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フラッグシップ超えの11chでも従来サイズ。デノンAVアンプ「X6300H」。9chのX4300Hも

 ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドのAVアンプの新製品として、11.2chの「AVR-X6300H」と9.2chの「AVR-X4300H」2機種を10月中旬に発売する。価格は「AVR-X6300H」が28万円、「AVR-X4300H」が16万円。カラーはどちらもブラック。

11.2chの「AVR-X6300H」

 どちらのモデルもオブジェクトベースのサラウンド「Dolby Atmos」と「DTS:X」に対応する。最大出力は、X6300が250W×11ch(6Ω)、X4300が235W×9ch(6Ω)。

9.2chの「AVR-X4300H」

フラッグシップを超える11chアンプ搭載「AVR-X6300H」

 X6000番台は海外では以前からラインナップされていたが、今回のモデルから日本にも投入される事になった。今回発表された2モデルはミドルクラスと位置付けられているが、X6300は11chアンプを搭載した強力なモデルで、フラッグシップの9.2chアンプ「AVR-X7200WA」(355,000円)は継続販売するが、その下に位置する“準フラッグシップ”として訴求していく。11chアンプにより、外部アンプを使わずに7.2.4chの同時プロセッシングが可能。

 開発設計を担当した高橋佑規氏によれば、X6300Hの開発コンセプトは「X7200のクオリティをX4200の箱の中へ」と「11chパワーアンプ内蔵」、オーディオの基本に立ち返り、デジタル入力からDAC、ボリューム、パワーアンプといった構成を見直し、新しいボリュームのコンセプトを提案する「オーセンティックオーディオと新ボリューム」の3点だという。

開発設計を担当したグローバル Product ディベロップメント プロアクト エンジニアリングの高橋佑規サウンドマネージャ

 X6300は11chものアンプを搭載しているが、X7200と同様に、1chごとにアンプの基板を分けているこだわりの「モノリス・コンストラクション・パワーアンプ」構造を採用。それでありながら、より小さな筐体に、より多い11chアンプを内蔵するために、「11chチェッカー・マウント・トランジスタ・レイアウト」という新しい技術を投入している。

サイズの比較。左からX7200、X4200、X6300。X6300はX4200と同じサイズだが、内蔵パワーアンプ数はX7200より2ch多い
1chごとにアンプの基板を分けているこだわりの「モノリス・コンストラクション・パワーアンプ」構造

 この技術は、ヒートシンクに出力パワートランジスタを一列に並べると筐体に入らなくなるため、格子状に並べるというもの。スペースファクターの問題を解決すると共に、X7200と比べても熱効率が改善。より安定性の高いスピーカー駆動が可能になったという。

ヒートシンクに出力パワートランジスタ格子状に並べる「11chチェッカー・マウント・トランジスタ・レイアウト」

 パワーアンプブロックを分離させることと共に、電源供給ラインも独立させる事で、セパレーションやクロストークも改善している。

パワーアンプブロックを分離させることと共に、電源供給ラインも独立

 パワーアンプの入力素子には、ハイエンドと同じデュアルトランジスタを採用。差動回路を構成するトランジスタの温度ドリフトが最小になり、カレントゲインの差も小さく、DCオフセットを最小化。これにより、微小信号や低域の表現力が向上したという。

 出力素子はDHCT(Denon High Current Transistor)を採用。「普通の素子は3本足だが、これは4本足。温度補償回路を内蔵し、そのための端子が多い。急激な温度変化に追従でき、アイドリングの安定度が向上する」(高橋氏)という。さらに、薄膜技術によりトランジスタの熱効抵抗を下げ、放熱性も高めた。

出力素子もX7200と同じDHCT

 出力トランジスタの足には、温度検出回路を搭載。異常に温度が上昇した際の保護を行なっている。以前はヒートシンクで検出していたが、それよりも即時に検出できるため、音質に影響があった電流リミッタを省く事に成功している。

