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HDMIの切替速度を向上する「InstaPort」とは
-約1秒でHDMI入力を切替。2009年には対応製品も



 搭載製品の累計出荷が1億台を越え、デジタル映像/音声伝送インターフェイスの標準といえる地位を占めるに至ったHDMI。薄型テレビの普及に伴せ、大画面/高画質化に対応できるデジタルインターフェイスが要求されていたこともあるが、それだけでなく、HD解像度の映像と音声を1本で伝送できる簡便さと広帯域の伝送能力、HDCPなどデジタルコンテンツ向け著作権保護への対応、PC用に一足先に普及していたDVIとの互換性など、HDMIの普及には多くの理由が挙げられる。

HDMI入力の高速切替が市場から求められている

 しかし、そのHDMIにも弱点と呼べる点がある。それが、HDMIポート間の切り替え速度が遅いということ。この問題は、ユーザーや小売店からも指摘されており、テレビメーカーも様々な手法を用いて高速化に努めてきた。

 しかし、現在のHDMIでは、この高速化には限界があった。それを解消するのが、Silicom Imageが開発した「InstaPort」と呼ばれる技術だ。そのInstaPortへの取り組みと、同社の今後の展開について、シリコンイメージ ジャパン株式会社代表取締役社長の竹原茂昭氏に聞いた。



■ テレビ側の対応だけでHDMIの高速切替が可能に

HDMI入力を瞬時に入力切替可能に

 InstaPortは、HDMIポート間の切り替え速度を改善する技術。従来は4~7秒ほどの切り替え時間を要していたが、これを約1秒までに短縮するという。

 従来のHDMIでの切り替えを遅くしていた要因は、著作権保護技術「HDCP」の認証にある。HDMIではHDCPをサポートし、これによりBlu-ray Discなどのデジタル伝送の著作権保護を実現している。

 従来のHDCPの扱いでは、入力ポートを選んだ段階でテレビ側で接続を認識し、ソース機器の出力設定を決定、HDCPの認証を行なっていた。この認証時に、出力機とディスプレイ側で鍵情報のやりとりを行なった後、映像の出力/表示が実行される。この相互の認証に多くの時間を要していたという。

ディスプレイが起動後、常にHDCP認証をバックグラウンドで実施することで、高速切り替えを可能とする

 対してInstaPortでは、テレビやソース側の機器を立ち上げた段階で、全てのHDCP認証をバックグラウンドで同時に実行。ユーザーが入力ソースを選択する時には、既に認証作業を終えているため、切り替えを高速に行なえる。そのため、InstaPortを導入することで、3~6秒程度の入力ポート切替時間短縮が図れるという。

 InstaPortを実現するための必須条件は、ディスプレイ機器側に対応LSIを搭載すること。一方で、出力機器側は特別な対応をする必要はないという。

 InstaPort自体は「HDMI 1.3の規格内での改良で実現されている(シリコンイメージ ジャパン株式会社 代表取締役社長 竹原茂昭氏)」とのことで、非対応の機器と接続しても、互換性問題は生じない。ただし、認証時の鍵情報の扱いにSilicon Image独自のノウハウ/技術が用いられており、これらをHDMIの標準規格として導入する予定はないという。

 そのため、InstaPort対応テレビや機器には、Silicon ImageのLSIの搭載が必要となる。対応製品向けのロゴプログラムも同社が独自に展開。テレビ本体やパッケージ、カタログなどで、ロゴを付記し、InstaPort対応/非対応を確認できるようにする。

 Silicon Imageでは、デジタルテレビ向けのポートプロセッサ「SiI9287」とインプットプロセッサ「SiI19251」、AVアンプ向けの「SiI19261」をラインナップ。7月よりサンプル出荷を開始しており、2009年の初頭には対応製品が発売される見込みだ。実際にSamsungが製品への導入をいち早く発表しているほか、大手メーカー10社のうち9社が評価を進めているという。

 なお、出力機器とディスプレイ機器の間に、AVアンプやHDMI切替機を利用する場合は、高速入力切替を実現するためにそれらの機器でもInstaPortをサポートする必要がある。

レシーバLSIを搭載するだけでInstaPortを実現できる


■ 小型機器向けのデジタルAVインターフェイス「MHL」

MHLの概要

 また、同社が現在推進しているのが「MHL(Mobile High-Definition Link)」と呼ばれる携帯機器向けの次世代デジタルインターフェイスだ。HDMIやDVIと同じTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)技術による映像/音声伝送を可能としながら、ピン数を減らして端子を小型化することを目的としている。

 HDMIでもミニ端子(TypeC)が策定され、近年では携帯電話やデジタルカメラなどでの採用が進んでいる。しかし、特に欧州の携帯電話メーカーなどからは、より小さいコネクタかつ柔軟なピン設定が可能なコネクタが求められているという。


MHLの必要性 1080/60iの映像伝送やCEC機能をMHLで実現

 携帯電話や携帯機器では、実装面積に制限があるため、各社が独自の端子にUSBや充電用、データ転送用などのピンを独自に配したいわゆるマルチコネクタが必要となる。しかし、HDMIでは19本のピンアサインがきっちり定められているため、こうしたマルチコネクタの中でHDMIの機能を実現することはできず、専用端子に加え、HDMI端子を別途用意する必要があるという。

InstaPort対応の「SiI9287」もMHLに対応

 そこで、少ないピン数でもHDMI相当のデジタルビデオ/音声出力を可能とする新しい規格が求められていた。その要求に応えるものがMHLだ。

 HDMIの19ピンに対し、MHLでは5ピンで映像/音声伝送とCEC(Consumer Electronics Control/機器制御)や充電を実現可能とする。1080/24p、60i、720/60pのHD映像伝送に対応できる。

 ただし、HDMI入力対応のテレビなどにそのまま接続することはできず、ブリッジチップが必要となる。例えば携帯電話にMHLを装備し、クレードルとMHL接続。クレードルにブリッジチップとHDMI出力を装備し、携帯電話の映像をHDMI出力するなどの応用が見込まれている。

 また、InstaPort対応のポートプロセッサ「SiI9287」などでは、HDMIとMHLの双方に対応するため、同チップ搭載製品であれば、直接MHLからの出力信号を、受信/表示可能となるという。

 なお、MHLの標準コネクタ形状は決まっていない。2009年にはコンソーシアムを立ち上げ、標準コネクタなどが策定される可能性もあるが、基本的には各機器メーカーが独自のコネクタを利用できるような柔軟性を持たせていく見込みという。

ブリッジチップを使って、MHLをHDMI出力

□Silicon Imageのホームページ(英文)
http://www.siliconimage.com/
□InstaPort技術情報(英文)
http://www.siliconimage.com/technologies/instaport.aspx
□MHL技術情報(英文)
http://www.siliconimage.com/mhl/
□関連記事
【10月2日】Silicon ImageのHDMI切り替え高速化技術がSamsungに採用
-「InstaPort」が次世代TVに。9社が採用の方向
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081002/silicon.htm
【7月24日】Silicon Image、“HDMI切替が1秒以下”の「InstaPort」技術
-デジタルテレビ/AVアンプ向け新プロセッサを発表
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080724/silicon.htm

( 2008年10月10日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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