットワークを内蔵しない代わりに、デジタルサウンドプロセッサ内蔵のチャンネルデバイダを同梱している。フィルタモジュールと信号処理ソフトウェアで周波数分割と各チャンネルの位相/レベルのデジタル制御を行なうもので、各ユニット用に遅延回路を通して再生。リスニングポイントに届いた時点で、各ユニットから放出される直接音と反射音の完全な位相調整ができるという。 組み合わされるデジタルドメインのDCアンプ「B-1a」は、独自の静電誘導トランジスタ(SIT)を使ったステレオアンプで、定格出力は150W×2ch(4Ω)。そのため、2台(4ch)あれば、「La Sphere」のスピーカー(片方)をドライブできる。「B-1a」はBTL動作も可能で、300W(4Ω)のアナログアンプとしても動作できるため、ウーファユニットなどを1台の「B-1a」でドライブすることで、より高品位な再生音が得られるという。その場合は片方のスピーカーを3台でドライブすることになるため、前述のように左右のスピーカーで推奨合計6台のアンプが必要となる。
なお、これらのアンプを使った接続や、設置部屋ごとにデジタルサウンドプロセッサの設定を最適化する必要があるため、技術者がユーザー宅を訪問してのチューニング作業が必要になる。Cabasseの支配人であり、営業担当でもあるクリストフル・カバス氏によれば「部屋の様々なポイントで測定/調整を行なう必要があるため、設置作業は1時間で終わることもあれば、1日かかることもある」という。
■ 点音源を追求 発表会で行なわれたデモ再生では、デジタルドメインのマルチビットSACDトランスポート「2930DSP-4」(38万円)、デジタルボリュームLSIで音量調節も可能なマルチビットDAC「D-1a」(150万円)/「D-1b」(100万円)、6台のDCアンプ「B-1a」(1台100万円)などが用意された。 何より印象に残るのは、55cm径の大型ウーファが奏でる豊かな低音。パイプオルガンのCD再生でペットボトル内のお茶が振動するほどの迫力だが、そんな低音と中高音域の繋がりが非常に良いことに驚かされる。
前面に広がる音場の中で、非常にまとまりの良い音が奏でられる。一般的なフロア型のマルチウェイスピーカーでは、沈み込む低音と突き抜ける高音が分離して聞こえることが多いため、“低域/広域の伸び”について試聴メモを書きたくなる。La Sphereの場合は全ての音が同じ場所から聞こえるため、“低域と広域”というように部分的に聞くことを、無意識のうちにやめてしまう。一言で言うと“生っぽく、自然な再生音”と表現できるだろう。
回折を抑えた点音源ということで、“立体的な音場”と“シャープな音像”を予想していたが、どちらかというと無指向性のような広大な音場が広がり、ボーカルの音像も大きめで輪郭よりも音圧を重視した再生音だ。 この点についてカバス氏は、「今回はデジタルサウンドプロセッサの設定などを、あえて工場出荷状態のままにしている。デモ再生で、参加していただいた全ての人に同じ音を届けることを目的としたためであり、発表会場に最適化させるとリスニングポイントが限定されてしまうからだ」と説明。プロセッサによるチューニングに俊敏に反応する、システム柔軟性の高さアピールした。 デジタルドメインの持田康典取締役会長は、Cabasseとの提携関係について、「追求している技術や、理想とする再生音が良く似ているため、組み合わせても双方のキャラクターが主張したり、その色に染まったりせず、自然な再生音が実現できるため」と説明。
また、デジタルドメインが開発中であり、「A&Vフェスタ2008」でも展示されたフロア型同軸スピーカーにも触れ、「技術面でも交流することで、デジタルドメインのスピーカー開発にも良い影響が出ればと考えている。今回のLa Sphereは1台700万円という高価なシステムだが、デジタルドメインでは100万円程度のスピーカーを開発したいと考えている」という。また、La Sphereの販売にあたっては、海外での販売時にも組み合わせとしてデジタルドメインのアンプを提案してもらうなどの協力も行なうという。
□デジタルドメインのホームページ
(2008年9月1日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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