 電源部には、X4200と比べ、コア積厚を75mmから80mmに拡大したトランスを採用。パワーは125Wから140Wにアップした。ブロックコンデンサは直径を35mmから50mmに拡大、電解紙と箔の選定、巻き方、固定材まで音質にこだわったという。4Ωスピーカーのドライブにも対応可能。

パワートランス

 ボリュームにもこだわっている。X4200では、1つのチップに8ch分のボリュームやセレクター機能が搭載されたものを使っていたが、「オーセンティックなオーディオとしてAVアンプを開発するため、これらの機能を基板の最適な位置に分けて配置したかった」(高橋氏)という。

 そこで、32ピンの汎用性の高いパッケージを3つ使い、1つを8ch電子ボリューム、2つをセレクタと、異なるチップに役割を分けた。これにより、基板の真ん中に電子ボリュームを配置。入力の近くに入力セレクターのチップを、出力の近くに出力セレクタと、直近に配置する事も可能になり、よりシンプルストレートな回路設計を実現した。

従来は、上の黒いワンチップを使っていたがセレクタとボリュームを下記の3つのチップに分けた
分けたチップは、回路の直近に配置

 DACは、旭化成の「AK4458VN」を2基搭載。「8ch DACとしては性能も音質も最高だと考えている」という。DAC専用基板も用意し、DACの性能を引き出している。

DAC専用ボード。旭化成の「AK4458VN」を2基搭載している

 X7200と同様にアナログデバイセズのDSPを4基搭載。余裕のあるデジタル信号処理を可能にしており、11.2ch分のデコードやアップミックスを実現。ドルビーTrueHD信号をストレートにデコードするだけでなく、サラウンド機能の「Neural:X」をかけたり、DTS-HD信号をドルビーサラウンドでアップミックスする事も可能。

 AVアンプの基幹技術である、サラウンド再生に必要な信号処理回路を1つ1つのブロックに独立させ、32bitフローティングポイントDSPなどを用いてディスクリート化する「D.D.S.C.-HD(Dynamic Discrete Surround Circuit)」にも処理能力を活用している。

 マルチチャンネル信号を24bit精度に拡張し、元のアナログ波形に近付けるという「AL 24 Processing Plus」や、音場補正技術の「Audyssey MultiEQ XT32」も搭載。対応するBDプレーヤー「DBT-3313UD」と接続する事で、ジッタ・フリー伝送を可能にする「Denon Link HD」もサポートする。

 筐体のボトムシャーシは通常の1mmから1.2mm厚にアップ。パワーアンプブロックや電源トランス部には、さらに1.2mmプレートを追加し、剛性をアップさせている。インシュレータには楕円形のリブを採用し、安定度を向上させた。

X6300の背面

X7200の表現力に迫るX4300H

 X4300のコンセプトは「X7200の表現力を実現する事」、前モデルの7chから9ch化する事で「内蔵アンプだけで5.2.4chを実現する事」、前述のX6300と同様に「オーセンティックオーディオと新しいボリューム」を実現する事。

 X4300のサイズは、前モデルのX4200と同じだが、チャンネルが7chから9chに増加するため、パワーアンプは新規レイアウトを採用。X4200は1枚の基板に7chのパワーアンプをレイアウトしていたが、X4300では4chのパワーアンプブロックと5chのブロックに分けることで、相互干渉を低減している。

左がX4200、右がX4300

 ヒートシンクも、鉄板をかしめたコルゲート構成のラジエータから、新モデルでは剛性の高いアルミ押出し型に強化。不要な振動を抑え、透明感の高い音になったという。

X4300では4chのパワーアンプブロックと5chのブロックに分けることで、相互干渉を低減した

 電源部には大型のEIパワートランスと、大容量ブロックコンデンサを採用。全チャンネルで、4Ωスピーカーのドライブに対応する。

 ボトムシャーシは1mm厚だが、トランスを設置する部分には1mmのプレートを追加。合計2mmとして剛性をアップさせた。さらに、大型EI電源トランスは高密度フットの上に実装する事で、不要な振動が周辺回路に影響を及ぼさないよう配慮したダイレクト・メカニカル・グラウンド構造になっている。

