「どこでもHDを目指す」。HDMI 1.4説明会開催

-ネットワーク+HDMIを訴求。BD+HDMIで3D立ち上げ


5月28日発表


 デジタルインターフェイス「HDMI」の規格ライセンスなどを行なうHDMI Licensingは28日、HDMIの最新規格「HDMI version 1.4(HDMI 1.4)」を発表。日本国内で説明会を開催した。

HDMI LicensingのSteve Venuti氏

 発表会ではコンセプト紹介やデモを交えて、HDMI 1.4の新機能をアピールした。なお、対応製品の発売時期については、「各メーカーの判断による。過去の事例でいえば、HDMI 1.3は6月に策定され、その6カ月後ぐらいに製品が発売された(HDMI Licensing Steve Venuti氏)」としており、2010年1月のInternational CESでは対応機器が披露される見込みだ。

 HDMI 1.4では、Ver.1.3などの従来規格との後方互換性を有しており、新機能以外については従来の製品との組み合わせでも利用可能。ただし、従来規格の製品へのソフトウェアアップグレードは、「HDMIチップの設計も異なるので、できないだろう」としている。

 HDMI Licensingの責任者を務めるSteve Venuti氏は、HDMI Ethernetチャンネル(HEC)や、オーディオリターンチャンネル(ARC)、3Dや4K対応、Microコネクタなどの新機能を簡単に紹介し、それらの目的について解説した。

 Venuti氏は、HDMIの歴史を振り返りながら、「約850社が対応製品を発売し、コンシューマエレクトロニクスやPC業界で成功を収めた。対応機器は10億台を突破しており、2009年にはデジタルテレビの100%で、2010年にはBlu-rayプレーヤー、2012年にはDVDプレーヤーの100%がHDMIに対応するだろう」と語った。

 HDMIの成功の理由については、「シンプル」、「信頼性」、「パフォーマンス」の3点の基本方針が受け入れられたため、と言及。HDMI 1.4もその基本を満たしながら、「“High Denifintion EveryWhere(HDが使用されている場所ならどこでも)”という要素を加えたものだ」と紹介した。

HDMIは100%のデジタルテレビで採用へ2009年には24%のCE機器がEthernet対応HECに加え、ARCに対応したことで、ケーブル接続をシンプルに

 


■ ホームAV機器の活用幅を広げるHEC

HDMI HECで1台がネットワークに接続すれば、それに連なる機器もネットワークで相互に通信可能に

 もっとも時間を割いて説明されたのが、HECについて。HDMIケーブル上にEthernetのプロトコルを伝送可能にするもので、HDMIによる映像/音声伝送と、100MbpsのEthernet通信を1本のHDMIケーブルで実現できるようになる。

 Venuti氏は、調査会社Instatによるレポートを例に挙げ、2009年には24%の家電製品がEthernet対応となり、ゲーム機では100%、Blu-ray機器では80%、STBやデジタルビデオレコーダでは72%がネットワーク機能を有しているという。こうしたネットワーク機能が次世代の“プラットフォーム”として求められているが、HECによりHDMIケーブル1本で、Ethernet接続も可能になることから、ネットコンテンツや通信を生かした新しいデジタルAV機器を実現できるという。


Silicon Image Waheed Rasheed氏

 Silicon Imageのマーケティング担当ディレクターWaheed Rasheed氏は、HECにより接続をシンプルにできることとともに、ネットワークを生かした活用事例を紹介。ネットワークの中心となる1台がインターネット接続していれば、それに連なる形でHDMI HEC接続された各機器がネットワーク対応となるため、テレビを中核とした活用事例、AVアンプを中心とした事例、サウンドシステムを中核とした事例などの利用イメージを紹介した。


テレビを中心とした構成AVアンプを中心とした構成。HECとともにARCが活用されているサウンドバー(サラウンド)システムを中核に据えた構成

 なお、HDMI 1.4ではHECが追加されたものの、ピン数やTypeAのコネクタ形状に変更はない。HECは、従来使っていなかったReservedピンとHPD(Hot Plug Detect)のピンを使って実現している。そのため、HEC機能を利用するためには対応機器のほか、認証を受けたケーブルが必要となる。

HECのデモ。STBがネットワーク接続。PS3とSTBをHDMI HEC接続して、PS3でもWebブラウザを利用Silicon ImageのLiquid HDもデモHECでは従来使っていなかったピンを利用して双方向通信

 


