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株式会社オーディオテクニカは16日、年末にかけてリリースする新製品の発表会を開催。ヘッドフォンでは、アートモニターの最上位モデル「ATH-A2000X」と、その下位モデル「ATH-A1000X」、デザイン性の高いポータブルモデル「ATH-FW5」を発表。さらに、既発表だが、10月から11月にかけてリリースする新モデル展示&試聴会も行なわれた。
ここでは新発表のモデルを中心に、簡単な音質インプレッションも交えて新製品を紹介する。
■ ATH-A2000X アートモニターヘッドフォンの最上位モデル「ATH-A2000X」は、12月5日発売で、価格は78,750円。ハウジングは密閉型で、ダイナミック型ユニットを採用する。
コードを除く重量が約298gという軽さが特徴で、ハウジングにはチタンを使用。バッフルとフレームをマグネシウム合金一体にするなど、軽量化を追求。内部パーツは「ハウジング内の空気の流れを妨げないよう、例えば角のあるパーツには角にRを持たせるなど、細心の注意を払った」という。 軽量化したことで装着時の負担も軽減しているが、さらに装着感をアップさせるため、従来から採用している3D方式のウイングサポートを改良。同サポートは左右と上下の両方向に可動することで、最適なホールドを実現するというものだが、その特徴はそのままに、頭を抑える圧力に変化を持たせた。具体的には、従来モデルではヘッドフォンを深くかぶればかぶるほど頭を抑えるバネの力は強くなるが、A2000Xでは必要最低限の力に抑えることが可能になった。そのため、しっかり装着した状態で長時間使用しても、ストレスが少ないという。
ユニットは53mm径。磁気回路にパーメンジュールを使用。7NのOFCを使った、ボビン巻きボイスコイルも使用している。再生周波数帯域は5Hz~45kHz。出力音圧レベルは101dB/mW。インピーダンスは42Ω。最大入力は2,000mW。コードは3mのY型で、6NのOFCとOFCのハイブリッド導体を採用。プラグはステレオミニで、標準プラグへの変換コネクタが付属する。
【インプレッション】 短時間ではあるがiPhone 3Gで試聴を行なった。楽曲は「Pure - AQUAPLUS LEGEND OF ACOUSTICS-」から「永久に」と、「Suara/夢想歌」から「星想夜曲」。大型の屋内用ヘッドフォンだが、手にすると驚くほど軽い。ウイングサポートによるホールドや側圧も適度であるため、装着している違和感はほとんど無い。 音質以前に驚くのは、密閉型ヘッドフォンでありながら、まったくハウジングの存在を感じさせない開放的な再生音。音場が非常に広く、ハウジングからの反射音による“こもり”は皆無。そのため、再生音は開放型のそれに非常に近い。他メーカーだが、ケンウッドの人気モデル「KH-K1000」(36,750円)と似た方向性のサウンドだ。 再生レンジが非常に広く、音質もフラット。開放的なサウンドだが、中域や低域の量感はしっかりと持っており、それらの主張は抜けの良い高域を損なわない絶妙なバランスを維持している。弦楽器の響きは魅惑的で、アコースティックベースの低域も解像感高く描写され、音量を上げてもうるさく感じない。センスの良い、完成度の高い再生音という印象を受けた。
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■ ATH-A1000X
A2000Xの下位モデルとなるA1000Xは、12月5日の同時発売。価格は60,900円。こちらもハウジングは密閉型で、ダイナミック型ユニットを採用している。改良型の3Dウイングサポートを採用している点もA2000Xと同じだ。 ゴールド塗装したアルミ製ハウジングを採用し、バッフルとフレームをマグネシウム合金にするなどして軽量化。コードを除き、約265gを実現している。ユニットは53mm径で、一体型ヨークを採用した新開発のものを採用している。再生周波数は5Hz~42kHz。出力音圧レベルは101dB/mW。最大入力は1,000mW。インピーダンスは42Ω。
コードはY型で3m。プラグはステレオミニで、標準プラグへの変換コネクタも付属する。
