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CGや3D映像、ゲームなどの最新デジタルコンテンツを紹介する「DIGITAL CONTENT EXPO2008」が10月23日~26日までの日程で、東京・お台場の日本科学未来館、及び東京国際交流館で開催されている。入場は無料。隣接する日本科学未来館・展示施設に入場する場合には入場料が必要。主催は経済産業省と財団法人デジタルコンテンツ協会。
アジア各国の優れたCG作品や、その作家を紹介する「ASIAGRAH 2008 in Tokyo」、光学迷彩やヘッドマウントディスプレイなど、次世代コンテンツを活用する技術を紹介する「ConTEX(次世代コンテンツ技術展)」、3D映像に関する技術展「国際 3D Fair」などを合体させたイベントであり、日本のコンテンツ/技術を世界にアピールする「CoFesta 2008」の一環でもある。
AV機器に直接関連する展示は少ないが、ここでは盛り上がりを見せている3D関連技術を中心に、興味深い展示をレポートする。
■ モバイル「Eye-Trek」 入場してすぐに目を引くのは、オリンパスの未来創造研究所が参考展示しているヘッドマウントディスプレイ「モバイルEye-Trek -慧眼(けいがん)-」。同社は「Eye-Trek(アイトレック)」を手掛けているが、その未来版とも言える試作機だ。 表示デバイスに瞳分割方式のシースルー光学系を採用しているのが特徴。瞳孔の約半分の面積しかない、細身の光学バーに液晶を用いて映像を表示する。イメージとしては右目のすぐ前に、つまようじを横に置かれたような感じで、瞳孔よりも幅が小さいため、つまようじの向こう側の景色も見ることができる。そのようじの尖端に液晶ディスプレイが付いており、静止画/文字情報を表示すると、視界の中にぼんやりと透明の画像が表示されているように見えるというシステムだ。
100%の外界視界を確保しながら、一般的なシースルー原理で使われる半透過鏡を使用していないため、液晶の光を効率的に利用できるのが特徴。消費電力を抑えながら明るい映像を表示できるというわけだ。試作機では50cm先に3.8型の画面が表示され、解像度は11.3万画素。液晶パネル自体のサイズは3.2×2.4mm。 2.4GHzの無線通信を利用し、静止画/文字情報を伝送。ワイヤレスでの利用を実現している。携帯電話と連携して、メールやワンセグ映像の表示などを想定しているほか、GPSを用いて周囲の店舗情報をレコメンドサーバーを通じてネット経由で取得。例えば食べ物屋に目を向けると、そのお店に重なるようにランチメニューが表示されるといった使い方も可能になるという。 現時点で動画表示にも対応。2012年頃の実用化を目指して研究が進められており、今後は筐体の小型化や、各種通信技術の取り込みなどに注力していくという。
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■ 光学迷彩が現実のものに
アニメ/コミックの「攻殻機動隊」でお馴染み光学迷彩(正確には熱光学迷彩)。周囲の景色と同じものを表示する服を着ることで、カメレオンのように姿を隠し、透明人間になってしまう……という技術だが、会場では本物の“光学迷彩”が展示されている。手掛けたのは慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科の稲見昌彦氏で、実際に「攻殻機動隊」からヒントを得て開発したという。
しかし、原理は「攻殻機動隊」とは若干異なる。まず、道路標識などに使われている“入ってきた光を、同じ角度で反射する”性質のある「再帰性反射材」を使って服を作る。次に、人物がいない背景をカメラで撮影。その静止画をプロジェクタで投写する。スクリーンとプロジェクタの間に、反射材で作られた服を着た人が入ると、背景の画像が服に投写され、プロジェクタと同じ方向から見ると服の部分が透明になったように見えるという原理だ。
難点はプロジェクタと同じ方向から見ないと透明に見えないこと。実際の迷彩服に利用するにはまだまだ研究が必要と思われるが、例えば現在の原理だけでも、車の後方確認装置に使える可能性があるという。後部座席のシートな内装を「再帰性反射材」で覆い、そこに向けて車の後方に設置したカメラからの映像を、車内のプロジェクタから投写。運転手が振り向いて後方確認すると、シートなどが透けて車の外の後方景色がそのまま見えるという具合だ。
■ 3Dディスプレイも多数展示 NTTドコモは、裸眼で立体視が可能な3Dディスプレイの試作機を展示している。基本は多数の方向から撮影した画像を合成して表示。見える方向を規制するレンチキュラーレンズのシートをディスプレイの上に貼り付けるシステムだが、表示する際に顔検出機能を取り入れているのが特徴。 ディスプレイに小型カメラを装着し、画面を見ているユーザーの目の位置を検出。視線の方向を判定し、ユーザーから見ている方向に合った立体映像に逐次切り替えて表示する。単純にレンチキュラーレンズを重ねて表示しただけの場合、視野角を広げようとするとより多くの方向からの画像を1画面に合成しなくてはならず、映像の解像感低下を招いていた。また、垂直方向にも立体視させようとするとその視点は桁違いに増加してしまう。 7.2インチの試作機では、見られている方向に合わせた映像を逐次表示することで、水平方向に約60度、垂直方向に30度の裸眼用3Dディスプレイとしては広い視野角を実現している。携帯電話やゲーム機などへの展開を目指し、研究を進めているという。
バンダイナムコゲームスでは、フラクショナル・ビュー(FV)方式の立体視を紹介している。前述のNTTドコモと同様に、ディスプレイにレンチキュラーレンズを重ねる方式だが、重ねた後の表示を、専用のテストパターンを用いて精確に測定。光線方向のマップを計算するのが特徴。 通常の3Dディスプレイでは、レンチキュラーレンズのピッチと液晶の画素ピッチを合わせて設計する必要があるため、汎用性が低いという問題があった。しかし、FV方式ではレンズと液晶を合わせた後で測定/計算し、表示するソフトウェア側で補正することで、レンズのずれなどに対応できる。レンズが専用設計である必要が無く、汎用性が高くなるほか、温度/経年変化に対しても柔軟に対応できるのが特徴。 会場ではリッジレーサーやソウルキャリバーなどのゲームソフトで、3D表示をデモ。プログラマブルシェーダから立体画像を合成する技術も開発しており、ゲーム画面の3D映像へのリアルタイム変換も可能。「技術としてはほぼ完成しているが、家庭に導入するとなると、レンズと画素の一致が重要になるため、最近のテレビに入っているアップスケール機能をOFFにしないといけなくなる。テレビの機種ごとにOFFにする方法は違うので、製品化の際にはそうしたサポート面での問題がある。携帯ゲーム機やアーケードゲームの筐体の方が製品化としては早いかもしれない」という。
□DIGITAL CONTENT EXPO 2008のホームページ
(2008年10月24日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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