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CDなのにハイレゾ? 普通のプレーヤーで聴ける「MQA-CD」登場。リッピングも
2017年3月21日 00:00
176.4kHz/24bitのMQAフォーマットで収録した世界初の音楽CD「MQA-CD」が3月17日に発売された。「ハイレゾのMQA形式だが、MQA非対応のCDプレーヤーでも聴ける」という新たなCDの説明会が17日に開催。MQAのチェアマンであるボブ・スチュワート氏や、制作したUNAMASレーベルのMick 沢口氏が、高音質の仕組みなどを解説した。
通常のCDプレーヤーでも高音質再生
発売されるMQA-CDはハイレゾ音源制作で知られるUNAMASレーベルによる「A.Piazzolla by Strings and Oboe」で、価格は2,500円。演奏はUNAMAS Piazzolla Septet。発売元は沢口音楽工房、販売元はOTTAVA。
MQAは、ハイレゾの高音質を維持しながら、ファイルサイズやストリーミング帯域を抑えられるオーディオ形式。17日にリリースされたのは、UNAMASのクラシック・シリーズの新作として'16年末に発売された作品で、MQAフォーマットによりマスタリング。ディスクには1つのWAVデータとして収められ、プレーヤーがMQAに対応している場合は自動的にMQAデコードを行ない、サンプリングレート176.4kHz/24bitで再生。MQA非対応プレーヤーの場合は、通常のCDと同じ44.1kHz/16bitで再生する。
MQAデコードに対応したCDプレーヤーは、MeridianのリファレンスCDプレーヤー「808V6」という製品があるが、それ以外でも、光/同軸デジタル出力端子を持つ通常のCDプレーヤーからも、MQAデコード対応のDACへデジタル出力して再生できるという。
また、パソコンのCDドライブで再生し、MQA対応のUSB DACであるMeridian「Explorer2」などを接続するという方法も紹介。Mac用のプレーヤーソフト最新版「Audirvana Plus 3」も、MQAデコードに対応している。
MQAは、“音楽の折り紙”と称する独自の手法で、ハイレゾ音源を少ない容量で収められることが大きな特徴としてこれまでも説明されているが、MQAのスチュワート氏は、もう一つの柱として「時間軸の解像度の高さ」を改めて説明。デジタルオーディオの時間軸での“音のボケ”を低減することも大きなメリットとしている。
今回のMQA-CDでは、前述した通りMQA非対応のCDプレーヤーでもCDと同じ44.1kHz/16bitで再生可能。その場合も“音のボケ”が低減されていることで、従来のCDと比較しても高音質を実現するという。
リッピングも可能、「製造コスト変わらない」
さらに、通常のCDと同様にパソコンでのリッピングも可能。WAV形式で取り込んだ後、MQA対応のポータブルプレーヤーなどに転送して再生することも可能。今回のMQA-CD制作にあたりMick 沢口氏と協力したシンタックスジャパンの代表取締役 村井清二氏も、実際にリッピングしたMQA-CDの音源をオンキヨーのポータブルプレーヤーで聴いているという。
そして、スチュワート氏がMQAの最大のメリットとして強調するのが、「音楽のダウンロードやCDのリッピングを知らない人も、シンプルに音楽CDとして再生できる」という点。より多くの人に高音質のMQAを届けられるようになることへ大きな期待を寄せた。
MQAでエンコードした後は、通常のCDと同じ工程でCD化できるのも特徴。プレス工場などには特別な設備が必要なく、制作者は従来と同様にDDPファイルをプレス工場へ納品。MQAへのライセンス料は必要だが、工場を変える必要もなく「製造コストも変わらない」としている。
初のMQA-CDを制作したMick 沢口氏は、以前は48kHz/24bitのMQAなどは配信サービス向けに制作していたものの、シンタックスジャパンの村井氏と話す中で、「これまで配信というアイディアしかなかったが、44.1kHz/16bitにもできるなら、CDにできるなら面白い、と盛り上がった」というエピソードを明かし、完成したMQA-CDについて「CDの器に新しいハイレゾが入る、“オールドボトル、ニューワイン”が実現した」と述べた。
今後のMQA-CD対応レーベルや作品について、具体的な作品名などは明らかにされていないが、MQAの日本代表を務める鈴木弘明氏は「(既にMQA制作で契約している)ユニバーサル・ミュージックが関心を持っている。特に(海外に比べてCDが売れている)日本では実現しやすいのでは」としている。