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ASMRをより楽しむなら“現実の音に近い音量”に!? 聴きたい音別イヤフォンの選び方
2026年2月5日 08:00
聴いているだけで癒やされるASMRコンテンツやバイノーラル音源が人気だ。だが、それ聴くためのイヤフォンや、“聴く時の音量”を気にしたことがあるだろうか。「好きなイヤフォンを使い、好きな音量で聴けばいいのでは?」と考えがちだが、ASMRを研究し、ASMRを聴くための製品を開発している、ガチな研究員によると、ASMRをより楽しむために、適切な周波数帯や音量があるという。
そこで、川崎のfinal本社へ乗り込み、その研究員である秋山俊宏氏を直撃。実際に、肌に触れられているような心地良い感覚を指す「ASMRを感じるための聴き方」を教えてもらった。
なお、あくまで現時点で有力な説を元に秋山氏が推奨する内容となるため、「一つの指針として参考にしてほしい」とのことだ。
“ASMRコンテンツ”を3グループに分類! 目的別イヤフォンの選び方
まずは、ASMRコンテンツを楽しむためのイヤフォン/ヘッドフォンの選び方について聞いてみる。
昨今「ASMRコンテンツ」と呼ばれているものは、空間の情報ごと収録されたバイノーラル音源による作品や配信がほとんどだが、そんなバイノーラル音源の中にも、ささやき声やタッピング、耳かきロールプレイのほか、咀嚼音、モノを切る音、自然の音をバイノーラルマイクで収音したものなどその種類は様々。
そんな様々な音を全てカバーできるイヤフォン/ヘッドフォンとは? と考えると、なかなか難しいところがある。秋山氏は、「ASMRを感じやすいコンテンツ」「リラックスサウンド」「音を楽しむコンテンツ」と大きく3つにグループに分類。自分の好きな音や、目的に合ったイヤフォンを探すのが有効だという。
ASMRを感じるなら、適した物理特性のイヤフォンがオススメ
「ASMRを感じやすいコンテンツ」は、主にささやき声やタッピング、シャンプーや耳かきのロールプレイなどが挙げられる。バイノーラル音源を聴くことで、実際に自分に触れられているような錯覚が起きやすい音の要素が多く、それによって、リラックス状態になりつつ身体がゾクゾクッとする独特の感覚「ティングル(tingle)」を感じやすいのだという。
そんな、ティングルを感じたい人向けにオススメのイヤフォン/ヘッドフォンは、ティングルを感じるために現時点で最適な物理特性を備えたもの。つまり、やはり秋山氏の思想を取り入れた2機種。ワイヤレスのモデルでは「ZE3000 for ASMR」、有線モデルであれば周防パトラさんコラボモデルの「VR1000 for ASMR Patra White/Patra Black」だ。
ZE3000 for ASMRは別記事でも取り上げているが、人が安心感を感じてリラックス状態になるために必要な低域と、ティングルを感じるのに重要な中高域を滑らかに整え、ささやき声や息づかいなど、収録された音のディテールが自然な音色と定位で聴こえるように調整しているほか、筐体の形にもこだわりが。
イヤフォンが、耳珠の内側に触れることで、音が再生されたときに微弱な振動が伝わることで、より脳が音を現実で起きている現象に錯覚するようなアプローチが取られている。
そしてZE3000 for ASMRだけでなく、VR1000 for ASMR Patra White/Patra Blackの方も秋山氏の思想が組み込まれた音作りとなっており、これまでのコラボモデルとは一味違うという。
パトラさんのコンテンツのみならず、ASMRコンテンツ全般でティングルが感じやすい音作りに仕上げられているため、有線モデルでのイチオシはこのVR1000 for ASMR Patra White/Patra Blackとのことだ。
入眠時にリラックスサウンドや配信やラジオを聴くなら“着け心地”を重視
寝ホンの人気からもわかる通り、ASMRコンテンツに限らず、配信やラジオなど、何か音を聴きながら眠る人は少なくない。そして、そんなユーザー達に好まれている使い方が、やはり「小さな音量で楽しめること」。
そういった目的の場合は、必ずしもティングルのトリガーとなる音を聴く必要はないので、雨音や波の音、焚き火の音といった自然の音やそれらを表現した音や、YouTubeなどで睡眠誘導などのジャンルで配信されている音などのリラックスサウンドを聴くためのイヤフォン選びになってくる。
前述の“ASMRを感じること”とは、リラックスすることの重要度は変わっていないものの、目的の方向性が少し異なっているわけだ。
