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地デジの放送波を計測して“ゲリラ豪雨の予測”に活用。NICTが新手法開発

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)電磁波研究所は9日、地上デジタル放送の電波を使い、水蒸気量を推定する手法を開発。このデータを天気予報の数値予報モデルに取り入れ、解析する事で、ゲリラ豪雨など都市部の局所的な気象現象の予測精度向上に寄与できるという。

開発された、小型かつ安価なリアルタイム測定装置

 NICTは、ゲリラ豪雨などに対する防災・減災を目的とし、半径60km、高さ10kmの範囲の雨雲を30秒間隔で高速に3次元観測できる「フェーズドアレイ気象レーダ」を大阪大学、東芝と協力して開発するなど、雨を観測する技術の研究開発を進めている。

 しかし、雨の元である水蒸気は“レーダでは見えない水”であり、気象予報にとって重要である一方、広い範囲にわたって効果的に観測する手法が限られていた。

 そこで、地デジ放送波に着目。電波は、大気中の水蒸気量によって伝わる速度が変化するため、その変化量を精密に測定することで、水蒸気量を知る事ができる。これを踏まえ、地デジ放送波の「遅延プロファイル」(受信電力を伝搬遅延時間の関数で表したもの)の位相から、電波の伝搬遅延を高精度に測定する手法を開発した。

 ソフトウェア無線の技術を使い、小型かつ安価なリアルタイム測定装置を開発。実観測において、地上気象観測結果と整合し、かつ、より細かい変動をとらえた水蒸気量観測結果が得られたという。

 地デジ放送波を受信するだけで計測が可能で、新たな送信機なども不要。時間分解能も高く、実利用でも1~30秒程度ごとに水蒸気量を観測できるという。さらに、従来使われているGPS/GNSS可降水量やマイクロ波放射計などを利用した水蒸気量観測では、いずれも鉛直方向に水蒸気を観測するが、新手法では最も水蒸気の多い地表付近を水平方向に観測可能。鉛直方向の観測を補い、「気象予報の精度向上への寄与が期待される」という。

 今後は、精度検証や気象予報の精度向上への寄与度合いの調査などを進め、現在研究開発を実施中の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)・レジリエントな防災・減災機能の強化」の研究課題として関東地域に多地点展開。今後2年間にわたり、実証実験が行なわれる計画になっている。