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12月1日より、日本放送協会(NHK)の有料VODサービス「NHKオンデマンド」がスタートした。
改めてオープンしたてのNHKオンデマンドのホームページを見てみると、その規模と番組のバリエーションの幅はさすがに圧倒的。NHKの放送の歴史の深さを確かに感じさせる充実したラインナップになっている。 12月1日から、NHKサイト内でPC向け配信が開始されたほか、対応テレビで使用できる「アクトビラ ビデオ・フル」と、ケーブルテレビの「J:COM オン デマンド」、対応する光回線向けの「ひかりTV」で展開をする。今回はPC向けの配信サービスを試してみた。 ■ 強力なライブラリとシンプルな操作画面
まず、PC版の利用には利用登録が必要となる。メールアドレスが必要となるほか、課金方法はクレジットカードとYahoo!ウォレットが用意されている。 カテゴリとして、NHKの地上波/BS合わせて1日10~15番組を放送後から約1週間、購入後24時間まで視聴できる「見逃し番組」と、1,200本以上のタイトルを用意し、購入後72時間まで再生可能な「特選ライブラリー」の2種類を用意。単品の視聴料金は、PC/テレビ向けいずれのサービスも105円~315円。また、「見逃し番組」には1,470円の「見放題パック」も用意する。ニュース番組は「見逃し番組」のみで提供する。 番組リストは、ホームページや、28日掲載の特集を参照してほしいが、ドラマやドキュメンタリー、スポーツ、NHK特集など多数のラインナップが用意されている。 PC版のトップページでは、ページ最上部に「見逃し番組」、「特選ライブラリー」、「特集/オススメ」、「ランキング」、「番組名/ジャンル」の各項目を用意。中央の動画サムネイルの場所から、番組名やジャンルから番組検索が可能なほか、オススメ番組や人気ランキングも表示。スタート直後のため、ランキングはまだ表示されていなかったが、トップページを見るだけでさまざまな番組が用意されていることが確認できる。 「見逃し番組」の項目は、過去一週間に放送された多くの番組のオンデマンド配信を行なうもの。1日に10~15番組が用意され、「見放題パック」の利用者は、ここのすべての番組を視聴できるようになっている。また、ニュース番組は見放題パックの加入者だけが利用可能だ。 例えば11月29日を見てみると、同日開催された「2008 NHK杯フィギュア」や、同日放送されたNHKアーカイブス「北の海に生きる~北海道利尻島~」、サイエンスZERO「アルツハイマー病 研究最前線」などが10本以上ラインナップされている。
「特選ライブラリー」は「シルクロード」などのNHK特集や、NHKスペシャル、ドラマ特集などを用意。多くは1本数十分から1時間程度の作品で、105~315円で提供されているが、長編や連続ドラマのパックも用意されている。NHKスペシャルやドラマなどは本編時間や回数により異なっている。各回15分の連続ドラマ「恋セヨ乙女パック」は10回セットで1,670円、「NHK特集 激動の記録パック全5部」は各回80分×5本で1,260円などで販売されている。 「特集/オススメ」はいまプッシュ中の番組を紹介。ジャンル検索や番組名での検索なども可能となっているなど、スタート直後ながら、番組紹介のためのさまざまな工夫が凝らされており、見ているだけでも楽しめる。できればユーザーの嗜好にあわせたレコメンド機能のなどの追加にも期待したいところだ。
連続テレビ小説の「だんだん 50 恋のバカンス」を単品購入して視聴してみた。準備はクレジットカードもしくはYahoo!ウォレットと課金方法を選択し、課金情報を登録しておく程度。あとはビットレートを756kbpsと1.5Mbpsから選択すれば、別ウィンドウが立ち上がり、再生が開始される。配信形式はWindows Media Videoだ。 ただ、対応ブラウザはInternet Explorerのみ。FirefoxやSafariなどでは利用できない。対応OSもWindows XP/Vistaのみと制限が多いのは残念だ。