なので、イヤフォンに求められる要素は、小さな音量でもバイノーラル音声やその他のコンテンツもそつなくこなせること。さらに寝る時に聴くのであれば、横になったときの快適さも考えたい。
そこで秋山氏がオススメするfinal製品は、やはり超小型で装着時の圧迫感も感じにくい完全ワイヤレスイヤフォン「ZE500 for ASMR」。寝ホンに特化した設計で、タッチセンサーも再生/停止と電話の対応/終了のみ、ノイズキャンセリングやマルチポイント接続も非搭載として超小型ながら、ノイズと刺激的な音が徹底的に排除された音質も実現している。
ノイズキャンセリングが欲しい人には、agブランドのCOTSUBUの筐体をベースにしつつ、音質もパワーアップしている「ZE300」も寝ホンとしてオススメだ。
そして、有線モデル「E500」も忘れてはいけない。バイノーラル音声やASMRコンテンツ向けとして今もなお人気のモデル。1,980円という価格ながら、リラックス状態を導くのに重要な低域が良く出て、高域が滑らかな、「丸く、優しい音」に仕上がっているのがポイント。バイノーラルコンテンツ全般に好まれるのも納得のモデルと秋山氏は話す。
筐体は小さく軽いことで、装着感を感じさせないのも良いポイントとなっている。有線モデルなので、寝ホンとしては人を選ぶかもしれないが、秋山氏の中でも特にオススメのモデルとのことだ。
音そのものを楽しむなら音質特化モデルも
入眠時以外でリラックスサウンドを楽しむ、となるとやはり音質特化モデルになってくるという。その中でも秋山氏のオススメが「TONALITE」。ユーザーの身体形状をスマホでスキャンして、イヤフォンの音色を個人最適化するfinalの独自技術「DTAS」を搭載した最上位モデルだ。
筐体が大きいので寝ホンとしては人を選ぶが、その音質は小音量でも発揮。ASMRコンテンツを聴くと、ティングルを感じやすい特性からは外れてしまうが、「小さな音量で綺麗な音を聴く」という使い方では、秋山氏イチオシのモデルだ。
そして、生産完了モデルにはなってしまうが「ZE8000」。MK2ではなく、初代モデルの方だ。こちらも自分ダミーヘッドという個人最適化がサービスがあったが、個人最適化されていない状態でも、「小さな音量で聴く」ことに向いたモデルとのことだ。
そして、バイノーラル音源の中でも、咀嚼音、切断音といった、音そのものを楽しむ“Oddy Satisfaction”というジャンルを楽しむのであれば、秋山氏は「COTSUBU for ASMR 3D」もオススメに挙げたいと話した。
“ASMRを感じる”ためには音量が重要。極力「現実に近づける」
ASMRコンテンツを聴くときの音量はどれくらいに設定しているだろうか。finalでは「音量を小さくしてほしい」という声が多かったことから、ASMR向け完全ワイヤレスイヤフォンなどを中心に、アプリでボリュームの領域を調整できる「ボリュームステップ最適化」機能を搭載しており、「どうやら小音量で聴いている人が多いようす」とのことだ。
もちろん、寝ホンとして音を聴いていたい、小さな音量で聴きたいという目的であれば何も問題が無いのだが、ASMR……“ティングルを感じる”という目的の場合は、しっかりと適した音量があると秋山氏は説明する。
それは、極力現実で聴こえる音量に合わせること。
その理由は、“ティングル”という現象が、音を聴くことで、現実で何かが起こっていると脳が錯覚して起こるものだと考えられるからなのだという。例えば、息を吹きかけられる音で頬の辺りに風を感じたり、耳を塞ぐ音で実際に圧迫されている感覚がするといったことが起こる。
これは、もともと聴覚が触覚から進化したような感覚器官のためなのだという。本の表紙をなでる音なども聴いているとだんだん自分が本を触っているような感覚になってきたりと、耳から入る情報が皮膚感覚とリンクすることはよくあるそうだ。
とはいえ、リアルな音量を設定するために隣で誰かにささやいてもらって調整して……なんてことをするのはなかなか難しい。想像で大体これくらいの声で聴こえそう、という音量に詰めていくのも良いが、今回の取材で調整に有効な方法を見つけることができた。
この動画は、ZE3000 for ASMRの特設ページでも紹介している、まこと。さんの動画で耳を塞ぐシーンがある。実際に自分でも手のひらを使って耳を塞いでみて、同じくらいの音量になるようにこの動画の音量を調整して、改めて聴いてみてほしい。
コンテンツの制作者によって、音量が異なるので、同じ音量設定で全てカバーできる訳ではないのだが、こちらで設定してみた音を基準として、他のコンテンツでも音を調整してみると、ティングルを感じやすくすることができるかもしれない。