【インプレッション】 約2万円低価格だが、密閉型でありながら、開放型を連想させるハウジング&再生音はA2000Xと共通であり、コストパフォーマンスの高さが魅力のモデルになりそうだ。しかし、中低域の量感はA2000Xよりもおとなしく、再生音全体の解像度も若干落ちると感じた。
□製品情報
■ ATH-FW5
「ATH-FW5」は、11月21日発売で6,300円のポータブルヘッドフォン。カラーバリエーションはブラウン(BW)、ブルー(BL)、ピンク(PK)、ホワイト(WH)の4色を用意している。 同社は7月に、女性をターゲットとしたボタン風デザインのヘッドフォン「ATH-FW3」(3,675円)を発売しているが、同モデルの販売が好調であるため、「よりフェミニンなデザインを採用した」という「FW5」も投入されることになった。 最大の特徴はハウジングデザインで、丸みを帯びた陶器のような質感を追求。装着しても髪型が崩れないよう、ヘッドバンドをスリムなステンレスタイプとした。ハウジング部は横方向に反転でき、薄くして収納できるほか、ヘッドバンドの内側に向かって折りたたむこともできる。
ユニットは36mm径。再生周波数帯域は15Hz~23kHz。出力音圧レベルは105dB/mW。最大入力は100mW。インピーダンス30Ω。コードを除いた重量は80g。接続プラグはステレオミニ。コードやY型で、長さは1m。キャリングポーチも付属する。
□製品情報
■ 既発表モデルも一堂に展示 オープンエアー型の高級モデル「ATH-AD1000PRM」は、10月17日発売。価格は60,900円。1,000台の限定生産となっている。 最上位モデル「ATH-AD2000」の技術を踏襲した、53mm径ユニットを搭載。ドライバー部には磁性材料のパーメンジュール、OFC-7Nのボビン巻きコイルを使用している。フレームはマグネシウム製。さらに、アルミニウム製のパンチングケースと組み合わせることで、270g(コード除く)という軽量を実現した。再生周波数帯域は5Hz~40kHz。インピーダンスは40Ω。
【インプレッション】 「ATH-AD2000」は豊富な情報量としなやかな高域が特徴で、コンデンサー型を彷彿とさせる再生音が印象に残る高音質モデル。価格は84,000円と高価だが、2万円以上低価格な「ATH-AD1000PRM」も、上位モデルの特徴を良く引き継いでいる。再生音のバランスが非常に良く、開放型でありながら中低域が痩せず、適度に主張する。しなやかな高域は健在で、女性ヴォーカルや弦楽器では“魅惑的”と言いたくなるほど繊細な描写が楽しめる。
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「ATH-ESW10JPN」は、ブラックチェリー無垢削り出しのハウジングに、伝統技術の越前漆塗りを施したポータブルタイプの高級ヘッドフォン。10月17日発売で、価格は60,900円。1,000台限定。ブラックチェリーは硬く密度があるためピアノやコンサートホールにも使用されている木材で、漆塗りにより時間の経過とともに特有の艶が出てくるという。 ユニットは新開発の42mm径。再生周波数帯域は5Hz~35kHz。インピーダンスは45Ω。
【インプレッション】 何よりもまず、ハウジングの美しい仕上げが目を引く。木目を活かすため、塗りと乾燥、磨きなどの工程を10回も繰り返し、2カ月あまりかけて完成させるという。見た目からは密閉型らしい重厚な再生音を連想させるが、実際に聞くと軽快で開放感のある再生音だ。大型ヘッドフォンと比べると、振動板が小さいため、量感は少なめで音場も狭くなるが、倍音の響きに木のぬくもりを聴き出すことができる。サイズから来るスケール面の問題を、良質な響きで上手くカバーしていると言えるだろう。
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(2008年10月16日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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