ソニーの立体モニタなど「DIGITAL CONTENT EXPO」開幕
-携帯電話でも3D。女性型ロボやメディアビークルも
経済産業省と財団法人デジタルコンテンツ協会は、CGや3D、バーチャルリアリティなどの技術と、それを活用したコンテンツの展示を行なう「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」を、東京・お台場にある日本科学未来館、及び東京国際交流館で開催した。会期は10月22日~25日。入場は無料だが、日本科学未来館の他の展示施設への入場は有料。
ソニーやパナソニックなどのメーカーが3D技術などへの取り組みを紹介する「国際3D Fair」と、コンテンツを活用した新産業や新しい価値を創造していくために必要と考えられる要素技術を示した「ConTex」、アジア各国の優れたCG作品や、その作家を紹介する「ASIAGRAH 2009 in Tokyo」を組み合わせたイベント。
ここではソニーの「360度 立体ディスプレイ」など、3D関連示を中心に、興味深い展示をレポートする。
会場内の様子 | ASIAGRAH 2009 in Tokyoでは、美麗なイラストやオブジェなどが楽しめる |
■ ソニー
ソニーの360度 立体ディスプレイ |
卓上設置が可能な13×27cm(直径×高さ)のディプレイで、裸眼で、複数の人が同時に立体映像が見られる。開発試作品であり、技術的な内容は残念ながらほとんど非公開。
発光素子にLEDを使用しているのが特徴で、バックライトなどに使っているわけではなく、LEDの光をそのまま見ているという。RGBのLED素子を採用して色を作り出していると思われ、表示色数は24bitフルカラー。解像度は96×128ドット。
視点数は横方向に360。360度分の静止画データを用意し、試作機で展示させている。見る角度によって表示する絵を変える3Dディスプレイでは通常、見る方向に合わせた映像を表示するため、レンチキュラーレンズと呼ばれる、表面に小さな凸レンズを無数に並べたフィルタを貼る。しかし、ソニーではそうしたレンズフィルタで視点ごとの映像表示を制御しているかは明らかにしていない。LEDを使っていることもあり、非常に鮮やかな発色/表示が印象的だ。
マスコットキャラを各方向から撮影 | ||
こちらは女性の3DCGキャラクター | ||
360度からの撮影データであれば、実写も表示できる | 医療分野への展開も想定している |
初日には財団法人デジタルコンテンツ協会の会長を務めている、ソニーの中鉢良治副会長もブースを訪れた |
4K液晶モニタ「TRIMASTER SRM-L560」 |
また、3D技術ではないが、ソニーは11月1日発売予定の4K液晶モニタ「TRIMASTER SRM-L560」も展示している。フルHDの4倍となるQFHD(3,840× 2,160ドット/829万画素)解像度、10bitパネルを搭載した56型液晶モニタで、価格は6,825,000円(受注生産)。
バックライトに、高純度LEDを使用したプレジションバックライトシステムを採用。放送規格ITU-R BT.709、EBU、SMPTE-Cからデジタルシネマ向けの色域まで対応している。さらに、バックライトにRGBセンサー、温度センサーを内蔵し、経年変化などで発生する輝度むら、色ずれを補正。パネルの個性によって生じる見え方の違いを抑え、「正確な色」、「正確な画像」、「高い信頼性」の3要素を極めるための独自技術「TRIMASTER(トライマスター)」を搭載したという。
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■ パナソニック
同じく3D技術の開発に力を入れているパナソニックは、3Dディスプレイ実機の展示は無いものの、ビデオで3D開発への取り組みを紹介。
ハリウッドでの3D映画撮影段階からのサポートや、2009年末の規格化が予定されているBlu-rayの3D規格の紹介、左右の眼用のフルHD映像をVer.1.4の3D対応HDMIで、フルHD×2ch分の画面を伝送し、3D対応の倍速フレームシーケンシャル表示(120Hz)で表示。画面表示と同期したアクティブシャッターで観賞することで、フルHDの3D表示が楽しめるという、トータルでの技術力をアピールしていた。
パナソニックはビデオで3D技術への取り組みを紹介 | 映画製作から過程での表示までをトータルでサポート |
■ 日本ビクター
日本ビクターは、業務用に既に発売している46型の3D液晶モニタ「GD-463D10」を展示。Xpolの円偏光フィルタを貼ったタイプで、走査線1ラインおきに偏光特性の異なるフィルタになっている。観賞は、専用のパッシブ型円偏光メガネを介して見る。パネルそのものの解像度は1,920×1,080ドット。
新開発の3Dデコーダーを内蔵し、前述の右目用、左目用の映像を1ラインおきに交互に配置する「ラインバイライン方式」と、右目用、左目用の映像を水平1/2に圧縮した状態で左右に配置する「サイドバイサイド方式」の2種類の入力に対応している。
青空は奥、緑の芝生は手間など、色情報も加味した3D化アルゴリズム | 円偏光メガネを介して視聴する |
さらに、奥行き情報を持たない2D映像も、リアルタイムに3D化できる変換技術もデモ。2D映像の中央を奥に配置し、左右を手前にという“画像の位置”を基本とした奥行き情報を付与。さらに、「上部にある青だから空。よって奥に配置」、「手前にある緑は木々。よって手前に配置」など、色と配置からも奥行きを決定するアルゴリズムを開発しており、カナダのセンシオ社にライセンス提供もしているとのこと。
