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NHK番組制作にAI活用、ロボットとTV視聴。IoTと連携する「ハイコネ」

 NHK放送技術研究所で5月25日~28日に「技研公開2017」が開催。これに先立ち、23日にマスコミ向け先行公開が行なわれた。AI(人工知能)を活用した番組制作支援や、放送番組連携サービス関連の取り組みを中心に紹介する。

入口すぐに、AI活用展示のコーナー

AIで番組制作支援。テレビ視聴方法は状況に応じて自動選択

 今年の大きなテーマの一つが「AI」や「機械学習」で、これまで技術研究としては蓄積されてきた内容を、現代の生活に合わせた形で紹介する展示を行なっている。

NHK放送技術研究所

 TwitterなどのSNSでは、目の前で起きた事故や災害の目撃情報が写真などで公開されるケースも多いが、そうした情報が実際のニュースとしてテレビで取り上げられる場合も、現在は人の手で情報をチェックする必要がある。全て把握するには24時間体制をとらなければならなくなる。

 これを機械学習を使って省力化するという取り組みが進んでおり、一般の人が投稿した内容を元に、取材を行なったり、自治体などが提供したデータから番組制作に使える情報を取得し、原稿を自動で生成する制作支援システムを開発。あくまで支援のため、実際の放送などに使う場合は人の手で確認する形となるが、その準備段階までをスムーズにできる点がメリット。

災害時の原稿作成や、SNSなどからの情報取得

 ツイートから情報を検出する場合は、文章構成なども分析し、内容に信頼性が高い/低い文章の例などをあらかじめ学習させておくことで、取材すべきかどうかを判断しやすくする。通常のニュースとしてだけでなく、字幕や手話、音声ガイドとしても自動で生成できるようにすることで、幅広い視聴者に情報を提供しやすくする。

膨大なソーシャルメディアの情報を自動解析
原稿作成の例

 「メディア統合プラットフォーム」は、ネットサービスと放送局の両方でコンテンツを視聴できる環境が広がっていることから、ユーザーがいる場所や状況などに応じて、適した方法ですぐ観られるようにする枠組み。この研究の一部は、NTTドコモと協力して進めている。

 例えば、ある番組を観たい時に、公園にいる時には放送波で、放送波が届きにくい地下などにいる場合は見逃しサービスなどの通信で観ることになるが、それを視聴者が別の操作をするのではなく、番組表を選ぶと自動で適した方法が自動選択される。スマホがTVチューナを搭載しない場合は自動で通信が選択される。また、観ている番組を人に教えたい時に、SNSでURLを貼って送ると、それを受け取った人がいる場所に応じて、最適な方法で同じ番組を観られる。

テレビ+スマホがIoTにもつながる「ハイコネ」。民放も様々な提案

 放送通信連携のハイブリッドキャスト(Hybridcast)では、テレビとスマホを連携させるアプリについて、現状はテレビメーカーごとに別のアプリを使用する形になっているが、これを共通アプリで連携させるようにする技術が「ハイブリッドキャスト コネクト(Hybridcast Connect/ハイコネ)」として'16年秋に正式に決まり、それに対応したアプリやサービスの開発が進められている。

Hybridcast Connectの特徴
Hybridcast Connectの拡張フレームワーク

 今年の展示では、テレビとスマホのアプリだけでなく、別のIoT機器などとの連携機能を実現する拡張フレームワークの様々な例を紹介。

 例えば、カーナビと連携した場合、スマホのハイコネ対応アプリにユーザーのテレビ視聴履歴が蓄積され、そのデータをドライブに活用。以前、ある温泉の番組を観ていた場合は、そこに車で近づいた時にその温泉までのルートをカーナビややヘッドアップディスプレイ(HUD)に表示して、スムーズに行動へ結びつけることができる。この技術はデンソーと共同で進めており、2020年代ごろに、何らかの形でのサービス実現を目指す。

カーナビと連携
以前テレビで観た温泉が、近くにあることを通知。経路を教えてくれる

 また、冷蔵庫の中身を管理してネット経由でスマホから情報が見られるシャープ製冷蔵庫とも連携。テレビでNHK「きょうの料理」を観ていると、テレビと連携したスマホに材料や調理方法だけでなく、家の冷蔵庫にその食材があるかといった情報まで確認可能。ない場合はスーパーのネットショッピングもできる。

シャープのIoT冷蔵庫と連動
きょうの料理を見ながら、冷蔵庫の中に足りない食材もチェック

 「放送と連動するロボット」も紹介。体操番組に合わせて、おしゃべりしながら同じ体操をしたり、サッカーの試合をみてゴールシーンに喜ぶといったように、視聴者と一緒に番組を楽しむ。現在のデモでは、フランスAldebaran製ヒューマノイド・ロボット「NAO」を使って、あらかじめプログラムした動きを表現するが、将来は放送に連動して、送られるデータと同期してリアクションする形を目指している。

サッカーのゴールシーンで喜ぶ
放送と連動して体操するロボット

 この他に「テレビ視聴ロボット」も開発。ロボットに搭載したカメラとマイクロホンアレーを利用して、テレビと人の位置を検出。番組情報と字幕情報から、番組に関連の深いキーワードを抽出し、発話文を生成するもので、放送番組を見ているときに、テレビの方向を見ながらつぶやいたり、人の方向を見て話しかけたりする動作を行なうという。

 NHK以外も、ハイコネの拡張フレームワークを活用したサービスを紹介している。

 TBSテレビは、CMから来店行動につなげるサービスを紹介。対象CMを視聴するとスマホにポイントが貯まり、それを店頭に持っていくと割引きや商品との交換などの特典が手に入るもので、複数の会社のクーポンを1つのアプリで管理できる。

CMを見るとポイントが貯まる
店頭でクーポンとして使える

 フジテレビは、「Dドラゴンボール超(スーパー)」と連携。世界に散らばっているというドラゴンボールを、実際に歩いて探すという位置情報ゲームで、ドラゴンボールを見つけるとポイントを獲得。放送視聴時は、そのポイント数に応じて、敵との対戦カードゲームが楽しめる。

世界に散らばるドラゴンボールを、ドラゴンレーダーの情報を元に歩いて探す
スマホを素早く動かす動作で戦闘。ゲットしたドラゴンボールの数によって、戦える回数が増える

 TOKYO MXは、通販番組との連携を紹介。通常のテレビショッピングでは、視聴者が電話をかけて、買いたい商品をオペレーターに口頭で伝える形だが、ハイコネを使った連携では、テレビ画面とスマホを連携してオペレーターに問い合わせると、「WebRTC(Web Real-Time Communication)」で接続。オペレーターが視聴者とスマホでビデオ通話しながら、視聴者のテレビを遠隔操作する形で、購入商品を確認。最終的な操作はユーザーが行なうが、買い間違えなどを防げる。

通販番組のオペレーターとビデオ通話しながら商品を選ぶ
ハイコネの利用モデル

 北海道テレビ放送(HTB)は、医療/病院情報の番組「医TV」を使ったサービスを提案。例えば「離れて住む親の病院を探す」場合に、病名などを入力して該当する病院を探し、それを親にLINEなどで通知。実際に親が病院へ行くと、子供に「病院へ着きました」と簡単にメッセージを送れる。

HTB「医TV」との連動サービス