第3回「声優アワード」、主演男優は神谷浩史、女優は釘宮理恵

-歌唱賞は「マクロスF」の中島愛。海外ファン賞新設


3月7日発表

  その年度に最も印象に残る活躍をした声優を対象に、その業績を称える「声優アワード」の授賞式が7日、東京・秋葉原UDXにて行なわれ、主演男優賞を神谷浩史さんが、女優賞を釘宮理恵さんがそれぞれ受賞した。

 声優アワード実行委員会が主催するもので、2008年度で第3回目となる。一般投票の第一次選考でノミネート者を選び、その後、選考委員会による審議を経て受賞者が決定する。各賞の受賞者は下表の通り。なお、今年から特別賞の中に「海外の人達の視点で選ばれた人」に贈られる「海外ファン賞」が新設。海外からの投票により決定された。

賞の名前受賞者内容
主演賞男優:神谷浩史その年発表された作品の中で
主演として活躍した人
(役柄ではなく本人の性別)
女優:釘宮理恵
助演賞男優:井上和彦
男優:杉田智和
その年発表された作品の中でキャラクター、
もしくは助演として活躍した人
(役柄ではなく本人の性別)
女優:遠藤綾
女優:沢城みゆき
新人賞男優:岡本信彦
男優:梶裕貴
原則として声優デビュー5年以内で、
特に目立った活躍をした人
女優:阿澄佳奈
女優:戸松遥
歌唱賞中島愛声優自身の名前、もしくは演じている
役名で歌唱を発表している人
パーソナリティ賞神谷浩史声優自身の名前、もしくは演じている
役名でラジオ/Webラジオ/TV/その他
の番組でパーソナリティとして
活躍している人


 以下の特別賞は、実行委員会が長年の功績をもとに推薦した結果を選考委員会で承認する形で決定されている。

賞の名前受賞者内容
特別功労賞武藤礼子外画も含めた故人の中で、
長年に渡って多くのジャンルに
貢献した役者や作品
海外ファン賞福山潤海外の人達の視点で選ばれた人
富山敬賞
(話題賞)
山寺宏一声優という職業を各メディアを
通じて多く広めた人
功労賞内海賢二
富田耕生
永井一郎
外画も含め、長年に渡って多く
のジャンルに貢献した役者や作品
シナジー賞鉄腕アトム
 ・清水マリ
 ・水垣洋子
 ・勝田久
作品として声優の魅力を
最大限に発揮したもの

 

秋葉原のUDXで授賞式が行なわれた
 主演男優賞に輝いた神谷浩史さんは、「俗・さよなら絶望先生」の糸色望、「夏目友人帳」の夏目貴志などで主演。繊細なキャラクター達の内面を芯の通った確かな芝居で演じる一方、「絶望先生」のハイテンションな演技もこなすなど、幅広い演技力が評価された。「機動戦士ガンダム00」のティエリア、「マクロスF」のミハエルなど、大作のサブキャラクターでも存在感を発揮している。

 挨拶に立った神谷さんは「今まで支えてくださった全ての人に感謝。特に『夏目友人帳』原作者の緑川ゆき先生、『絶望先生』原作の久米田康治先生に最大の感謝を贈りたいです。僕がここに立てているのはお2人のおかげです。僕はこれからもずっと声優です」と深く頭を下げた。

 主演女優賞の釘宮理恵さんは、今年も多数の役柄で活躍。「ゼロの使い魔 ~三美姫の輪舞~」のルイズ、「あかね色に染まる坂」の片桐優姫など、素直になれないツンデレなヒロインを熱演。人気作「とらドラ!」のヒロイン・逢坂大河では、凶暴な美少女というアニメらしい設定の裏で、思春期の少女の微妙な心の動きも演じ、好評を得た。

 「好きな事をして、こんな立派な賞を頂けるなんて幸せです」と語る釘宮さん。「テレビの前の人と心の交流ができることが声優になって一番幸せなこと。これからも自分を磨いて、精一杯がんばっていきたい」と笑顔を見せた。

前列左から遠藤綾さん、杉田智和さん、神谷浩史さん、釘宮理恵さん、井上和彦さん、沢城みゆきさん
 助演男優賞の井上和彦さんは、落ち着いた2枚目キャラを得意とするベテランだが、そうしたイメージと180度異なるコミカルな動物系キャラも得意。昨年度の「夏目友人帳」では、ニャンコ先生/斑(まだら)の演じ分けで高い評価を受けた。「毎日仕事が楽しくて、幸せだなと思っています。この世界に引き入れてくださった永井一郎さんに感謝しております」と挨拶。

