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JVC、超薄型振動板やメタルパーツ、バランス接続で進化したウッドドームイヤフォン
2016年9月15日 11:00
JVCケンウッドは、JVCブランドのウッドドームユニット採用イヤフォン3機種を10月中旬に発売する。価格は全てオープンプライスで、店頭予想価格は「WOOD 01 inner」が5万円前後、「WOOD 02 inner」が35,000円前後、「WOOD 03 inner」が24,000円前後。いずれもハイレゾ再生に対応する。
2007年の「HP-FX500」、2010年の「HA-FX700」、2014年の「HA-FX1100/850/750/650」に続く、ウッドドームユニット採用イヤフォンの第4世代モデル。昨年発表した、新たな薄型ウッドドームユニットを採用したヘッドフォン「HA-SW01/02」で培った技術をイヤフォンに投入。表現力を向上させ、装着感にもこだわったほか、バランス駆動用ケーブルも別売オプションとして用意するなど、様々な点が強化されている。
ユニットや磁気回路を改良
音の方向性としては、第3世代で好評だったという音色、響きの良さ、中低域の厚みといった要素を残しながら、音質のさらなる向上を図り、解像度や繊細さのアップ、低域のリニアリティ向上、臨場感や音場の広がりといった部分も進化したという。
ウッドドームユニットは、伝搬速度が速い、材料に異方性があって定在波が発生しにくく、自然な減衰特性があるといった木製振動板の物理的な特徴に注目して選ばれ、開発されたもの。
そのウッドドームユニットの最新版として、ヘッドフォンの「HA-SW01/02」で開発した薄さ50μmのカバ材シートを活用して開発。向こう側が透けて見えるほどの薄さで、従来比40%近くの軽量を実現した。ユニットの口径は、「WOOD 01 inner」が11mm径、「WOOD 02 inner」と「WOOD 03 inner」が10mm径。再生周波数帯域は、01が6Hz~50kHz、02と03が6Hz~45kHz。
「ハイエナジー磁気回路」を採用。磁気回路の中を流れ、ボイスコイルを駆動させる磁束を最適な位置に導くことで、リニアリティを改善するもので、そのために新たなプレート形状を採用。これに合わせて、プレートやヨークも刷新している。
さらに、ユニットの後部に、木製のウッドスタビライザーを配置。ユニットの裏にも音が抜けるように、背圧を逃がすような仕組みになっており、全体の響きを調整している。
ユニットの前面にあり、音が耳へと放出されるノズル部分にも工夫。ノズルがついているパーツの裏側に、丸い突起を複数設けた。これにより、共振の分散や剛性向上を図っており、特機の配置を変えた試作品を3Dプリンタで何個も作り、試聴を繰り返し、カット&トライで形状や数を決めていったという。
各モデルの違い
振動板の薄さや、磁気回路の構造など、前述の特徴は3モデルで共通している。ユニットの口径サイズは異なり、WOOD 01が11mm径、WOOD 02と03が10mm径。その他のモデルごとの違いは、内部に搭載し、共振などを抑える異種素材パーツの組み合わせとなる。
WOOD 01には、ユニットの前と、後ろにステンレスリングを配置。ユニットなどを格納する筐体には「ブラス(銅)インナーハウジング」を採用。さらにユニット背後にはアルミキャップも採用。これら4つの金属パーツを使い、不要な振動を抑制、美しい響きを実現する事から「クアッドメタルハーモナイザー」と名付けられている。
WOOD 02は、ユニットの前にブラスリングを配置。後ろはシリコンリングで金属ではない。ブラスインナーハウジングとアルミキャップは01と同様に採用。金属パーツが3つとなるため、「トリプルメタルハーモナイザー」と名付けられている。
WOOD 03は、ブラスインナーハウジングと、背後のアルミキャップのみの、「デュアルメタルハーモナイザー」となる。