まずは1.5Mbpsで見てみたが、ノートパソコンの12型1,024×768ドット液晶で見れば十分に高精細。解像度自体はSDだがアスペクト比はワイドで、ソースのハイビジョン感はしっかりと残っている。ボクシングの減量中に倒れた吉田栄作の滴る汗や、肌の影などがきれいに残っており、全画面表示しても、それほど破綻は無い。 暗いステージ上で青白いライトをバックに歌うマナカナ(三倉茉奈、三倉佳奈)、という非常に圧縮ノイズが出やすそうなシーンでも目立った破綻は無い。HDソースのクリアな質感はきっちりと残っている。パソコン(Let's note CF-W5)を操作していると時折引っかかるようにコマが落ちてしまうこともあったが、これはパソコンのパフォーマンスの問題だろう。 756kbpsになると、HD感は残っているもののやはりややディティールが落ちてしまう。明確な破綻はそれほどないが、特に全画面表示した際には、階調も少なく、ディティールがのっぺりとしたインパクトの薄い画になってしまう。できれば1.5Mbpsで見たいところだ。もっともネットブックなど、小型の液晶ディスプレイで見る分にはあまり顕著な画質差は感じないかもしれない。 また、下のスライダーバーをクリックすることで、番組内のスキップ/バックも可能だ。ただ、再生開始した時点では先のほうの番組はバッファリングされていないので、スキップまでに時間がかかることがある。なお、途中で再生停止した場合は、レジュームは効かず、再度その場所までスキップする必要がある。
なお、番組にはNODというロゴが右上に付与されるようだ。アナログ放送の「アナログ」マークのようなものだが、常に表示されるので若干気になる感じになる。 また番組視聴で注意したいのは「見逃し番組」と「特選ライブラリー」で視聴可能時間が違う点だ。見逃し番組の場合は、単品購入時でも購入後1日でライセンスが消去され、再生できなくなる。一方、特選ライブラリーの場合は購入後72時間(3日間)の再生が可能となっている。最初、単品購入番組はすべて72時間視聴できると勘違いしていたので、少々面食らった。 また、見逃し/特選ライブラリーのいずれも、HDDなどのパソコン上の蓄積デバイスに保存はできない。また、DVDやBlu-rayなどへのダビングもできない。あくまで見るだけだ。今まで見られなかった多くの作品が見られるという点で、価格設定的にはさほど高いとは感じないが、追加料金の支払いで光ディスクへの記録して蓄積するような道も残してほしいところだ。 また、気になるのは番組検索時に項目があるものの、実際の番組が用意されていないものがあること。例えば「年代から番組を選ぶ」の項目から多くの番組が出てくるのだが、実際に番組を選択すると、中身はまだ用意されていないものがある。「わたしが子どもだったころ」の項目があったので、途中から見て面白かった、10月26日放送の爆笑問題田中裕二の回を最初から見ようと思ったのだが、番組のページまでたどり着くとまだ配信が始まっていない。このあたりは、順次整備を進めていってほしいところだ。
とはいえ、コンテンツ数が多いのでライブラリを見ているだけでNHKの放送の歴史に触れたような気分になる。30秒間だけだが試聴も可能となっており、若かりしころの黒柳徹子の司会や、戦前のフィルムなども楽しめる。さまざまなVODサービスがあるが、こういう歴史の深みを感じさせてくれるサービスは、NHK以外ではできないだろう。 残念なのは、パソコン用だけでなく、アクトビラやひかりTVを使ったテレビ用のサービスもあるのに、それらでIDを共有できない点。例えば「見逃し番組」のサービスを双方で入れば、1,470円×2=2,940円となってしまう。もし、一契約で双方から見られるのであれば、かなりリーズナブルだと思うが残念ながらできないのだ。課金システムも違うなどの問題もあるのだろうが、せめて複数契約時の割引などの料金体系はあってもいいのではないだろうか。 とはいえ、「ここでしか見られない」という番組の数は多い。今後の充実次第では、ちょっと見忘れたとき、や“調べモノ”をしたいときなど、生活に密着したサービスになっていくような期待を感じさせてくれる。 □NHKオンデマンドのホームページ ( 2008年12月1日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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