2008年末の注目製品をピックアップ【後編】 AVアンプ/スピーカーの新製品やネットブック活用 前回に引き続き、今シーズンの“注目製品”という切り口でいくつかの製品を紹介していく。 ・ネットブック
ULCPC(Ultra Low Cost PC)、いわゆるネットブックがPC業界ではとても大きな話題になっている。ネットブックが安い理由は、キーコンポーネントを提供しているベンダー(主にインテルとマイクロソフト)が、新興国市場でコンピュータを普及させるために、性能や画面解像度などスペックが低い製品を対象に、低価格でPCを構成する要素を提供しているからだ。本来の目的は新興国向けでのパソコンとインターネットの普及なのだが、日米欧などすでにPCが十分に普及し、経済的にもずっと余裕のある国でも人気を集めることになった。 なにしろ性能も解像度も低いとは言っても、インターネットにアクセスしてGoogleのアプリケーションを使ったり、YouTubeを見たり、電子メールクライアントとして使ったりといったインターネットの端末として使う上では、さほど困ることがない程度の実力はある。 私自身はネットブックを評価以外では使っていないが、すでに自宅の各部屋に使わなくなったモバイルコンピュータを常設して使っている。映画でも、情報番組でも、何らかの映像を楽しんだ後には、インターネットで関連情報を確認・調査したくなるからだ。加えて昨今はNASや書斎のデスクトップPCに、多くの音楽や映像、写真を蓄えている。それらを家庭内ネットワークを通じ、手元にあるテレビやオーディオ機器で楽しむ際にも、やっぱり手元にコンピュータがあると便利だ。 特に音楽に関しては、ロスレスエンコードした音楽データだけで、ハードディスク上に1万曲分ぐらいがある。音楽好きならもっと持っている人もいるだろう。これだけトラック数が増えると、パソコンならではのサイズの大きな液晶パネルやキーボードがないと、利便性より使いにくさによる苦痛の方が上回ってくる。
世の中には5~10万円もする高性能リモコンも存在することを考えたら、小容量のSSDを搭載した安価なネットブックを、Web端末として、そしてNASなどに蓄積したメディアを再生するコントロールセンターとして部屋に1台常備しておくのも悪くない。 最近は10インチ液晶パネルに160GB HDDといった、通常のノートパソコンに近い構成の製品もあるが、低価格でコンパクト、そして小容量でもSSD搭載のモデルを選ぶ方がいい。HDD搭載モデルは、その動作音自体が静かな部屋では気になることがある。とはいえ、インテルのAtom搭載モデルならば、どの製品を購入しても大きな性能の違いはないから、デザインと予算が納得できるならば、どれを選んでも満足度に大きな違いはないだろう。 その中であえて選ぶなら、個人的にはASUSのEee PC S101、あるいは日本ヒューレット・パッカード HP mini1000のSSDモデルを選ぶ。が、これはあくまでも好みの範疇。リビング常設端末ぐらいならば、7インチから8インチクラスの製品でも十分だ。 □関連記事 ・AVアンプ
昨年末はハイエンドモデルが花盛りだったAVセンターだが、今年の年末は中上級機(20~40万円)から中級機(10~20万円)の価格クラスに充実した製品が並んだ。 中級機クラスの注目はソニーTA-DA3400ES、パイオニアVSA-LX51、デノンAVC-2809、オンキヨーTX-SA706Xあたりが良いパフォーマンスを出している。 中級クラスの背景を紹介しておくと、HDオーディオのデコード機能への対応、HDMI端子の増加といったことが原因で、数年前の非HDMI時代と比べるとどの製品もコストが大幅に上がっている。このため、以前は実力と価格のバランスポイントとして人気の高かった、実売価格で16~19万円ぐらいだった製品は、軒並み20万円台後半にまで価格が上がっている。 つまり12~15万円前後のAVセンターは、以前ならば10万円クラスのAVセンターにかけていたコストと同程度しか、中核となるオーディオ部にコストを投入できなくなった。だから、ちょっとしたマニアを自負している人には、後悔しないためにも中上級機から製品を選んで欲しいと思う。 が、コストをかけられないからこそ、メーカーとしての腕の見せ所がある。デジタルのインターフェイスや演算処理部にコストを奪われた分、なんとか蓄積したノウハウでカバーしよう、カバーすることができる、というのが、このクラス。 ソニーのTA-DA3400ESは、清楚な音ではないし、最低域の量感もないが、しかし腰の据わったパンチのある中低域で気持ちよく音楽を聴かせる。2チャンネルのステレオ音声で、きちんと奥行きのある音場感を、この価格帯で演出できたのは職人技と言えるチューニングの成果あってのことだ。 一方、VSA-LX51は今年前半のモデルだが、決して年末の新製品に劣ることはない。正面からクリアな音質の実現に取り組み、そして重要なことなのだが、実に活き活きとした快活な音を引き出す。やはり最低域は出ないが、決して不自然さはなく楽しく聴ける1台。個人的にはこのクラスで一番の推薦機だ。