 同じく助演男優賞の杉田智和さんは、「屍姫 赫」の伊佐木修二、「とある魔術の禁書目録」のアウレオルス=イザードなどを演じ、「マクロスF」では謎多き男、レオン・三島も好演。トロフィーを手に「“なんとかキャプター”のステッキみたいですね」と会場を笑わせた後、「このトロフィーには沢山の人の血潮がつまっています。20kgぐらいあるんです」と、杉田さんらしい笑いに満ちたスピーチで喜びを表現した。

 助演女優賞の遠藤綾さんは、「マクロスF」でヒロインの1人、シェリル・ノームを好演。「セキレイ」の松など、個性的なキャラも印象に残る。「頂いた賞にふさわしい役者になれるよう頑張ります」と決意を新たにした様子。

 同じく助演女優賞を受賞した、若手実力派として知られる沢城みゆきさんは、「鉄のラインバレル」の山下サトル、「ストライクウィッチーズ」のペリーヌ、「夏目友人帳」の笹田純など、性別や年齢を問わない幅広いキャラで活躍。「この会場で、沢山の大先輩の方々に初めてご挨拶させていただいたのですが、お顔を見ると緊張しても、声を聞いただけでずっと前から知っているような親しみを感じ、そのパワーに圧倒されました。その方々と同じものを頂いたということで、もう一度その意味を考えながら、頑張っていきたいです」と受賞を喜んだ。

 新人男優賞の岡本信彦さんは、「PERSONA -trinity soul」の神郷慎、「明日のよいち!」の烏丸与一、「鋼殻のレギオス」のレイフォンなど、多くの作品で主役を好演。「この世界に入って尊敬できる人と沢山会えました。僕もそんな尊敬される役者に、人間になりたいです」と目標を語る。梶裕貴さんは「黒執事」のフィニアン、「夜桜四重奏」の比泉秋名などで活躍。「昨年の経験を活かしていきたい」と抱負を語った。

 新人女優賞の阿澄佳奈さんは「ひだまりスケッチ×365」のゆの、 「今日の5の2」の平川ナツミなどの演技が評価された。「声優としてここに立てることが光栄。今後も心を届けられるよう頑張りたいです」と挨拶。戸松遥さんは話題作「かんなぎ」で主役のナギを演じたほか、「絶対可憐チルドレン」の三宮紫穂、「To LOVEる -とらぶる-」のララなどで活躍。「10代最後にこんな素敵な賞を頂けて誇りに思います。これを新たなスタートとして頑張りたいです」と喜びを語った。

 歌唱賞に輝いた中島愛さんは、約5,000通の応募の中から、「マクロスF」のヒロイン・ランカ役を射止めてデビュー。初々しい演技と透明感のある歌声で、歌が重要な要素となる同作品で、シェリルと共に存在感を発揮。アニメの中のランカ同様、スターダムに駆け上った1年となった。挨拶でも同作の河森正治総監督、音楽担当の菅野よう子さんへの感謝を述べた。

東京アニメセンターには授賞式の中継と、レッドカーペットを歩く声優を一目見ようと多くのファンが集まった
 パーソナリティ賞は、主演男優賞とのダブル受賞となる神谷さん。「マクロスF」や「絶望先生」などのラジオで鋭い指摘や歯に衣着せぬトークでリスナーを魅了。「全てのリスナーの代表としていただいた賞だと思っています!」と喜びを爆発させた。

 新設の海外ファン賞を受賞したのは、第1回声優アワードで主演男優賞を獲得した福山潤さん。「コードギアス」が海外でもブレイクし、その見事な演技が海外のファンから高く評価された。「(受賞は)信じられないという気持ち。作品だけでなく、言葉の壁をこえて、日本語の演技にも耳と心を傾けていただことに感謝です」と語った。

 声優を顕彰するアワードであるが、ファンからの投票が重要な意味を持つこともあり、アニメ作品そのものの人気も投票数に大きく影響する。その意味では「マクロスF」や「夏目友人帳」、「とらドラ!」などの人気の高さが垣間見える結果と言えるだろう。逆にこうした作品は声優達の熱演が人気を支える重要な要素になっている。また、海外からの投票増加を受けて新設されたという「海外ファン賞」は、ネット配信や日本とのタイムラグを抑えたDVD/BDソフトのリリースなど、日本のアニメが海外でも気軽に楽しめる土壌が整いつつあることを示すものと言えそうだ。 


(2009年 3月 7日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]