ケーブルにも違いがあり、01と02は着脱が可能。端子はMMCX。01のケーブルは布巻きで、LチャンネルとRチャンネルのグランドを、ケーブルの中で分離独立させたケーブルとなっている(入力端子部ではアンバランスに戻っている)。なお、ユーザー層的にポータブルヘッドフォンアンプなどと接続する機会が多いと考えられる01の入力プラグのみ、ストレートタイプとなっている。
装着感を高める工夫として、「エルゴノミックアングルドフィットフォルム」を採用。イヤフォンはケーブルを引っ張られると耳から落ちやすいが、イヤフォンの全長を短くし、ケーブルを取り付ける位置を調整する事で、耳から近い位置に重さが掛かり、外れやすさを低減。耳に当たるフロントパーツの口径を、耳のくぼみにあうサイズに大型化した。ノズルも、角度や位置を調整。耳孔の角度に合わせ、フィット感を高めている。
スパイラルドットイヤーピースを5サイズ同梱。キャリングケースも付属。01のみ、低反発イヤーピースも2サイズ同梱する。
音を聴いてみる
ハイレゾプレーヤーの「AK380」と組み合わせ、3モデルの音を聴いてみた。
これまでのウッドドームユニット採用イヤフォンには、モデルによって細かな違いがあるが、全体としてトランジェントの良いハイスピードでハキハキした描写と、中低域の量感の豊かさ、グイグイと前にでる音圧の高さ、といった印象を持っている。
WOOD 01は、こうした印象の延長にあるサウンドだが、それと同時に分解能や、女性ヴォーカルの高音部分の質感など、より細かな描写が可能になった。繊細さと迫力が同居したサウンドだ。
アンバランス接続時は、高級イヤフォンとしては低域がやや強めに感じ、音場に低音のパワーが満ちる印象があるが、ケーブルをバランス対応のMMCXタイプ「CN-HM01MB」に交換。同日に発表されたポータブルヘッドフォンアンプの新モデル「SU-AX01」でバランス駆動すると、印象がガラリと変わる(これらの製品については別記事で紹介)。
バランス駆動により、チャンネルセパレーションが向上。音場がより広く、奥行きも出て、ステージ全体が広大になる。これにより、狭い空間に押し込められていたような中低域のパワーが、広い空間で心地よく開放され、定位や広さを感じるバランスになる。アンバランス接続のパワフルさも良いが、バランス接続で聴くと、広大さとパワフルさが高次元で両立できている。従来からのウッドドームファンにオススメでき、利用時はバランス駆動で聴く事をオススメしたい。
WOOD 02のサウンドには驚かされる。今までのウッドドームイヤフォンの印象を大きく覆すものだ。中低域のパワー感は01よりも抑えられ、より全体のバランスを重視。極めてモニターライクな音作りのイヤフォンだ。
それでいて、トランジェントの良いウッドドームの特徴や、新モデルの特徴である分解能の高さも維持している。そのため、聴いていると、バランスド・アーマチュアのような音の細かさや明瞭さがありながら、金属質で不自然な響きがない。
また、ダイナミック型のような量感のある低域を再生しつつ、ダイナミック型にありがちな中低域のボワッとした膨らみや、解像感の低下も無い。BAとダイナミックの“いいとこどり”のようなサウンドだ。
ウッドドームユニット採用のイヤフォンをこれまで聴いて、「ウッドドームイヤフォンはこんな音」という印象を持っている人が体験すると、驚くサウンドだろう。方式や振動板を意識しなくても、モニターライクで音の自然なイヤフォンが欲しいという人には、要注目モデルだ。
WOOD 02と03のサウンド傾向は非常に似ている。03の方が、中低域の元気が少しアップ。ストイックな02と比べ、03はより幅広いユーザーが気にいるであろう音作りになっている。しかし、それも過度な違いではなく、中低域がボワッと膨らむような違いではない。両者には1万円ほどの価格差があり、ケーブル着脱機構の有無といった違いもあるが、03のコストパフォーマンスの良さは見逃せないポイントだ。