とはいえ、前述したように音質を重視して選ぶなら、もうワンクラス上の価格帯から選びたい。ここでの注目機種はソニーTA-DA5400ES、ヤマハDSP-Z7、パイオニアSC-LX81、オンキヨーTX-NA906Xの4機種。どれを選んでも、Blu-rayの映画ソフトはもちろん、サラウンド収録の高品位な音楽ソフトやCDなど、あらゆるサウンドソースを存分に楽しめるだろう。 ここでパーソナルベストを選ぶならTA-DA5400ES。S/N感が良く音場の消え際のグラデーションが滑らか。ステレオ音場が素直に半球状に拡がり、ヴォーカルのエコーが自然に膨らみ、消えていく。一方で切れ味鋭いスピード感溢れる描写も得意で、しっとりとしたヴォーカルから、刺激音の強いアクション映画まで、あらゆる音源で納得できる音を出してくれた。特にHDMI音声の質は抜群だ。30万円台の製品とも渡り合えるコストパフォーマンスの良さもある。 そのTA-DA5400ESに匹敵すると感じたのが、ヤマハのDSP-Z7だ。もし、この製品の価格がもう少し安かったなら、TA-DA5400ESとどちらを本命として推すか、かなり迷ったことだろう。上位機Z11譲りの品位の高い音だが、本機の方が躍動感溢れる元気の良い音がする。DSP-AZ1、AZ2あたりの、やんちゃなヤマハの音が好きだったという人なら、Z7もきっと気に入るだろう。Z7の方がより整い、清楚な面もあるが、しかしその芯の部分はなかなか熱い。内蔵7チャンネルのみのパワーアンプ構成ながら、プリアウトを用いることでフロントプレゼンスを追加でき、9.1チャンネルの3DシネマDSPに発展できる拡張性も評価したい。
□関連記事 ・スピーカー スピーカーという製品カテゴリは実に幅広いが、その中でコレに注目! というものをいくつか挙げよう。製品数があまりに多いので、おそらく「なんでこの製品が紹介されない?」と思うところもあるだろうが、そこは個人的な注目製品ということでお許しいただきたい。
まずはペア69,300円のKEF iQ30。老舗のスピーカーメーカーKEFは、同軸ユニットを最大の特徴としているが、ヒット製品iQ3の後継モデルとなったiQ30は、音調が大きく変化している。iQ3は元気の良さが信条で、繊細な表現もできるけれど、本領はやっぱり前へと出てくるエネルギッシュさだった。 ところがiQ30。そこに濃厚さが加わり、大人っぽい女性ヴォーカルをしっとりと聴かせるふくよかさを感じるさせるようになった。カラッと乾いたサウンドから、ウェットな質感まで聴かせる。ベースモデルのiQ3自身、かなりコストパフォーマンスの良い製品だったが、iQ30となってさらにその地位を不動にした。 もうひとつ。是非とも知っておいて欲しいのが、ELACの240シリーズである。写真で見るよりもスリムでコンパクトな240シリーズには、最上位モデルにペア693,000円のFS249という製品がある。もちろん、最上位モデルだけにスケールの大きな音を聴かせるが、お勧めしたいのはその下位にあたるトールボーイタイプのFS247と、ブックシェルフタイプのBS243LTD。前者は294,000円で実売価格はもう少し安い。後者はオープンプライスだが実勢では20万円以下で販売されている。 両者ともツィータのデキがとても良く、歪み感が少なく透明感溢れる音を出す。繊細な表現力もあり、ウォーミーな質感だが音像はしっかりとして、実に生真面目な音だ。元々スピード感溢れる描写のツィーターだが、中低域のレスポンスが素早く全体のバランスが良く、価格以上に楽しめる音になっている。やや高価と写るかもしれないが、高級スピーカーへの入り口として実力の高い注目のシリーズだ。
・一眼レフデジタルカメラ
本来ならデジカメWatchの領域だが、ここで敢えて取り上げるのは、AV Watchの読者にこそ相応しいと思う製品があるからだ。もしデジカメWatchで今年の一眼レフデジタルカメラから1台を選べと言われたら、私はキヤノンのEOS 5D Mark IIを選ぶだろう。先代モデルのユーザーだったが、Mark IIになって画素数が上がり、感度も高くなって動画が撮影できるようになった"だけ"だと思っていたが、デモ機で撮影していて大きく進化していることに驚いた。露出判断、ファインダーの見え味、シャッターボタンに対するレスポンス、(画素数ではなく)絵作りや絵の質、それに操作性など、あらゆる点で進化している。見た目の代わり映えの無さだけを見ていると、それほど魅力的なモデルチェンジには見えないのだが、さすがに3年以上を経てのモデルチェンジだけに、大幅な進化を感じた。 が、ここで注目したいのはパナソニックのDMC-G1である。
電子式ビューファインダー搭載のマイクロフォーサーズ機だが、AV機器やデジタルカメラなどが好きな人にこそ使って欲しいと思う。“女流一眼”として軽量・コンパクトの訴求に偏ったプロモーションが行なわれているG1だが、実はかなりマニアックで使いこなしがいがあるカメラであると同時に、写真技術の基礎をあまり知らなくとも使いこなせるカメラでもある。 たとえば私は写真を撮る際、ホワイトバランスを意識して変えながら撮影をする。夕焼けのオレンジを際だたせたり、朝靄の中でややパープルがかかった色を引き出してみたり、その場のイメージに合わせてホワイトバランスを変えてみる。もちろん、複雑なミックス光の中ではプリセットよりもオートの方が良い場合もあるが、とにかくEVFならそれらを確認しながら撮影できる。 露出確認もボタン一つでできるし、被写体追尾AFなどの従来の一眼レフカメラであまり見ない機能もある。しかもコントラスト検出式AFなのに合焦速度がすこぶる速いのである。 EVFに対する悪いイメージは数え切れないほどあるが、そうした悪いイメージを払拭するだけの質と機能が搭載されている。これを軽量・コンパクトなだけのお手軽カメラと言ってしまったらモッタイナイ。一眼レフカメラの機能を知り、作法を知っている人こそ、G1のおもしろさが理解できるはず。加えて一眼レフカメラへの漠然とした"あこがれ"を持っていない、AVファンにも注目のモデルだ。 まずは店頭で一度、手にとって遊んでみるといいだろう。様々な発見がそこにある。
□関連記事 □関連記事 (2008年11月28日)
[Reported by 本田雅一]
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|
|