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Xperia、VR、UHD Blu-rayのこれから。ソニー平井社長「ラストワンインチ」が示すもの

 ソニーの平井一夫社長兼CEOは、ドイツ・ベルリンで現地時間の2日に開幕した「IFA 2016」の会場で、取材に答えた。

ソニーの平井一夫社長兼CEO

 前日に行なわれたプレスカンファレンスで平井氏は、“感動”を届ける製品作りについて「ラストワンインチ(Last one inch)」という言葉で説明。

 具体的な製品としては、スマートフォンの新たなフラッグシップ「Xperia XZ」や、高音質を追求したオーディオの「Signtature」シリーズのほか、「Xperia Ear」など新たなスマートプロダクトも発表された。

 「ラストワンインチ」というキーワードは、日本で6月に行なった経営方針説明会において出たもので、常に人々のすぐ近くにあって、感性に訴えかける存在であることなどを意味しているという。この言葉は平井氏が「会議の中で冗談半分で思いついた」とのことだが、「人間の五感に触れるものは、インテリジェンスがいかにクラウドの方に行ったとしても、情報はテレパシーで届くわけではない(ため、何らかの機器が近くに必要という)」ことを短く表現するのにうまく合致したことから、実際に使われることが決まったという。

 テレビやPlayStation 4など、1インチより離れて使う製品でも、実際にはユーザーがリモコンやコントローラを操作するため、そこがソニーとユーザーの接点となる。「ラストワンインチの接点で感動が起きるかどうかが、ソニーの価値」と平井氏は見ている。

プレスカンファレンスでの「ラストワンインチ」の説明

 プレスカンファレンスで最初に紹介されたウォークマンなどのオーディオ機器は、ポータブルながら高価格帯(ウォークマンNW-WM1Zは欧州で3,300ドル)であり、BRAVIAも100型の「KD-100ZD9」は69,999ユーロ(日本モデルのKJ-100Z9Dは700万円)と、プレミアムなモデルが目立つ。

ウォークマンやポータブルアンプなどのSignatureシリーズ
BRAVIA Z9Dシリーズ

 平井氏は「機能/価格だけというのは、ソニーが勝負するところではない。低価格帯で戦って、台数が出たとしても利益は出ない」とし、黒字化への戦略として高付加価値路線をとる姿勢を改めて示した。

 新スマートフォンのXperia XZ/Compactは、“トリプルイメージセンシング技術”などカメラ機能の大きな進化が強調。平井氏は、「低価格なサイバーショットが1台低価格なものが売れなくなったとしても、ソニーのスマートフォンに買い替えていただくことがストーリーとしてできるように、惜しみなく技術を投入する。他のカメラメーカーはスマートフォンやっていない。そこがソニーグループのアドバンテージになってくる」とした。モバイルビジネスの業績については「正式には年度が終わらないと分からないが、黒字化の道が見えてきた」という。

Xperia XZ

 今回のプレスカンファレンスで語られた内容は、ハードウェアの占める割合が多く、映像配信などコンテンツに関しては比較的少なかったが、ネット配信などのビジネスについては、「売上も伸びて順調に成長している。PlayStation Plusのサブスクライブ(定額サービス加入)数は、昨年2,080万人になった。ネットワークの収入は、ビジネスセグメントの46%(第1四半期実績)となっている。ネットワークの戦略は、PlayStationで(動画配信などの)コンテンツを楽しむなど、ゲームをしなくても、良いプラットフォームと思われるように、会員数を増やすのが必要。サブスクライブの人々は、ソニーにとって大きな資産」とする。

【訂正】記事初出時、PS Plusの昨年の会員数を6,500万人としていましたが、正しくは2,080万人のため、訂正しました(9月7日)

 10月に発売される「PlayStation VR」などVRの戦略については、「まずはゲーム。今はブレずに、喜ばれる形でVRを立ち上げるのが重要。PS4という性能の高いコンソールがあり、実写よりはゲームの方が、VRの“仕上がり”を細部に渡って調整できる。VRがプラットフォームとして立ち上がると、ゲーム以外にももっと世界が広がっていく。ソニーは、プロフェッショナルのカメラから、編集、PS VRというアウトプットまで映像コンテンツを作るバリューチェーンを持っている。VRという“水位”が上がっていくなら、私たちの大きい船は、どんどん上がっていく=大きなビジネスになるのでは」とした。

順番待ちの長い列ができていたPS VRの体験コーナー

 IFAでは「Signature」シリーズをはじめとする、ハイレゾなどの音質を追求した製品がフィーチャーされたのも特徴的だが、一方でアナログレコードの現状について平井氏に尋ねると、「30年前には考えられなかったが、ソニーミュージックジャパンから、CDと配信とアナログ盤の組み合わせで発売するものも出てきた。仕事柄、SMEJのサンプル盤が届くが、いつものCDに加えてアナログ盤も来るようになった。開けてみると、昔のCBSソニーの赤いレーベルで、ちょっと感動してしまった(笑)」とのこと。

 「今回も(IFAで)アナログプレーヤー展示しているが、実際に聴いてみると、確かに良いなと思う。皆さんが異口同音でアナログのすばらしさを語る。“大きな市場になる”ことは決してないものの、『ビニール盤をプレスして発売することは、ロスにならない』からソニーミュージックもやっている。それなりの市場になっていくのでは」いう認識を示した。

 IFAでのブース展示の中で、今回は同社初めてのUHD Blu-rayプレーヤーも登場し、以前明かされた「'16年度内のプレーヤー発売」も現実味を帯びてきた。平井氏は「映画会社がSPEを含めてタイトルが充実してきたこと、今年度中にプレーヤー発売させていただくなど、業界として回りだした。次はそれをいかにお客様に効果的に訴求するか、3D→4K→4K HDRと来た中で、そのストーリーや、“何が違うのか”を、理路整然と説明できるようにすることが、これからキーになる。技術がどんどん進化する中で、お客様が付いてきてくれるかどうかが、同じくらい重要。店頭での“説明力”があるかどうかが勝機になってくる」と述べた。

参考展示されたUHD Blu-ray Discプレーヤー