■ HDMIとともにBDの3D対応を進めるパナソニック

 HDMI 1.4では、HEC以外にも、オーディオリターンチャンネルや、3D、4K対応、マイクロコネクタの追加などが行なわれている。

パナソニック AVCネットワークス社 高画質高音質開発センターの宮井所長

 パナソニック AVCネットワークス社 高画質高音質開発センターの宮井宏 所長は、HDMI 1.4の3Dフォーマット拡張とBlu-ray Discにおける3D対応について説明した。

 HDMIとBlu-rayで3D対応を急ぐ理由は、ハリウッドで3D映画が普及し始めているという経緯がある。

 2008年末には3D対応の劇場が2,000を超え、日本では年内に180館になる予定。デジタルシネマによる配給コスト削減のための設備投資の時期ということもあり、その付加機能として3Dが訴求されているのが大きな要因で、実際に米国では3D上映時にはチケット単価が約1.5倍、動員が約2倍となり、興行収入は約3倍という実績をあげているという。「米国の観客が3Dの価値を認めた」と判断されており、これが急速に米国における3Dを押し上げている。

 また、パッケージメディアの世界では、2007年からDVDの販売が落ち込み、Blu-rayへの移行をスタジオが急いでいるとともに、その成長を担う製品として3Dに注目している。こうした経緯からパナソニックも早期の3D立ち上げが急務と判断し、BDとHDMIにおける3D対応に取り組んでいるという。

 HDMI 1.4では3D対応とともに、4K対応にも対応しているが、4Kではデータ処理量が8倍になり、ディスクに収録するためには100GB超の新しい規格が必要となる。一方、2枚のフルHD映像を利用する3Dの場合は、2倍のデータ容量で現行BDの50GBで十分格納できること、LSIについても現行製品の拡張で対応できることなどから、3D対応を優先と位置付けている。

 HDMIにおける3D対応では、1,920×1,080ドット/60pの映像を2chあわせてケーブル1本で伝送できるように規格化したほか、対応テレビと接続時に自動的に3D出力するようにテレビのEDIDに3Dエリアを追加。また、AV信号に重畳して伝送される情報パケットに3D識別フラグを追加する。

 テレビ側の対応としては、3Dフォーマットである1080/24pと720/50p、60pのサポートが必須となる。なお、Blu-ray Disc Associationにおける3D対応の規格化については2009年内を目標にしているという。

技術視点からの3Dの意義Blu-rayとHDMIの2つの標準化が必要HDMI 3D仕様の概要

 


■ 新コネクタについても解説

 新追加されたマイクロコネクタや車載用コネクタについても説明。

モバイル機器でのより“小型”のコネクタ要求がマイクロHDMIの規格化に

 コネクタメーカーのMolexは新しいマイクロコネクタについて説明。「特にデジタルカメラや携帯電話向けとして、Type C(HDMIミニ)では実装が困難という声が多かった」とし、より小型化を目指したType D(マイクロHDMI)の規格化に2008年3月ごろから取り組んだという。

 マイクロHDMIは、ピン数は19で通常のHDMIとの違いはないが、小型化のためにピンを2列に配置することで小型化。ミニに比べて、基板占有面積で37%、大きさで43%縮小しているという。またコネクタ形状がMicro USBに類似してしまったため、誤って抜き差しできないようシェル形状に工夫を施している。耐久挿抜回数は5,000回で、ミニHDMIと同等の仕様を満たすとしている。

マイクロHDMIケーブル/コネクタHDMIタイプ別のコネクタ比較

 日本航空電子からは、車載用のケーブル/コネクタについて説明された。車載でのHDMIの用途は、一つは民生機器を持ち込み、車載AV機器に接続する方法。もう一つは車載機器間を接続する方法が想定されている。

Type Eの車載用コネクタ/ケーブル民生機器を車に持ち込む場合車載機器間を接続
車載用HDMIのデモ

 たとえばポータブルBDプレーヤーを接続するための入力端子はTypeAだが、それをリアシートモニターなどに伝送する場合は新しいType Eコネクタを利用する。Type Eの特徴は、車載を想定して堅牢性や耐振動などの規定を設けたほか、ケーブルが外れることを防ぐロック機構を装備。またケーブルの強度や屈曲性についても配慮しているという。

 会場では実際に車載時のHDMI利用のデモも実施。持ち込んだBlu-rayプレーヤーをType Aの中継レセプタクルに接続し、その信号をType E接続された車載ディスプレイに表示していた。


車載用HDMIコネクタの開発コンセプトBDプレーヤー接続で利用しているのが開発したType AレセプタクルType Eコネクタ

(2009年 5月 28日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]