ちなみに、YouTubeの動画でASMRコンテンツを楽しむ場合は、まず「一定音量」の設定を解除しよう。スマホアプリの場合、歯車アイコンから、その他の設定を開くと確認できる。一般的な動画では音が一定になって聴き取りやすくなったりするのだが、リアルな音量差の情報も収録しているバイノーラル録音のコンテンツでは逆効果になってしまう。
ASMRを楽しむ、ティングルを感じるためには“リラックスが重要”。自分に合ったコンテンツ選び
ティングルを感じるためにもう一つ大事な要素がある。それがリラックス状態になること。
「疲れたときに聴くのがやはり有効です。元気バリバリで精神的にも満たされているときは、逆に効果が薄いかもしれません」と秋山氏も話す。
そして、リラックスするためのコンテンツ選び方は「自然体で聴けるもの」を探すこと。
ASMRコンテンツは、そのうちの大多数が「ロールプレイ」の要素を持ったものになっており、例えば、演者はエステティシャンや、恋人、母親、ある意味VTuber達は存在そのものがそういう役割になっていたりもする。ロールプレイ要素のないコンテンツというと、そもそも声無しで「音に特化したもの」や、バイノーラルマイクを通したただの雑談などになっている。
この辺りの分類は、先ほどのZE3000 for ASMRの特設ページに紹介されている動画が分かりやすい。前半は声無しの音特化のコンテンツ、そして後半はロールプレイを重視したコンテンツ、ささやき声や会話が入る中間の動画は、その両方の要素をもったコンテンツといったところだろう。
秋山氏によると、リラックスに重要な要素はこのロールプレイの部分。ロールプレイと聞くと、聴き手側も役になりきらなきゃいけないのかと感じてしまうかもしれないが、そういった意識を感じさせないような、自然に没入できるコンテンツを聴くことが重要なのだという。
とくに、優しく包み込まれるような親密感を感じられるものなどが良いと秋山氏は話す。「誰かに受け入れられているという状況」こそ、敵対心や警戒心から解放されて、心が落ち着いて自然とリラックスできるためだ。
そして、ASMRコンテンツが誤解されがちな要因ともなっている成人向けのコンテンツだが、実はこの「誰かに受け入れられている状況」をしっかり再現したものであれば、ある意味究極のリラックス作用を持ったコンテンツになり得るとのことだ。
ASMRコンテンツを色々聴いてみると、話している内容がちょっと気になったり、謎のシチュエーションが展開されていたりといったことはよくある。そういったものに違和感を覚える場合は、無理に聴き続けずに、次へ次へと無意識で聴いてられるものを探していくと、自分のティングルを感じるトリガーとなる音や状況を見つけやすくなりそうだ。
秋山氏が考えるASMRイヤフォン/ヘッドフォンのこれから
ASMRコンテンツを聴いてティングルを感じることのメカニズムは、まだ全て解明されたわけではないので、ZE3000 for ASMRやVR1000 for ASMRも、秋山氏の研究から現時点で有力な仮説を用いた周波数特性が採用されている。
前述の通り、ティングルを感じるためには、リラックス状態と安心感、聴覚を通じて現実と錯覚することが大事なようだ。そこで秋山氏に、どのような機能をもったイヤフォン/ヘッドフォンが登場すれば、ASMRをより楽しむことができるそうか、未来の話を聞いてみた。
まずは、よりASMRを感じやすい周波数特性を解明していくことが、重要になってくるのだが、面白い視点での話では、「もういっそのこと直接触覚に働きかける機能を搭載してしまう」ことだという。
例えば、耳を温める安眠グッズがあるように、温度もリラックス状態に導く要素の1つ。そこで温度をコントロールできる機能を搭載したイヤフォン/ヘッドフォンは効果がありそうなのだとか。
そしてASMRコンテンツでお馴染みなのが吐息。これもイヤフォン/ヘッドフォンから実際に風が出て来たら良いのではないかと、秋山氏は話す。
筆者も吐息系の音をヘッドフォンで聴くと、頬のあたりに風が当たっているように錯覚することが多い音なのだが、実際に風があたったらどのようになるのか……というか、それは果たして心地良いのだろうかという点が若干気になる。
音だけでなく触覚にも作用する、「4D映画のような体験がASMRでもできることが理想」とも秋山氏は述べる。どれくらい未来の話になるかはわからないが、より本格的にASMRの研究が進んでいくと、これまでのイヤフォン/ヘッドフォンの常識を超えた新しいデバイスが誕生するのかもしれない。



