パワートランス
X4300の背面

ネットワークモジュールを刷新

 どちらのモデルもネットワークオーディオプレーヤー機能を備えているが、新世代のネットワークモジュールを搭載している。デノンは、海外市場向けに「HEOS」というネーミングで、ネットワーク再生対応スピーカーなどを販売している。このHEOSのノウハウをAVアンプに投入したのが今回の新しいモジュールとなる。

フロントパネルには「HEOS」のロゴも

 よりハイスペックなSoCと、高速なメモリを採用する事で、処理速度が大幅に向上。無線LANの接続性や接続安定性も向上している。スペックとしては、IEEE 802.11b/g/nに加え、11aもサポート。さらにデュアルバンドで2.4GHzに加え、新たに5GHzもサポートした。

 さらに、2×2のMIMOにも対応。従来は2本のアンテナの中で、通信品質の良い方のアンテナのみで通信する方式だったが、新モデルでは2本を両方使って通信が可能(11n時)。接続時の安定性が向上し、サーバーからハイレゾ音源を再生する場合でも、再生音が途切れにくいという。

2×2のMIMOにも対応。ワイヤレスでハイレゾ音源の安定した再生ができるという

 再生対応ファイルは、DSDが5.6MHzまで、WAV/FLACは192kHz/24bitまで、Apple Losslessは96kHz/24bitまでサポートする。MP3/AACの再生も可能。USBメモリに保存したファイルの再生にも対応する。AirPlay、インターネットラジオ受信も可能。

 Bluetooth受信機能も用意。スマートフォンと手軽に連携してワイヤレス再生できる。FM/AMラジオチューナも備え、ワイドFMにも対応する。

 iOS/Android/Kindle Fire対応のリモコンアプリ「Denon 2016 AVR Remote」も配信。スマホやタブレットからAVアンプを操作でき、PCやNASなどに保存した音楽ファイルの検索、再生キューの作成・保存、ネットラジオの選局なども可能。

 HDMI端子は、どちらのモデルも8入力、3出力装備(内ゾーン2×1)。全端子がHDCP 2.2に対応し、4K/60p/4:4:4/24bitの映像も伝送可能。4Kアップスケーリング機能も備えている。

 X6300は2系統のマルチゾーンプリアウトを装備。メインゾーンで使っていないアンプがある場合に、そのアンプをゾーン2、ゾーン3にアサインできる。それぞれにゾーンに、個別に入力の選択やボリュームの設定が可能。全ゾーンに同じ音楽を流すこともできる。

X6300は、福島県白河市にあるデノンの自社工場で生産

 X6300は、福島県白河市にあるデノンの自社工場で生産。設計も同工場で行なっており、「設計が生産の近くにいる事で、コミュニケーションが密にとれる事も強みだと考えている」という。

 HDMI以外の端子は、X6300が入力としてコンポジット×5、コンポーネント×2、アナログ音声×8、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力端子は、コンポジット×2、コンポーネント×1、11.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1を装備。Ethernet、Denon Link HD、USB、RS-232C、DCトリガー端子なども備えている。

 X4300は入力としてコンポジット×4、コンポーネント×2、アナログ音声×7、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力端子は、コンポジット×2、コンポーネント×1、11.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1を装備。Ethernet、Denon Link HD、USB、RS-232C、DCトリガー端子も備えている。

 X6300の消費電力は750W。外形寸法は434×383×167mm(幅×奥行き×高さ)。重量は14.5kg。X4300は消費電力710W。サイズは434×389×167mm(幅×奥行き×高さ)。重量は13.5kg。