また、このアルゴリズムを取り入れた、2D-3Dリアルタイム変換装置を、2010年春頃に製品化。3D作品を手掛けるポストプロダクションや、映画館での作品紹介用などに販売したいという。
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■ 東芝モバイルディスプレイ
アクティブシャッターメガネ側にもOCB液晶技術が使われている |
パネルの解像度は1,366ドット×768ドット。サイズは32型。時分割タイプなので、解像度劣化の無い3D表示が得られる。
■ NTTドコモ
NTTドコモは、レンチキュラーレンズを貼ったタイプの、小型3Dディスプレイを参考展示。携帯電話への搭載を想定している。
横方向に8視点を持っており、パネルそのものの解像度は1,024×768ドット、2.57型。斜め方向にレンズを並べた「斜めレンチキュラー」を貼ったタイプで、3D表示解像度は縦横ともにバランス良く減り、384×256ドットとなる。
製品化時期は未定だが、「映画や家庭用テレビなどの対応で3Dコンテンツが浸透すれば、それを携帯電話で見たいというニーズも出てくる。また、ショッピングサイトで指輪などの商品を様々な角度から見るといった使い方もできる」と、用途提案を行なっている。
NTTドコモが展示した、2.57型3Dディスプレイ | 指輪を3D表示しているところ。ショッピングサイトでの商品確認にも利用できそうだ |
■ その他の3D展示
パイオニアのフローティングビジョン |
USBディスプレイとして動作し、自作コンテンツを表示する事も可能。画面の上下に設けた赤外線センサーを使い、「映像に手を触れようとした際のリアクション」を個別に表示させる事も可能。急須を表示させ、ユーザーが手を触れようとすると、中から小さなメイドさんが登場するアニメを表示させるといったデモが行なわれていた。
メイドさんを表示したところ | PCのUSBディスプレイとして機能するため、様々なデータを気軽に表示できる | センサーを備え、手で触れようとするとリアクションデータを表示させることもできる |
富士フイルムは、 3D撮影が可能なデジカメ「REAL 3D W1」や、3D表示に対応したフォトビューわー「REAL 3D V1」など、3D関連商品を展示。隣ではステレオ写真愛好家が集まる、ステレオ倶楽部東京のメンバーが撮影した写真の展示も行なわれている。
オリンパスビジュアルは、市販の液晶モニタ3D化できる「3D立体視聴キット」を展示。NVIDIAは、アクティブシャッター眼鏡と対応ソフト/ディスプレイで楽しめる「NVIDIA 3D Vision」、バンダイナムコゲームスは、Xbox 360向けにダウンロード販売している3D表示対応ゲーム「インビンシブル タイガー ザ レジェンド オブ ハン タオ」を紹介している。
富士フイルムの3D撮影対応デジカメ「REAL 3D W1」 | 市販の液晶モニタ3D化できる、オリンパスビジュアルの3D立体視聴キット | NVIDIAも3D技術をゲームソフトで解説 |
ソリッドレイ研究所は、9月に発表したコンパクトな3D表示対応プロジェクタ「Sight3D」を展示。新たに、そのプロジェクタとの組み合わせを想定した、超小型PC「ビューワPC」(87,150円)を10月22日に発売したという。Windows 7 Home Premiumを採用したAtom 330マシンで、「Sight3Dと同じカバンに入れられるほどコンパクトなのが特徴」だという。
ソリッドレイ研究所のコンパクトな3D表示対応プロジェクタ | そのプロジェクタとの組み合わせを想定した小型PC | ハーフミラーをボックス内部に斜めに配置。上下にディスプレイを搭載し、ハーフミラーで右目用と左目用を重ねて表示するシステムなど、様々なタイプの3D表示機器が展示された |
■ 3D以外の展示
■ オープニングセレモニー
現在のGeo-Cosmos |
さらに、日本科学未来館の館長である毛利衛氏も登壇。最先端デバイスを活かすコンテンツの重要性を語った後、日本科学未来館のシンボルであり、約100万個のLEDを使ったGeo-Cosmos(ジオ・コスモス)を紹介。その日の地球の姿をLEDの球体ディスプレイに表示するというシステムだが、毛利館長によれば、そのリニューアルを考えているという。
「現在のGeo-Cosmosは、10年近く前の技術で作られています。日本で青色発光ダイオードが実用化され、実現した展示です。それが今回、補正予算でタイトなところ、“新しいものに変えていいよ”というお許しをいただいた」と毛利館長は報告し、「副大臣、ありがとうございます」と、来場していた松下忠洋経済産業副大臣に挨拶。会場は笑いに包まれた。
現在のGeo-Cosmosは、ハイビジョンのクオリティで表示を行なっているとのことだが、新バージョンでは「4Kのレベルにします。さらに、大きさを、地球の200万分の1(現在)から、150万分の1に、8.5mの球体にしようと思っている」とのこと。毛利館長は「日本でなければできないような技術を使って作りたい。そして未来館では球体や最先端技術を“人類の持続的な社会を営むために必要な文化”であるととらえ、皆様にそれを感じていただける場にしたい」と抱負を語った。最後に毛利館長は「新しいシンボル展示の製作は競争入札で、いいものをつくっていただこうと思っています。ソニーでもぜひ」と中鉢副会長に呼びかけ、再び笑いを誘っていた。
財団法人デジタルコンテンツ協会の会長である、ソニーの中鉢良治副会長 | 本科学未来館の館長である毛利衛氏 | テープカットの様子 |
(2009年 10月 22日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]