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松下、有識者を迎えたグローバルアドバイザー会議を開催
-「課題はスピードとアグレッシブさ」と大坪社長


大坪文雄社長

9月10日発売


 松下電器産業株式会社は、9月11日、第1回グローバルアドバイザー会議を、東京・有明のパナソニックセンター東京で開催し、その成果やグローバル戦略の考え方について、同社・大坪文雄社長が言及した。

 グローバルアドバイザー会議は、社名変更、ブランド統一を機に、経営のさらなるグローバル化を目指し、国際的、経済的な視点で、各国政治、経済の実状などに詳しいアドバイザーから事業戦略に対する意見を得ること、一流の見識を持つアドバイザーとの交流を通じて、グローバル人材の育成を一層強化することを目的としており、同社が推進している中期経営計画「GP3計画」における海外2桁増販の目標達成や、経営のグローバル化の加速に役立たせるという。
会場の様子

 新興国市場を含む5か国から、4人のアドバイザーと、1人のオブザーバーが出席。松下電器からは、大坪社長をはじめ、海外事業を担当する経営幹部のほか、30代を含む中堅社員が参加した。

 「当社の参加者の平均年齢は45歳に満たない。5年、10年先に、本格的なグローバルパナソニックを実現する上で、将来の力になる若い社員に参加してもらった」(大坪文雄社長)という。

 午前9時からは、アドバイザーによる講演を含むメイン会議を開き、その後、午後2時過ぎからは、世界経済の構造変化に対し、企業がとるべき対応などをテーマにしたパネルディスカション、午後4時からは地域別ディスカッションが行なわれた。メイン会議は、当初の予定時間を大幅にオーバーする形で進行した。

 アドバイザーには、全米フットボールリーグ(NFL)のコミッショナーを務めたポール・タグリアブ氏、経済学博士でありインド工業省次官を務めたアジャイ・ドゥア氏、ブラジル開発商工省大臣を務め、スペインのテレフォニカ社の取締役を務めるルイス・フェルナンド・フルラン氏、日本銀行総裁を務めた福井俊彦氏の4人。

 オブザーバーには、エリツィン氏、プーチン氏をロシア大統領府長官として支え、今年6月までロシア最大の電力会社統一エネルギーシステム(UES)の取締役会長を務めたアレクサンドル・ヴォローシン氏。

 また、コーディネータとして、橋本内閣、小泉内閣の総理大臣補佐官を務めた岡本アソシエイツ代表取締役の岡本行夫氏がパネルディスカッションの進行役を務めた。

 なお、メイン会議での講演内容は以下の通り。

 ポール・タグリアブ氏「大統領選を控えた米国の政治経済動向、米国の日本人観の変化について」、アジャイ・ドゥア氏「インドの政治、経済情勢、と今後2~3年の展望」、ルイス・フェルナンド・フルラン氏「世界の中におけるブラジル経済。その強みと弱み」、福井俊彦氏「躍動的な世界経済における日本経済の展開」、アレクサンドル・ヴォローシン氏「ロシア経済の改革経緯、現在の課題と将来展望」、岡本行夫氏「現在の世界情勢、とくに新興国の経済成長がもたらす世界経済への影響」。

 大坪社長は、「GP3計画では、海外2桁増販の目標を明確に打ち出し、新興市場における体制づくりに取り組んでいる。BRICs + V(ベトナム)には、本格的に取り組んでまだ1年だが、第1四半期実績で前年同期比30%増を超える成長を示し、それなりの手応えを感じている。しかし、成長率は高くとも、経営への影響はいくばくかしかない。また、コンペチターであるサムスンやソニーに比べると、伸び率が抜きんでているのかというと、そうはなっていない。まだまだ課題があり、十分ではない」と指摘。

 「もっとグローバルに発展するということを考えた場合、これまでの積み上げだけでは、努力しても時間がかかる。違う視点でのアプローチが必要だと感じた。昨年4月に、岡本氏に相談し、知恵を借りながら人選をしてきた。昨年6月初めに人選についてコンセンサスが取れ、1年以上をかけて、今回の会議を開催することができた。本格的なグローバルエクセレンスを目指す上で、グローバル経営を進める上で、効果があると考えている」などとした。

 また、「経営環境が急ピッチでグローバル化し、市場がひとつになりつつある。本格的な一流のアドバイザーを集め、貴重なコメントを得ることで、社内に対して、マインドや目線を世界に向けるきっかけとし、世界に打って出ることを浸透させたい。グローバルな松下を本格的に目指すんだ、ということを社内に植え付けなくては、GP3の根底が不安定なものになる。今後5~10年の本格的な成長、本格的なグローバル化に向けて、目線の高いガイドラインを自ら構築していく狙いがある」と、同会議が将来に向けた布石であることを示した。

 一方、今回の会議を通じて、「地球そのものを広い視点で見ることができた」と前置きし、「人口動態の変化に伴い、20~30年後の新興国の動向や世界の経済変化がどうなるのか、という人口動態と経済力の関係について、また、水や森林、鉱物を含めた資源の問題をマクロで捉えることや、価値観の違うグローバル人材を取り込むことで、それをどう経営に生かすかという多様性の問題について考えることができた」と、印象に残ったことを語った。
5カ国から4人のアドバイザーと1人のオブザーバーが参加

 さらに、「アドバイザーからは、パナソニックに対して、技術力、商品力には疑いを持っていない。しかし、これをビジネスに変えることに課題があると指摘された。ストレートに、How to make moneyという言葉を示された。技術力、商品力という点では、やれるポテンシャルがある。それは自覚していたことでもあり、アドバイザーから異口同音に指摘された。だが、それを経営の数字、利益に変えていくためには、経営の仕方において、大きなブレイクスルーをしなくてはならないのではと感じた」とした。

 加えて、大坪社長が名指ししてあげたサムスン、ソニーとの差異については、「ライバルメーカーに比べて、技術レベルでのポテンシャルは大いに自信を持っている。そして、持てる技術を、いかに消費者目線で、商品に置き換えるか、消費者目線で提供しているか、という点では、コンペチターよりも一日の長があると確信している。だが、課題といえるのは、マネジメントのスピード、アグレッシブさである。必要な時にリスクを越えて、行動ができるかどうか、ここに課題があると認識している」と語った。

□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/index3.html
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn080901-1/jn080901-1.html

( 2008年9月11日 )

[Reported by 大河原克行]


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