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BS 8K/4K実用放送に向けピクセラが4Kチューナ開発へ。'18年夏に2万円以下で
2017年3月2日 14:52
2018年12月にスタートするBS/110度CS衛星を使った4K/8K実用放送に向け、NHKと放送サービス高度化推進協会(A-PAB)が現在試験放送を行なっているが、この試験放送の受信に対応した4K STBをピクセラが開発。2017年の夏に、4K放送関連企業向けに販売予定。価格は未定。さらに今後のロードマップとして、'18年の4K/8K実用放送に対応した4Kチューナ搭載STBを2018年夏に、コンシューマ向けに2万円以下で発売する計画も明らかにした。
BS/110度CS衛星を使った4K/8K実用放送(以下高度BS放送)に向け、昨年の8月からNHKが、12月からA-PABが試験放送を開始しているが、これを見るためには、現在大掛かり、かつ高価なシステムが必要で、NHKの支局など限られた場所でしか見ることができないという。
これは、高度BS放送に対応した安価な半導体がまだ存在しないため。そこでピクセラでは、汎用的な映像処理チップで高度BS放送に対応するチューナを開発。高度BS放送から流れてくる映像の解析や表示を全てソフトウェアで処理をしているのが特徴。
特定のチップに限定せず、「4K/60pをデコードできるチップであれば、ソフトを移植すれば様々なチップへと展開できる。比較的低価格なチップを利用できる事から、高度BS放送普及時のチューナの原価低減に貢献できる」(栗原良和COO)という。
チューナのメインボードに使っているSoCは非公開だが、「実際に海外などでIP STBなどに採用されている汎用的なもの」だという。CPUはARM Cortex-A9デュアルコア、ビデオデコーダはHEVC Main10 Level 5.1をサポート。HDRもサポートする。発表会場では、BS 17chで試験放送された、HEVC Main10 2160/60p SDRのデータを、ファイルとしてチューナに入力。HDMI 2.0aを使って4Kテレビへ出力するデモも行なった。
このチューナは高度BSの4K放送受信専用で、地上派や2KのBS/CS放送には対応しない。4K/8K放送の録画の仕様はまだ決まっていないが、このチューナも視聴のみで録画機能はない。また、4K/8K放送のコンテンツを保護するためのCAS(A-CAS)も仕様がまだ公開されていないため、今回のチューナはCAS非対応となる。
高度BS放送に向けて、対応機器を開発しているメーカーや、コンテンツ制作者などへの販売を予定している。
2018年夏にコンシューマ向け4Kチューナを2万円以下で
企業向けの試験放送チューナの延長にある、今後の開発予定として、高度BSの受信に対応するコンシューマ向けの4K STBを2018年夏に、2万円以下の廉価で販売する事を目標として掲げている。このSTBは、A-CASをサポートする。
既報の通り、4K実用放送は2015年から124/128度CS放送で既にスタートしており、それに対応した単体チューナや、チューナを内蔵した4Kテレビも発売されている。しかし、それらの製品は、2018年12月からスタートする高度BS放送の受信ができない。
ピクセラでは、2018年の終わりまでに、こうした高度BS非対応の4Kテレビが累計900万台になるとみている。この市場に向け、2018年12月の実用放送スタート前の、2018年夏に、2万円以下と廉価な高度BS対応のSTBを開発する予定。
4K STB単体だけでなく、4KモニタとSTBをセットで、高度BS対応のスマートテレビとして発売する事も予定している。
こうした企業向け、コンシューマ向けの4K STB開発におけるピクセラの強みとして、製品開発本部の上田賢嗣氏は、「日本特有の複雑なISDB方式を理解し、受信機をこれまで開発してきた実績と、様々なテレビ向け半導体(SoC)に(ソフトウェアとして)適用できる開発力が強み。SoCによっては、クセがあったり、イレギュラーな事が起こる事があり、そうしたものに対応していくソフトウェア開発力が求められる」と説明。
他社製品との位置づけについて栗原COOは、「(日本のチップベンダーとして)高度BS放送向けのチップを開発しているのは、東芝さんやルネサスさんが作らなくなったので、今ではソシオネクストさんしかいない。しかし、ソシオネクストさんはどちらかというと8Kまでの対応を見据えたハイエンドタイプを目指していらっしゃる。我々はどちらかといえばローエンド向けに、技術的には枯れた、価格も安価なチップが使える事で、低価格なSTBが作れると考えている」とした。
今後はコンシューマ向けのSTBにとどまらず、例えばCATVや、ホテル・旅館・民泊などの市場、サイネージ向けに映像を表示するデバイスとしても、高度BS 4K受信機の技術は展開できると見込んでいる。
4K STBはピクセラの技術を結集したスマートホームハブへ
またピクセラでは、強みを活かせる市場の拡大を目指し、スマートホームハブの開発や、ホームIoT事業、AIやビッグデータを、新たな事業の柱として構築する事を経営戦略として定め、投資や製品開発を進めている。
4K STBは将来的に、4K放送の視聴だけでなく、家庭内にあるIoTの状況をテレビで確認したり、AR/VRコンテンツを表示するなど、AI、IoT、AR/VR機能も盛り込んだ“スマートホームハブ”へと進化する余地がある事から、ピクセラの技術を結集した製品として、スマートホームハブの開発・普及展開に注力。新しいパートーナー企業と、新分野の開発にも取り組んでいるという。
さらに、センサー、ゲートウェイ、IoTサーバー、スマホアプリを自社で揃えるホームIoT事業戦略や、ピクセラのデバイスから得られた情報を、製品やサービスの向上に繋げ、新たなビジネスモデルを構築していくAI・ビックデータ事業などについても説明。
AI・ビッグデータ分野では、ピクセラのデジタル放送受信機の技術を通して、視聴データを収集し、AI技術を有効利用。Microsoft Cognitive Services(マイクロソフト認知サービスAPI)というAI技術を使った、新しいサービスも開発しているという。
こうした施策を行ない、2019年9月期に売上高80~120億円、営業利益率10%、営業利益10億円という中期目標を掲げた。